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ピー子 『文藝』2026年冬季号、10月7日発売。河出書房新社。目玉は第63回文藝賞発表だね。受賞作が唐川らい「いっしょに老衰しようね」と山岡桜寿「つづけて生きてられません」の二作。
ヨミ太 文藝賞は1962年創設の新人賞で、笙野頼子や金原ひとみ、村田沙耶香、町屋良平なんかを輩出してきた。今回の選考委員は小川哲、金原ひとみ、町屋良平、村田沙耶香。唐川らいは2005年熊本生まれの二十歳。「生老病死に無理やり恋をねじこんで踊る」って紹介されてて、体育祭の日に究極のトリップへ至る、劇薬注意の恋愛小説らしい。山岡桜寿は2000年兵庫生まれ、京都在住の二十六歳。同棲する恋人が突然曹洞宗への帰依を宣言して職場を無断欠勤するところから始まる話で、「俺たち、牛を捕まえるんや」という台詞が印象的。若い世代の言葉が、賞の現在地を動かしてる感じがする。
ピー子 受賞記念対談もある。金原ひとみ×唐川らい「『君』に会うために、言葉をデコり尽くす」、町屋良平×山岡桜寿「細部に記憶が宿る、奇妙な日常と悟りの予感」。選評も四人分載るんだ。
ヨミ太 金原ひとみは1983年生まれ、『蛇にピアス』で芥川賞。身体と暴力、欲望の境界を過激に書いてきた人だから、唐川さんのギラついた語りとどう噛み合うか見もの。町屋良平は1991年生まれ、『青が破れる』で芥川賞、細部の異物感や日常のずれを得意とする。山岡さんの「奇妙な日常」との対話は、記憶の宿り方を掘り下げそうだね。受賞の言葉と予選通過作発表、第64回の応募規定もついてる。
ピー子 特別対談が土門蘭×西川美和「戦争を描く私たち」。
ヨミ太 西川美和は1974年生まれの映画監督・脚本家。『ゆれる』『永い言い訳』『すばらしき世界』などで、家族や社会のほころびを静かに、でも容赦なく撮ってきた人。土門蘭は小説家で、近年は戦争や歴史の記憶に触れる作品も書いている。二人とも「描く」側に立ちながら、戦争をどう身体化するか、という話になりそう。今の季節に重たいけど、避けて通れない対談だ。

ピー子 特集は「演じる身体、なりきれない身体」。短篇がピンク地底人3号「ひかるとあかり」、松田いりの「寿司男」、升味加耀「柔面皮」。鼎談がいとうせいこう×岡田利規×安田登「間を読む身体、役者という器」。
ヨミ太 ピンク地底人3号は1982年京都生まれの劇作家・演出家。せんだい短編戯曲賞や劇作家協会新人戯曲賞を取って、2025年には小説『カンザキさん』で野間文芸新人賞。舞台の言葉を小説に持ち込む人だ。松田いりのは詩人・小説家で、身体の違和や祈りを独特の感触で書く。岡田利規は1973年生まれ、劇団チェルフィッチュ主宰。日常会話の「間」を極端に引き伸ばす演出で知られる。いとうせいこうは1961年生まれ、小説・音楽・舞台と横断する人。安田登は能楽師で、古代の身体論にも詳しい。三人の鼎談は、役者と器、間の読み方をめぐって濃くなりそう。
ピー子 論考が木下千花「『国宝』とホモソーシャリティ」、赤坂真理「生まれ、死に、よみがえる劇」。エッセイは桜庭一樹「模倣から始まらない創作なんて本当にあるのかな?」、青柳いづみ「わたしの身体はだれのもの?」、蝉谷めぐ実「役名・小説家」、岡田彩夢「皮」。
ヨミ太 木下千花は映画研究者で、日本映画のジェンダーや身体表象を論じてきた人。『国宝』は歌舞伎の世界を描いた作品だから、男同士の絆と演技の身体がどう重なるか。赤坂真理は1964年生まれの小説家・批評家、『東京プリズン』などで知られ、劇と再生のテーマを長く考えてきた。桜庭一樹は1971年生まれ、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』や直木賞『私の男』の人。模倣と創作の境界を、自身の書き手としての経験から問いそう。身体が「だれのものか」、役名と小説家のあいだ、皮をかぶること——特集のタイトルそのものを、それぞれの立場から揺らしてる。
ピー子 創作は福田節郎「私は寝落ちするまで」、しじまむらさき「ニュートリリオンホール内きっずみる」、才谷景「聖異物」。新連載が絲山秋子「階段から落ちてよかった」。
ヨミ太 絲山秋子は1966年生まれ、『沖で待つ』で芥川賞。日常の微細な裂け目を執拗に書く人で、新連載のタイトルからして、転落と回復のあいだを歩き始めそう。創作三人は、寝落ちの境界、ホールの内部、聖と異物、とそれぞれ身体や空間のずれを扱っていそうだ。文藝賞の新人と並んで、既知の書き手の現在も並ぶ構成だね。
ピー子 連載も動いてる。星野智幸×シン・ミナの往復書簡「地球から半歩」が最終回、円城塔「ホモ・ネクロ」も最終回。北村薫、いとうせいこう「難民移民モノローグ」、岸政彦「犬は人生」、岸本佐知子「尻 on fire 日記」、柳美里「JR常磐線夜ノ森駅」。書評は朝吹真理子『ゆめ』を宇佐見りん、水上文をプーヤン・フェイ、ミランダ・ジュライを小泉綾子、パク・ワンソを小林エリカ。
ヨミ太 星野智幸は1965年生まれ、『目覚めよと人魚は歌う』などで越境や言語のずれを書いてきた人。韓国のシン・ミナさんとの往復が最終回を迎えるのは、半歩の距離がどこまで縮まったか、あるいは残ったかを示す。円城塔は1972年生まれ、数学や計算、奇妙な構造物を小説にする書き手で、「ホモ・ネクロ」の締めくくりが気になる。岸政彦は社会学者で生活史の聞き書きが得意、岸本佐知子は翻訳家・エッセイスト、柳美里は在日の経験と福島の土地を書いてきた小説家。最終回と継続が混ざる号で、文芸季評の水上文、山本貴光のクロニクルも、この三カ月の文学を振り返る。
ピー子 二十歳の受賞作から、役者の身体、戦争を描く対談、最終回の往復書簡まで。名前がまだ熱を持ってる声と、すでに何度も舞台に立った身体が、同じ号に並んでる。冬の入り口に、ページが厚い。
ヨミ太 520ページあるらしい。コーヒーが冷める前に全部は無理でも、まず受賞作の語り口と、特集の「なりきれない」感じからめくってみたいね。文藝はいつも、賞と特集で文学の体温を測ってくる。
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