
久しぶりの更新だったらしいのだが、それを忘れさせるほどの完成度だった。「現実を生きるリカちゃんねる」の真骨頂である圧倒的なリアリティと、乾いたユーモアが、今回も高いレベルで結実している。生活感のある部屋の散らかり具合や、どこかやさぐれたOLの日常をリカちゃん人形で再現するスタイルで根強い支持を集めているチャンネルで、私も長年のファンのひとりだ。こういうコンテンツに出会うたびに、「好きなものを好きなだけ作っている人間には敵わない」とつくづく思わされる。
今回の動画でまず目を引くのは、ソファにひっくり返ったリカちゃんの「動き」のリアルさである。深夜にダラダラと動画を流し見しながらスマホをいじり、スナック菓子に手を伸ばし、恋愛リアリティショーの展開に一喜一憂して身をよじる——その一連の動作が、人形とは思えないほど生身の人間に近い。硬質なはずの素材から、「休日前の解放感と退屈を持て余す一人暮らしのOL」の脱力した体温がにじみ出てくるのだから、もうほとんど怪異の領域だ。コマ撮りのカクカクとした不自然さが、逆にリアルさを補強するという倒立した構造がある。

そこに重なるのが、見た目とのギャップを際立てる「耳年増」なセリフと独り言の冴えである。恋愛番組のあざとい出演者に容赦なくツッコミ、「どうせ顔で選んでる」、「SNSの反応と照らし合わせて答え合わせをする」という本音が次々と飛び出す。可愛らしいリカちゃんから発せられるやさぐれた言葉は、視聴者が一度は心の中で呟いたことのある共感の固まりであり、そのハマり具合に思わず笑ってしまう。人形という「無垢な外見」と、セリフの「世慣れた毒」のギャップこそが、このチャンネルの核心だ。
だがコンテンツを作る立場から見ると、このチャンネルの恐ろしさは別のところにもある。1秒にも満たない細かな動作、背景の小物の配置、光の当て方——このレベルの動画一本を仕上げるために費やされた労力と時間を想像すると頭が下がる。人形の関節や小物をミリ単位で動かすコマ撮りの地道さは、作り手の視点からするとほとんど狂気に近い。しかしそのこだわりが、完成した映像の中にちゃんと「密度」として宿っている。手間をかけたものは見る人に伝わる——当たり前のことだが、実践できているコンテンツは本当に少ない。
水野翼
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