偏った態度なのか、はたまた単なる変態か(笑)。男と女の性別も、恋愛も、セックスも、人間が排出するアノ匂いと音と光景で語られ、ひしめき合い、混じり合うアレに人間の存在は分解され、混沌の中からパズルのように何かが生み出されるまったく新しいタイプの物語。

論理学者にして気鋭の小説家、三浦俊彦による待望の連載小説!。

by 三浦俊彦

 

 

 

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■ 会員は毎日指定された時刻に、月替りで定められたある命題を思い浮かべる。念じる。それが瞑想サークル「COZMO」の〈基本〉である。

 「人間がひとり残らず自分らしくありますように」

 「自分がひとり残らず人間らしくありますように」

 「誰もが裏声で真実を述べることができますように」

 「今日もオーラが余ることがありませんように」

 「明日が今日とはかけ離れた時空から始まりませんように」

 「宇宙意志が私たちの営みを正しく数えていてくれますように」

 「全人類が幸福でありますように」

 「全人類が幸福すぎませんように」

 「宇宙にある直線がみな曲線と妥協できますように」

 「心だからという理由だけで心が尊重されるという理由だけで心が尊重されるようになりますように」

 「私が私でなくなったときに私でなかったときと手をつなぐことができますように」

 「地球外知的生命が三つ以上存在しないことが小指一本で証明できますように」

 「一筆書きよりも早口言葉の方が先に免状を出しますように」

 「肛門をピッタリ合わせてオナラを正面衝突させたらより熱い方が勝ちますように」

 「いえむしろ、より湿った方が勝ちますように」

 〈基本〉思念を補助するCDも販売された。一定の時刻に、全員が同じ音楽を聴いて(音楽というのは駅やデパートのトイレで会員が手分け収録した放屁音や脱糞音や痰吐音を重ねたアンビエントノイズミュージックであるのはもちろんだが)、深い瞑想に入るのである。

 やがて〈基本〉は、単なる思念から実践へとステップアップしていった。ライブパフォーマンスの前には必ず、私室とステージと両方で、蔦崎公一の遺影・位牌に痰もしくは屁もしくは小便をひっかけて冥福を祈る(大便はパフォーマンス用に腸内に温存しておかねばならないのが原則だったが、やがて「弔いは別腹」のキーワードのもと、パフォーマンス用脱糞量に影響することなくメンバー全員が弔い用大便を別個に出せるようになったという。のみならず、遺影に巨糞をぶっかけることができればできるほど、その後のパフォーマンスにおいても比例的に大量絶景おろちを放出できるという相関関係さえ確立したのであるという……)。

 

 

■ それこそ菅瀬慎次のような、紛れもなくおろち前史上中堅的役割を果たしながらその行方がかくも自然消滅的といおうか尻すぼみに不明のまま立ち消えてしまった例があるということは、あえて言えばこれもおろち文化史の多様な側面を象徴しており興味深い(「消えたおろち人たち」系統の論考もおろち学会では幾度か発表・検討されていることを想起しよう。おろちの本体そのものが排泄物なので、おろちの中に相対的に無駄な部分というものはありえない。全ては学問的に意義深く活用できる傾向があるのだ)。

 なお、ある一大事件がCOZMOの目標達成以前のシステムに亀裂を生じさせた件について、今も議論が間欠的に蒸し返されている。一連の最後の人間肥溜リハーサルに精を出していたある日、演習室にメンバーが時間どおり入ると、中央に全裸の女性が天井から縄で吊るされ、古典的な大股開きスタイルで緊縛固定され、うんうん汗ダクになって真っ赤にうめいている。顔じゅうに洗濯バサミとセロテープがくっつけられて福笑い的破滅表情を強要されていた。

 橘菜緒海だった。

 その尻下には紐付きのストッパーが転がっており、紐の末端はドアノブに結び付けられていて、外からドアが開かれると同時に尻詮ストッパーが抜ける仕掛けになっていたことは明らかだった。COZMOの演習室は三日間閉めていたが、その間に奈緒美はここに緊縛され、今まで耐えていたもののようで、腹が餓鬼草子絵さながら丸く膨れ、腸が臨界状態に震えていることは明白、肛門が小刻みかつ大揺れに収縮膨張を繰り返していた。

 一同が呆然と立ちすくむ前で宙吊りの奈緒美の大股はにゅるにゅるぬるにゅりむりみちみちぷちぱちにゅらむりもりべりみりみりみちばりもりむりみちちちちちと自然排便を高速開始し、あれよあれよと途切れぬままその快便極太チューブは真ッ茶色に7.5センチ×120センチにも及んだ。食欲をそそる特濃便臭が部屋に満ち、「うっ」「あわっ」あちこちから溜息が洩れた。この臭気は、少なくともこの場にいた人物の経験内では特段最濃厚の便臭であったとの躊躇なき証言の一致がある。

 特筆すべきことは、大脱糞時に菜緒海は衆目を逃れようと虚しくもがいており、きつい縄目に固定された体はほとんど動けなかったのではあるが肘や股や膝や手首の関節がぽき、ぱき、ぽきぱきと高らかに成りつづけていた。それは菜緒海身中のアナクロな羞恥が物象化したものであり、橘印名物のポキッ音集大成を自ら締めに演ずるといった気概はしかし全く見た目感じられず、ただひたすら涙を流し続ける菜緒海の股間そしてふしぶしからはにゅるポキにゅるぬるぷりパキピキにゅりむりむぶぶりぶむぶむみちぶちみちポキみちぷちパキぱちぶゅりにゅぶぶぷぶぷむぶりもりポキべりみりぶりみりピシみちばりもりパキポキむりみちちぶちぶちちぷりぼりパキ、硬軟深浅多様な音群がオーケストラを奏でているばかりだったのだと。

 大大々大大大大脱糞。

 「すさまじかったのはですね……」

 ただの極太極長便というにとどまらず、そのオーソドックスにゅるにゅる練り出しの周りから、糞壁と肛門との隙間を潜り出るように、これまた大量の下痢状特濃粘液が滴り、あるいはぷしゅっと扇状に飛び散り、あるいはゴボリゴボリと泡立ちながら、極太固体と特濃液との同時流出が実現していたという……

 「……ことなんですよ。そればかりではなく……」

 極太バナナの壁面から、中に埋まっていた塊が、そう、しばしばポロ、ポロと巨塊中塊が、バナナ本体よりも色濃く一見十倍硬の岩石質を誇りつつにょきにょき頭出してはボトンボトンと剥がれ落ちてゆくのだった。想像していただきたい、にゅるにゅるくねり出る大蛇の周りからブシュブシュと黄土液が大量にしぶくとともに大蛇内から垂直四方八方に岩石がむくむくはみ出しては液飛沫音と競争するかのようなボトンボトン落下音を……

 「奏でるわけですから。正統派搾り排泄(円筒状)をはさんで、すり抜け摩擦洩れ排泄パターン(液)と潜り出し掻き分け頭出し排泄パターン(岩塊)が競り合うわけですから。おろち史上に永遠に記録されるべき大光景だったと言いますよ」

 大糞射。大飛沫。大石、大蛇、大大脱糞!

 むろん臭気以上に、その長さ太さ、粘度、揮発度、よってその総量が、一回分としてはおそらく人類史上最大の大便ではなかったろうか。何物かによってここに幽閉された菜緒海は、尻にストッパーで蓋をされたまま三日間耐えていたわけである。特大おろちの成分分析から、大量の繊維と乳糖・オリゴ糖・ビフィズス菌を含むサプリメントの数々を大量に摂取させられていたことが判明した。日本レクソール・ショーケースの『バイオスライフ』(粉末)、東洋薬食工業の『ペルアグラ・マカリキ1200』(錠剤)、万田発酵の『万田酵素』(ペースト)、サンラートの『アガリクスミクロンパウダーゴールド』(粉末)、再春館薬品の『スッポンローヤルゼリー』(ハードカプセル)、マルヨシの『サラシアレティキュレータ ダイエット』(ドリンク)、ケンコーの『青汁濃縮球』(ソフトカプセル)、富士バイオの『カニパックカニパック オリゴ・ミックス』(粉末)、昭和製薬の『でるでる』(ティーバッグ)などである。浣腸液の混入は認められず、百%自然便の大傑作だった。三日間の渾身我慢の果ての放出にもかかわらず液状化も秘訣化もしておらず理想的なバナナ状態を長大に途切れず保持していたのは水分と繊維の微妙なバランスにより硬軟両作用が拮抗したためであろう。

 捻出物は直腸の容量限界に達していた、むしろ体積的には直腸内のプレッシャーから解き放たれた反動の膨張によって、空気中に露出したナオミおろちは直腸飽和容積の3倍にも達していたといわれる。床に長々こんもりぼたぼたと横たわった物質性は、その質量といい空気を満たす温熱感といい模様の多彩さといい見るものの胸に底なしの驚嘆を喚起した。みなが我に返ったのは、これで終わりよというように

 「バフっ! プ、プゥッスーーぅーーぅーーんんん!」

 と菜緒海の充血しきった肛門が極太放屁を長々と発してその追い打ち内臓臭に一同の脳が覚醒を強いられたからだった。内臓臭が沈澱した後には錠剤繋ぎに使われる乳糖とビタミンCの甘酸っぱい芳香が鬱蒼といつまでも漂っていた。ぼききん、とひときわ大きな関節音が菜緒海の股関で鳴り響いて屁音残響に美しく共鳴協揺しあった。菅瀬貴美子は改めて床上を凝視し、物質の放つ強烈な呪力というか法力というかエクトプラズマというか、一種象徴性オーラをただちに見抜き、ナオミの救出より先に延々二分間に渡って途切れず続いた脱糞が終わり次第すぐさま物体保存の必要を思いついた矢先、まわりの女性たちから「これ、保存しましょう!」「このままで!」「壊さないように!」当然の声があがった。人間肥溜練習用に仕入れてあったガラスの大水槽にアルコールを満杯に注いで漬け込むというのが保存措置の第一案だったが、それが実行されていたら現在までのナオミおろちの保存は実現しなかっただろう。さいわいにしてその場から動かさずスプレーによるコーティング固定の方法が提案され、エアブラシによって念入りな保存作業が開始された。コーティングが優先的に終わるまで物体の産み主の救出は行なわれなかったのは、さすがは芸術的意思に帰依したCOZMOであったと評せよう。菜緒海はもはや屁一滴洩れ放てないずたずたの肉体をプルプル宙吊りに震わせながら洗濯ばさみ福笑いに泣き濡れていた。

 そもそも菜緒海が撮影担当に徹することは、おろち前史のキャラクター配分からして流れ的にも不合理であることは前述したが、その不合理の空気が過激な形で一挙噴出したというか、一気何かの釣り合いを取ったというか、その表われがこの古典的羞恥宙吊り脱糞だったのであろう。

 一方では、蔦崎事件・印南事件の余波により♂陣が次々脱落したからといって♀陣中に何の葛藤も騒擾も閃光ないのは一種恥であると誰かが思いついてこのような強制策に出たものとも考えられる。履歴的性格的に言えば鵜野加代子あたりに嫌疑がかかるが確証はない。

 そう、唯一の証言者となりうる橘菜緒海自身が、この日、COZMOメンバーにより労わりおよび疑問および恐怖の呟きとともに縄を解かれると同時に、黙々と服を着始めたかと思うと一言も発せず脱兎のごとく逃亡してしまったのである。過剰に古典的な羞恥の表情をあからさまに浮かべていたという証言もあるが、そりよりは何かの秘密を守ろうとしてあらゆる現場的現場から自らの体重をずらそうとした反射行動であった公算が大きい。

 

 

■  80 :名無しさん@ベンキー :**/01/05 01:29

 一年くらい前、夜中コンビニのトイレに入ろうとしたら、高校生くらいの可愛い女の子がちょうど出てきて

 俺の顔を見るなり「うそ!」て立ちすくんだ。

 え、初対面だよな? 俺何か悪いことした? と振り返りながら入ると、もんのすごいUNKOの臭いでした。

 むわぁあ~

 和んだ~

 深呼吸した~

 一瞬かすかにビビッた直後だったのでなおさら和んだ~

 ツンデレ進化形ぇ~……

 

 

 ■『平成教育委員会秋ニッポンを学ぼうSP』(おろち裏年10月2日放送)

 マス北野「えーうちにはですね、二人のおろちらがいるんです」

 高島彩「あ、そうなんですか。おろちりんですか、おろちろうですか」

 マス北野「少なくとも一人はおろちろう」

 ここで問題。

 ――マス北野におろちりんがいる確率を答えなさい。

 国語の問題でもなぞなぞでもありません。算数の問題です。

 小学生のおろおろ率は5%です。

 

 『おろち改元教育委員会秋ニッポンを学ぼうSP』(おろち元年10月2日放送)

 ガス東野「えーうちにはですね、二人のおろちらがいるんです」

 桜庭彩「あ、そうなんですか。上のおろちらはおろろうですか」

 ガス東野「はい、そうです」

 ここで問題。

 ――ガス東野におろちりんがいる確率を答えなさい。

 国語の問題でもなぞなぞでもありません。算数の問題です。

 小学生のおろちがい率は65%です。

 

 

 『おろち記念教育委員会秋ニッポンを学ぼうSP』(おろち経年10月2日放送)

 ダス南野「えーうちにはですね、二人のおろちらがいるんです」

 元木彩「あ、そうなんですか。おろちろうはいますか」

 ダス南野「はい、います」

 ここで問題。

 ――ダス南野におろちりんがいる確率を答えなさい。

 国語の問題でもなぞなぞでもありません。算数の問題です。

 小学生のおろちック率は15%です。

 

 『おろち教育委員会秋ニッポンを学ぼうSP』(おろち経年10月2日放送)

 ブス西野「えーうちにはですね、二人のおろちらがいるんです」

 白井絢香「あ、そうなんですか。上のおろちらはおろりんですか、おろちろうですか」

 ブス西野「おろちろうです」

 ここで問題。

 ――ブス西野におろちりんがいる確率を答えなさい。

 国語の問題でもなぞなぞでもありません。算数の問題です。

 小学生のおろチンキ率は45%です。

 

 

■ 橘菜緒海という徹底して超然たるパーソナリティがここで一挙に現場的即物実演に引き摺り下ろされていたという現実は、COZMO一同にとっても意外な衝撃だった。なにしろ『しみじみ熟女放屁シリーズ』もとい『ママといっしょにウンチシリーズ』もとい『お股ぽきぽきシリーズ』もとい代表作としてどれを挙げても時間差目移りのあまり肛門が痛痒くなってしまう橘印諸々を丹精こめて作っていたバーチャルアーチストである。基本的に菜緒海の感性は、そして菜緒海に対する周囲の評価も、家族愛を尊重する通俗的保守的な生活趣味に属していたのであり(微妙な比較で傍証すれば実際奈緒美は、つげ義春より手塚治虫を、キューブリックよりスピルバーグを、安部公房より司馬遼太郎を、シェーンベルクよりコープランドを、ガンダムよりマジンガーZを、エヴァよりもののけ姫を、岩塩よりケチャップを、デュシャンよりダリを、河原温なんて名も知らず東山魁夷を愛するタイプの人格だったことが湊芸大各授業の提出物等の資料から判明しているといえばなんとなく伝わろう)、彼女自身がビザールアバンギャルドを演ずるなどとは菜緒海本人にとっても周囲にとっても全くパラダイム外の論外だったのである。

(第99回 了)

 

 

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* 『偏態パズル』は毎月29日に更新されます。

 

 

 

 

 

■ 三浦俊彦さんの本 ■

天才児のための論理思考入門  下半身の論理学

 

 

■ 予測できない天災に備えておきませうね ■