小原眞紀子さんの連載小説『はいから平家』(第13回 最終回)をアップしましたぁ。『はいから平家』もいよいよ最終回です。連載開始前に小原さんからメールをいただいていたのですが、最終回に掲載する方がいいだろうといふことで石川の判断で保留していました。以下全文を掲載します。

 

石川さま

 

このたびは小説作品のご依頼、ありがとうございます。こちらは古いもので恐縮ですが、自分の純文学的なテーマを集約した大切なものです。

 

当時、某大手出版社の有名文芸誌に三作の短編をたて続けに掲載し、もう少し長いものが出来たら本にする、という約束をもらいました。「はいから平家」は、そのときの編集者のおかげで完成に近づき、編集長サイドまで上ったのですが、異動で担当が変更になり、コミュニケーションが取れなくなりました。ま、単行本にするという約束がネックになって、意味不明のことを言って逃げただけかもしれません。私も「自身の判断ではこれはもう完成している。本にしないなら掲載しないでくれ」と申しましたので。それで、ちょうど他のことに取りかかっていたこともあり、そのまま仕舞い込んでおりました。

 

石川さんの教えには逆らうようですが、編集者という肩書きのある人の言うことをすべて糧とし、忍耐強く精進するにも限界というものがあります。新担当者とも、その後の担当となった女の子とも電話で話しましたが、正直、その頃からすでに編集者の質がどんどん下がり、回転も激しくなった感がありました。「少なくとも私は、この人たちに振り回されて人生の時間とエネルギーを浪費するわけにはいかない」とはっきり思ったことを覚えています。

 

20年も前の話です。小説には携帯電話も出てきませんし、神戸は震災(関西の)以前の姿です。ただ歳月を経て読み返しても、ほとんど手直しすべきところはありません。

 

私も文学金魚で編集委員を務めさせていただき、編集者の立場や見方、その辛さもよく理解できるようになりました。ですからそう悪く言う気にはなれないのですが、さて、当時のその G 編集部と私の判断の、どちらが正しいのか。今現在、私が唯一ご信頼申し上げる編集者である石川さんに、あとは委ねたいと考えております。

 

かわいい我が子の「はいから平家」を何卒、よろしくお願い申し上げます。

小原眞紀子

 

文学作品の評価は相対的です。また素晴らしい作品なら売れるのかと言えば、そうとも言えないのも確かです。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーがおっしゃっているように、マーケティングによって商業的な成功が決まることもしばしばです。ただ物書きさんは質の高い作品を継続的に書き続けられなければ、成功もへったくれもありません。

 

作品を継続的に書いて発表し、本にまとめるまでが物書きさんの仕事です。また発表場所と書籍刊行の仕組みは作家自身が能動的に作り上げるものです。どんどん執筆依頼が来て何も言わなくても本にしてもらえる作家はほんの一握りです。純文学の世界ではほぼあり得ない。そこまで考え抜いて、自分から積極的に行動して、ようやく文筆業らしい体裁になるかならないか、といふのが今の文学状況です。

 

文学金魚もそろそろ現実の文学界で結果を出さなければならない時期が近づいています。現在は文学の過渡期で、作家の評価も含めて混乱が続いていますが、それもそろそろ先が見えてくるのではないかと思います。文学の将来的見通しが見えた新人作家か、現状をじーっと見つめながら考え抜いた成熟した作家が、次の時代の文学の基礎を作るのでしょうね。

 

 

文学金魚は『Web文芸誌のパイオニア~文学金魚大学校セミナー開催・新人賞支援プロジェクト』(クラウドファウンディング)を開始しました。今年は文学金魚でいよいよ文芸出版を始めます。それと同時に現在の、特に純文学にとってはとても厳しい出版状況を乗り切るための、文字通りの新たな出版システムを確立したいと思います。皆様のご参加をお待ち申し上げております。

 

文学金魚大学校セミナー(500dpi

 

 

小原眞紀子 連載純文学小説 『はいから平家』(第13最終回) pdf版 ■

 

小原眞紀子 連載純文学小説 『はいから平家』(第13最終回) テキスト版 ■