大篠夏彦さんの文芸誌時評『No.025 文學界 2015年05月号』をアップしましたぁ。馳平啓樹さんの『自由の国』を取り上げておられます。中国に単身赴任して、日系現地企業で働く男のお話しです。馳平さんは実際に中国にお住まいで、現在の中国の状況をよくご存じのようです。しかし『自由の国』は情報的な目新しさではなく、作品として優れています。

 

大篠さんは、『『自由の国』は人間の自由を巡る、矛盾し混乱した現実の底にまで届いている作品である。(中略)作品の末尾もまた、無条件の自由など存在しないことを示唆している。思考がありきたりの結論に赴きたがるのを、最後までこらえ切った単純で美しい叙述である。『自由の国』は正統な純文学作品として秀作である。ただこのような作品を量産することは難しい。馳平氏のさらなる作家としての力量が問われるだろうが、彼が『自由の国』を書いたことをわたしたちは忘れない』と批評しておられます。大篠さんは厳しい批評をお書きになりますが、ほぼ絶賛ですねぇ。

 

石川も『自由の国』を読みましたが秀作だと思います。ただそれが社会的に、あるいは狭いですがそれなりに権威のある文壇で認められるかどうかはまた別です。ちょっとシニックな言い方をすれば、作品が素晴らしければ売れたり評価されたりすると考えるのは甘いのであります。しかし馳平さんは自ら書いた『自由の国』に手応えがあるはずです。他者が振り向いてくれなければ、ぐずぐずせずに次の作品を書く。それが作家の進むべき正しい道であります。

 

 

大篠夏彦 文芸誌時評 『No.025 文學界 2015年05月号』 ■