皆さん、ご無沙汰ですう。今回のタイトルはちょっとダブルバインドでさ。女の事業者にとってのステークホルダーってのと、ステークホルダーが女、ってのと両方あるよね。まぁ。どっちでもいいんだ、ステークホルダーっていう例の言葉に触発されただけなんだからさ。お察しの通り。
丸川珠代氏が、オリンピックで酒の提供をどうするかってことに関して 「ステークホルダーの存在があるので、組織委員会としてはそれを念頭に置いて検討すると思う」と言い放って、ちょいと炎上した件ね。ネット民たちはもちろん、丸川さんへの悪口のオンパレードで、国民こそがステークホルダーじゃないのかとか、そんな五輪だって認めちゃっていいのかとか、子供の使いじゃあるまいし、それで大臣が務まるのかとか。
要するに五輪のスポンサーにアサヒビールがいて、これがオリンピック会場での酒類提供に圧力をかけたんじゃないかって推測されているわけね。丸川大臣の言葉は、その圧力に対して、何の批判もなくそれに従うだろうって言ってる。表面的なテキストとしては。ほんで市井の飲食店が酒類を提供できずに困っているコロナ下で、あんたはそれいいと思ってんのか、みたいに非難されるのは当然というか。でも当然ってことは、ご本人も覚悟の上だったんじゃないかな。
りょんさんはさ、なんとなくその言葉にむしろ胸がすかっとしたというか、ざまみろというか。だってそのスポンサーは絶対に不買運動を起こされる。オリンピックのスポンサーになるってことはイメージアップを狙ってのことでしょ。本末転倒になるよね。実際、オリンピックでのアルコールの提供は中止になったみたい。これを丸川大臣のお手柄だって言う人はあんまりいないみたいなんだけど、りょんさんはそう思いたいなぁ。買いかぶりって言われるかもしれないけど、そういう解釈のほうが愉快じゃないの。
丸川大臣はクールビューティーで、しかもマスクしてるから余計なに考えてるかわかんない感じだよね。だから共感しづらいところもあると思うけど、いっそその神秘性を崇めて幻想を膨らませてみるのも面白い。感情豊かに「暴露してやるぞ」とか、「私はこれを許しがたいからリークしますよ」って野党的な雰囲気を漂わせてれば、国民からは喝采を浴びたのかもしれないけど、それをやったら大臣として逆に保たないよね。だってそんな体制内反体制は単なる人気取りで、逆に不誠実でしょ。この場合は、子供の使いみたいに事実としてさらっと言うってのは、考えられるかぎり最高の戦略だと思うんだけど。
まぁ、我々から見たときの感じがいいか悪いかは別として、それがもたらす結果を見通せるのが賢いってことだろうけど、特に女の政治家は賢くないとやっていけない。男だったら義理人情だとかなんだとか、雰囲気で周りに助けられて、ってことがあるけどね。女がいかに義理堅くとも、普通は利用されるだけだから。最終的には誰も、恩になんか着てくれない。女の政治家はよほど賢くないとやっていけないって想像に難くないよ。
丸川さんが、事態の是非に対する判断をしないで、ただ事実を述べるスタイルをとるのは、結局のところ自分にはどうしようもないってことの表れだと思う。権力なんかない。何もできない。そういうことだと思う。だって実際ステークホルダー、つまりスポンサーは代償を払ってるわけなんだから、権利を放棄しろって迫るわけにいかないよね。国民こそがステークホルダーだって、それもその通りなんだけどだけど、スポンサーの人たちだってやっぱり国民なわけだよ。国民、あるいは法人税を払っている各企業は平等にステークホルダーとしての権利を有している。だとしたら、追加で権利を買った人は、やっぱり特別な権利を持ってるわけだ。国民みんな平等なのに、クジに当たって観戦できる人がいるのとおんなじだよ。
とにかくステークホルダーは主張する権利はある、少なくとも。だから、そういう主張があります、これはステークホルダーとしては当然の主張です、と事実を述べる。今の丸川さんの立場で、できるのはそこまでなんだよ、きっと。口角泡飛ばして非難してみたり、腹を立てた口調で熱いパフォーマンスを演じたり、そういうのは野党の常套手段だけど、じゃ何ができるかっていうの。
無能なら無能で、子供の使いみたいにあるがままを伝えたら、それを見て判断するのは国民で、もちろんそれは国民が主権者だからだよ。だから政治家がパフォーマンスで、「俺が変えてやる、俺が何とかしてやる」って、ありもしない有能さをアピールするのは結局、自分のためだもんね。判断をするべき国民ってのは、今回の場合、スポンサーにとっての大切な顧客たちでもあるし、スポンサーが権利を振りかざしたらどういうことになるか、そんなこと炎上しようとしまいと、火を見るより明らか。丸川大臣の物言いは、まともな効果をもたらしたと思うよ。
同じくクールビューティーの小池百合子都知事は、ちょっと体調崩しちゃったみたい。心配だね。しかも過労。あんな無表情でも、心労もいっぱいあるんだろうね。政治家同士、互いに批判があるのは当然だけど、こういうときには普通にお見舞いの言葉を述べたらいいんじゃないのかな。心を込めて言え、とまでは言わないから。小池さんのやってることがすべて素晴らしいかどうかは別として、まぁコロナ対応なんか矛盾してるところもいっぱいあるけど、これまた一存では決まらないってことはわかってる。ともあれ常によい座席を与えられ、組織に守られてきた男の政治家なんかは、自分だけの力で頑張ってきた、そうせざるを得なかった女性に対しては最低限、紳士的に振る舞ってほしいね。
アメリカ副大統領のカマラさんが、リーマンショックのときに住まいを奪われた人たちのために銀行と戦った経緯を語っている記事を読んだんだけど。まぁ、映画の主人公みたいにかっこいいよね。カマラさんは表情も生き生きして、とても魅力的な人なので、そんなふうに動いてた様子が目に浮かぶ。だけど日本ではこういうふうに、特に女の人が活動するってのはイメージしづらい。生き生きしてるってことは自分の考えで、自分の判断に基づいて、自由に行動してるってことだよね。それをやると、日本では足を引っ張られる。若い男の大臣とかだと、その生き生きした感じに魅力を感じる人もいそうだけど、女の人だと生意気だとか、遊び半分とか言われそう。結局、長く務め上げようと思ったら、クールビューティーすなわち鉄仮面みたいに振る舞うっていうのが、やっぱ合理的なんじゃないか。
なんかね、そういう社会なんだよ。足を引っ張るのは女同士よりも男たちだけどね。優秀な女に対する男の嫉妬ととれば、男同士の間でも実力の差を見せつけられて、さらに女にまで乗り越えられちゃかなわないよね。でももっと現実に即して言うと、自分たちに残された、わずかな利権を守らねばってことだね。男の世界のルールを知らない、女という名のヨソモノがやってきて、独善的な思いつきで引っ掻き回されちゃ、そりゃ腹立つって。だから女性は、子供の使いみたいに、どっかの力のある人から言いつけられたから、その通りやってますー、わたし面白くも楽しくもありませんーって顔するのが一番スムーズに事が運ぶよ。
そういえば丸川さんは夫婦別姓に関して、自民党がそれに対する反対意見を地方議員にも強要したとき、その強要する文書に、丸川さんも名前を連ねてたって突き上げを食ったことがあったね。何しろ「丸川珠代」も本名じゃなくて、ビジネスネームだって。そんでそのことを責められてるとき、丸川さんがなぜかずっと笑ってた。それがまた感じ悪いって、散々言われてたんだけどさ。
丸川さんがなんでずっと笑ってたのか、これはりょんさんにもわかんないけど、彼女がすごーく賢いとしたら、すべてが茶番だと思ってたんじゃないかな。それが一番面白くて納得がいく。要するに丸川さんが自分の名前をどう扱おうと、そのことについてどう思っていようと、何も変わらんわけだよ。もちろん変えるのが政治家の仕事なんだけど、ミニマムな個別事象と、国民全体を対象としたマスとは全然違うんだから。
実際、戸籍上のいわゆる本名をなんとしても別姓にしたいって主張をする人たちと、丸川さんみたいに結婚したときにはすんなり夫の姓にしてしまって、ビジネスネームで旧姓を使うっていう人たちの立場は、野党が言うほど同じではない。というか場合によっては、ほとんど正反対かもしれない。だけどそんなこと言うわけにもいかないよね。いわゆるリベラルを自称する人たちを全員敵にまわしちゃうよ笑。
今回の最高裁の「現在の夫婦別姓を認めない戸籍制度を合憲とする」って判決に文句言う人もいるけど、これもちょっとお門違いな気がする。最高裁は、合憲か違憲かと訊かれたので合憲だって言っただけなんじゃないのかな。選択的別姓が社会全体に関して望ましく、そのことが自分たちの幸せを増進すると思うんだったら、国民が世論で盛り上げて、新たな法律を作らせればいいじゃない。その新しい法律もまた違憲ではないって、最高裁は言うと思うよ。それが裁判所の判断ってもんでしょ。世論で盛り上げていくべきところに、裁判所が背中をプッシュしてくださいってのは違うかな。
だいたい選択的になったら、みんなが自由でいいじゃないかって言うけど、そうとも限らない。「選択的に別姓にしてバリバリ働いてる女性もいるのに、あなたは夫の姓なんかに従属して、なんなの情けない」っていう目に見えないプレッシャーが、今度は大多数の女の人にかかることにもなるよね。選択を強いられるって、実はものすごく負担。そんな選択ができる自我の強い、声の大きい人の主張ばっかりが目につくけど、黙ってる人たちの大多数の気持ちは違うかもしれないよ。その大多数のステークホルダーの顔色を気にしなきゃいけないのが政治家ってもんだからさ。
長くきちんと仕事を続けていこうと思ったら、自分の職分をわきまえて、目立たないようにちょっとずつ、ちょっとずつ何かをずらしていくようにする。それしか方法はない。そういうやり方でなければ、女の政治家は自分を支援してくれる人たちに本当に実質的な見返りを与えることなんかできない。パフォーマンスだけで蓋開けたら空っぽでした、っていうのが一番みっともないよね。男でも女でもさ。女性のステークホルダーは、そんなもんに騙されないから。賢い女性の政治家も、そういう立場からキャリアを積んできたわけだから、よくわかってんじゃないの。
りょん
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