三浦大知という人の特集。ミュージシャンで、「スーパースターがやってきた」という見出しだが、マイケル・ジャクソンから受けた影響について語っている。確かにマイケル・ジャクソンはスーパースターだった。それは知ってる。
で、その人と、満島ひかりという女優さんが「15 年前、同じスポットライトを浴びた仲」ということで、対談している。ときどき他誌でも見かけるが、この、記事を半分に分けて「続きは○○ページから」というのは、どういうんだろう。単に組版だけの問題なのか。
週刊誌などならともかく、ヴィジュアル重視の雑誌では妙な感じがする。とはいえ、はからずしもの効果もある。さしたる深い内容のないインタビューや対談では、それが表層的な「意匠」であることが納得できる。雑誌全体に撒かれた飾りになるのだ。
これは週刊誌で特ダネ記事など読んでいて、「続きは○○ページへ」となっていて、ページを繰る間も惜しい、といった切迫感とは対象的だ。が、こういう誌面もあり、だろう。活字媒体が意味を離れて意匠化するということは、この雑誌における「文学の商品化」とも相まって、興味深いかもしれない。
「ウツボカヅラの甘い息」( 柚月裕子 ) はタイトルもなかなかいい。連載小説で、庶民的な生活をおくる主婦が、セレブな暮しをする元同級生の別荘に呼ばれるところである。女性好みの小説らしく、さまざまな商品の名前が並ぶ。使っている商品のランクによって、人間のランクが決まるといった反文学 = 文学はバブルの頃の『なんとなくクリスタル』に端を発する。が、ここには「物語」における価値の逆転がある。
精一杯のお洒落をしていった主人公だが、ハイブラウな別荘にやはり気後れし、腹も立って帰ろうとする。と、元同級生はサングラスを外し、大きな痣を見せる。
元同級生が言うには、昔は自分は地味でブスでいじめられ、無視されていた。( で、その頃に主人公が声をかけてくれたのが忘れられない、というのはベタな話だが。) 美容整形で美しくなったが、付き合った勤務医と別れようとして硫酸をかけられ、痣ができた。勤務医からとった金でフランスへ渡り、女の痣を偏愛するピエールと出会った。彼の持っていた化粧品を日本で売り出し、成功した。
ここでは女の「商品価値」はめまぐるしく上がったり、下がったりする。逆に言えば、人の価値が上がったり下がったりするのは、それが「商品化」されているからに他ならない。
元同級生は化粧品を売る者として、この痣では人前に出られないが、ピエールはこれを偏愛している。ついては主人公に、自分の身代わりになってほしいと言う。主人公は美しくならねばならない。これから「商品」の仲間入りをするのだ。
長岡しおり
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■