ケニー敏江 連載小説『四角い海』(四)をアップしましたぁ。『四角い海』は現実世界で小説を書いている女性と、父親の遺言で大嫌いな男と結婚させられた女性を主人公にした小説内小説が並走する物語です。主人公の女性の日常と書き続けている小説が交互に表れる。で、主人公の女性は現実世界で「文学の叢」というXのスペースで仲間に囲まれ、会社でも同僚たちと交流しています。対する小説内主人公はほぼ一人で大嫌いな男の死に直面しようとしています。
小説は文字表現ですから、動画(映像)のような直接的衝撃を与えられません。でもセックスと死は別。小説でセックスシーンを書くのは案外難しい。読者がスケベだというわけではないすが、セックスシーンはなぜか記憶に残ってしまう。要するに上手に小説内に入れ込まないとその部分だけ浮いてしまう。作家の意図は「重要なのはそこじゃない」であっても読者は記憶して印象付けられてしまうことが多いんですね。
もう一つの死ですが、これは小説にとっての最高の贅沢です。登場人物を死なせてしまったらもう二度と使えない。とっても魅力ある登場人物でも嫌な奴であっても死は決定的喪失です。『四角い海』の小説内小説では航太という青年が胃癌で死にかかけている。小説内小説の主人公が嫌っているだけあってあまり人好きのする青年としては描かれていない。この青年は死ぬのか。死ぬとどういう欠落になるのか。それは小説という言語構造体が抱えるどんな欠落の表象なのか。次回は最終回です。結末が楽しみであります。
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