星が告げるのは運命、あるいは読むべき一冊。どちらが当たるかは、読んでみるまでわからない。紹介した本はおおむね名作であるから、占いが外れても損はしない計算である。格言の深みについては、受け取る星座の側の問題であり、外れたとしても責任は星に取ってもらうことにしている。今月もあなたの本棚が、少しだけ豊かになりますように。
文学星占い
来月のあなたは、勢いよく始めたプロジェクトが第三週目に失速します。これは予言ではなく統計です。そこで石川淳の小説を読んで、混沌の中に美を見出す技術を習得してください。失速した勢いは、別の方向に転用できます。ラッキーアイテムは方向転換できる椅子。
来月の格言:「失速は、助走の別名である」。
来月のあなたは、おいしいものを食べた瞬間に人生が好転します。根拠はありませんが、試す価値はあります。パール・バックの大河小説を読んで、大地と食の豊かさに思いを馳せてください。読んでいるあいだ、不思議と腹が満たされます。ラッキーアイテムはできたての白米。
来月の格言:「人生の転機は、だいたい食卓にある」。
来月のあなたは、三つのことを同時に忘れます。大丈夫です、三つとも大事なことではありません。たぶん。サルトル『嘔吐』を読んで、存在することの不思議さに向き合えば、忘れたことなど些細に思えてきます。ラッキーアイテムは大きめのメモ帳。
来月の格言:「忘れた三つより、覚えている一つの方が価値がある」。
来月のあなたは、捨てようとしていたものに救われます。断捨離は来月以降にしてください。室生犀星の詩集を読んで、ふるさとや古いものへの愛着を肯定してもらいましょう。捨てなくてよかった、という感情は人生を豊かにします。ラッキーアイテムは古い手帳。
来月の格言:「捨てる神あれば、拾う思い出あり」。
来月のあなたは、スピーチを頼まれます。準備しておいてください。バーナード・ショーの戯曲を読んで、機知に富んだ言葉を繰り出す訓練をしておきましょう。うまくいけば伝説になります。うまくいかなくても、笑いは取れます。ラッキーアイテムはメモした名言。
来月の格言:「名スピーチは、準備した即興である」。
来月のあなたは、読みかけの本を五冊抱えたまま、六冊目を買います。これは病気ではなく才能です。ジョルジュ・ペレックの実験小説を読んで、世界を緻密に分類することの快楽に溺れてください。六冊目こそ、運命の一冊かもしれません。ラッキーアイテムは新品の本。
来月の格言:「積読は、教養の予約である」。
来月のあなたは、褒められた直後に落とし穴にはまります。油断が原因です。ジェイン・オースティン『高慢と偏見』を読んで、人間観察の精度を上げておいてください。褒める人の目の奥を読む技術が、来月のあなたを救います。ラッキーアイテムは慎重な一歩。
来月の格言:「褒め言葉の裏を読む者が、最後に笑う」。
来月のあなたは、ライバルだと思っていた人が実は味方だったことに気づきます。遅いですが、気づかないよりましです。ストリンドベリの戯曲を読んで、人間関係の複雑な綾を舞台の上から俯瞰してください。
来月の格言:「敵と味方の境界線は、だいたい自分が引いている」。
来月のあなたは、読んだことのないジャンルの本に手を伸ばすと、人生が変わります。ブルーノ・シュルツの幻想小説を読んで、現実とも夢とも違う第三の場所に迷い込んでください。迷い込んだまま帰ってこなくても、それはそれで旅です。ラッキーアイテムは知らない棚の本。
来月の格言:「地図にない場所にこそ、本当の目的地がある」。
来月のあなたは、締め切りを守ります。えらいです。その分、少しだけ自分を甘やかしてください。永井龍男の短編を読んで、小さな日常の積み重ねが人生の輪郭を作ることを、静かに確認してください。ラッキーアイテムは好きな銘柄のお茶。
来月の格言:「締め切りを守った者には、ご褒美が必要である」。
来月のあなたは、誰も解けなかった問題をあっさり解きます。ただし解いたこと自体を忘れます。ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読んで、「語りえないものについては沈黙しなければならない」という言葉を、自分の天才への言い訳として活用してください。ラッキーアイテムは走り書きのメモ。
来月の格言:「天才の閃きは、本人が一番気づかない」。
来月のあなたは、偶然手に取った本が人生の一冊になります。書店での直感を信じてください。マルグリット・ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』を読んで、時代を超えた孤独と知性に寄り添ってみてください。運命の本は、いつも呼びかけてきます。ラッキーアイテムは書店での直感。
来月の格言:「本があなたを選ぶとき、逃げてはいけない」。
by 天野ルミナ
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