中日の木下雄介投手がリハビリのトレーニング中に倒れ、数日後に亡くなった。27歳。妻子持ちでもまだ少しあどけなさが残るというか、もちろん体格や体力は超のつく一級品だったろうから「突然死って結構あるんだよ」と言われても、すぐには納得し難い。野球よく知らない、りょんさんですらそうなのだから、将来を嘱望された選手のご家族の無念、ファンのショックははかりしれない。
ただ、このことはあまりマスコミで報じられてなくて、ネット上でも追悼の動画とか、今のところあまり数多くは上がってないみたい。こんなときのTwitterでは、倒れたのが1回目のコロナワクチン接種の1週間後だったことから、いわゆるTwitterらしい言説が飛び交っている。すなわちそういった誤解や混乱を招く危惧があるから静かなんじゃないか。そうだとしたら二重に悲しい気もする。
しかし不整脈はあったというけど、一般には、だからすぐにどうというものでもないと思うし、こんな若いアスリートが急死するって、ほんとに「結構ある」のかって、りょんさんはこのところ統計データについてしこたま考えた。今までの人生でついぞなかったことだけど、統計というのはムズかしいもんだって、よくわかった。統計の嘘、ってよく言うよね。誰も騙すつもりなんかなくても、そのデータを使って説明してる人がそもそも騙されてるとか、よくあるみたい。
ちょっと前に、変だなぁと思ったのは、「今は重症化率が下がってるから医療崩壊なんかしてない」って、元救急救命士か何かのお兄さんがYouTubeで言ってたんだよね。そうやって万事、煽ってるに過ぎない、って話だった。若い人は重症化なんかしないんだから、そんでもって今の重症化率はすごく低いんだ、それなのに医療崩壊なんかするはずないだろ、って。
確かにベッドが埋まっている率っていうのは結構、データにもばらつきがある。これ以上に状況が悪くなる前に注意を喚起してる、ってところはあるかもね。だけどよく考えたらさ、患者の数そのものが最初の頃の100倍になってるわけでしょ。それだと重症化率が低くたって、重症化する人の絶対数は結構、いっちゃうんじゃないの。そんで重症化する直前の予断を許さない人の数もむちゃくちゃ増えてるだろうし、そうなると現場としては超忙しいんですけど、限界なんですけど、ってことになっても不思議じゃない。
その一方ではもちろん、これからワクチンの接種が40代・50代にも進めば、重症化のリスクはどんどん下がっていって、結局ゼロに近くなるってシナリオも充分あり得るわけだよね。その辺のせめぎ合いというか、拮抗する戦いの行方を見守るしかないっていうのが、妥当な解釈なのかなぁ。菅首相も小池都知事も、端から見てると動きが鈍いというか、ボーっとしてるんじゃねぇって怒ってる人も多いけど、その辺を見極めようとしてるってところじゃないのかなぁ。とにかく大量のいろんなデータが耳に入ってきてるだろうからね。
最近、なるほどと思ったのは、アメリカかどっかのイベントで、何百人ものデルタ株感染者が出て、その70%以上がワクチンを2回完了した人だったって、そういうニュースね。それってワクチン効かないじゃん、て思うよね、フツー。これについてどっかの先生がデータの見方を教えてくれてて、仮にその地域でほとんどの人がワクチンを打ってたら、ワクチンを打って感染した人の割合は多くて当たり前だって。そりゃそうだ。極端な話100%がワクチン完了してる場合には、感染者の100%がワクチン接種者でした、ってことになるんだもんね。
でもさ、さらによくよく考えると、我々が期待してる結果ってのは、そうじゃなくてさ。ワクチン100%接種してたから1人も感染しませんでした、とか、ワクチン100%接種してたから重症化した人が0人でしたとか、そういう流れを期待してるわけだよね。そこんとこ、データの読み違えは認めるとしても、期待される文脈が違ってるって感じ。
で、この集団からも重症化(単に入院?)した人も何十人かはいたんだけど、それってアメリカとかの話だから、ワクチン完了してから、もう半年以上前になるのかも。だからやっぱり追加接種が必要とか、そういう話になるのかな。ほんとにニュースとか統計とかデータっていうのは、一筋縄の解釈じゃいかないね。
ほんでもって新しくラムダ株ってのが日本国内で1人見つかって、これもオリンピック前の7月20日に見つかったのに隠してたって言われてるけど、検査で確定したのは最近なんだからって擁護する人もいるし、その辺はよくわかんない。だけどさ、我々にとっては政治的な責任問題とか社会的な告発とか、そういうことより何より、このラムダ株ってのがどのくらい危険なのかって、もう、ソコだよね。
感染率が高くなれば弱毒化するはずって、ちょっと前に聞いてたんだけど、その理屈とかはどこに行っちゃったのかなぁ。デルタ株は感染率も重症化率も高くて、そんでもってこのラムダ株もそれ以上に感染率が高いってことだけど。ただ、どっかの先生が、デルタ株と同様に、重症化に関してはワクチンの効き目が保持されると考えるのが普通だろう、って。もうそれ信じるしかないよね。ヴィールスとワクチンの構造とか、機序というのかな、そういうのを知ってる人が言うんだから。とりあえず。
で、専門家でも何でもなくて、統計データってムズい、ってことしかわかんなかったりょんさんが、こんなこと言っても無駄かもしれないけどね。とにかく木下投手のことで、若い人がワクチンを打つのはどうなんだ、亡くなったこととワクチン接種は関係あるのかないのか、まぁ考えたわけだよ。どう考えたらいいのか、って、ことだけだけどね。
それで、結論ってほどのもんじゃないが。。。関係ないとは言えないけど、「原因」ではないんじゃないかって、そういう考えになりました。1つの重大なことが起きる「理由」って、たいてい1つじゃないと思うんだよね。いろんなことが絡まりあって起きる。会社を辞めるとか、離婚するとか、そーゆー日常的な重大事だって1つの理由だけで決める人はいないよね。さまざま事故も、ミスが不運にも重なって起きるっていうし。老人が亡くなるのだと、体力も衰え、たまたま転んで骨折して、寝たきり状態が続いていたところにインフルエンザが流行して、とかっていう流れが目に見えやすくて、なんか諦めがつきやすい。原因は1つでない、という因果の絡まりがわかりやすい。それはある意味、幸福なことかもしれない。
ワクチンは一般的に強い作用を身体にもたらすから、それがまったく影響がなかったなんて、誰にも言えないと思う。だけどそれが唯一の「原因」か、サリドマイドや水俣病の例みたいにはっきりと指弾できる「原因」で、それがなければ起きているはずはない、とまで言うのは難しいんだろう。それだったら確かに、世界中で同じ例がもっと起きてないと。ただ、死には至らなくとも重い反応が出てる例はよくあるから、まったく関係ないわけはない。それがその日、その時に発生したことについては、朝ご飯が何だったとか、その日の気温がどうだったとか、前夜何時に寝たとか、リハビリで何か薬を服用していたとか、少なくともそういったことと同じか、それ以上にはワクチンも影響したと考えるべきなんだと思う。そういった様々な理由の重なり合いで、通常はあるいは稀にではあっても、重い副反応で済むところが、亡くなるところに至ったんじゃないか。
ワクチンのせいじゃない、というわけではないし、すべてのあり得る因果関係の組み合わせをクリアしなければワクチンとして認可すべきでない、というわけでもないんだろうね。良識ある専門家が言うようにメリットとリスクを勘案するしかないって、ごくフツーの結論になってしまったけど。。。こればっかりは、専門家が言うんだから、そうなんだろうって、ただ思うだけよりはいいんじゃないか。
ほんとに物の見え方、判断っていうのは、その対象との距離感、立ち位置というか、角度によってまったく異なってくる。利害関係とか社会的立場とか、そういうのが関わってくれば逆にわかりやすいんだけど、誰もそんな計算なんかしてないつもりでも、なんであのとき、あんなふうに思ったんだろう、そう見えたんだろうってこと、あるよね。
折り紙の「だまし舟」ってあるよね。ヨットの帆先をつかんでるつもりが、バタンと閉じるとそれが舳だったり。舳をつかんでるつもりが、バタンと閉じると帆先だったり。統計データも、どういう位置からグラフを描くか、つまり瑣末だと思われた要件を省略して描くかって、必ずしも悪意があるわけでなく、ただどこかで無意識的に、結論ありきで編集してるってことはあるだろうね。だから論文っていうのも、実はあんまりアテにならない、長い時間だけがそれを検証していく、って言われる所以なんだろう。
結局、我々は時間をかけて、それが帆先なのか舳なのかではなくて、帆先と舳が入れ替わる構造そのものを捉えるように努める、それしかないんだろう。つまり我々がどんなに思い込みが激しいか、まぁ言葉を変えると、いかに間抜けなのか、何もわかっちゃいないのか、って気づくだけってこと。そんな我々のこと、マスコミとかのことをよく知ってるから、木下投手のご家族はあえて死因を伏せてるんだと思う。時間だけを頼るべきで、そのときどきの思い込みには巻き込まれないのが一番だから。それが喪に服するってことだと思う。
りょん
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