第1回 文学金魚大学校セミナー ③ 山田隆道 小松剛生(ゲスト)
山田隆道:昭和51年(1976年)大阪府吹田市生まれ。清風南海高等学校、早稲田大学教育学部教育学科卒。大学時代から放送作家として活動し始め、現在は小説家・エッセイイストとして知られる。そのかたわらテレビやラジオのコメンテーターなどを務める。文学金魚で小説『家を看取る日』を連載中。プロ野球にも詳しく、現在日刊ゲンダイで『対岸のヤジ~プロ野球人物研究~』を連載しておられる。
小松剛生:昭和61年(1986年)東京都生まれ。青山学院大学文学部日本文学科中退。平成26年(2014年)に『切れ端に書く』で第一回金魚屋新人賞 辻原登奨励小説賞を受賞。文学金魚で『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』を連載中。
二〇一六年六月十八日に、東京目黒の日仏芸術文化協会で行われた第1回文学金魚大学校セミナーのレジュメをお届けします。ラストバッターは山田隆道さんです。文学金魚では山田さんの発案の『リード小説』を募集しましたが、その最優秀作をセミナー形式で山田さんに決定していただきました。またリード小説大賞決定セミナーには、現在文学金魚でショートショート小説を連載中の小松剛生さんにゲスト参加していただきました。
文学金魚編集部
山田 作家の山田隆道です。よろしくお願いします。第三部は、今回のセミナーに合わせて文学金魚のツイッターで募集させていただいた、リード小説についてです。まず最初に、わたしがなぜリード小説を発案したのかについてお話させていただきます。
リード小説はとても実践的なライティングです。文学的かどうかという点で言うと、ちょっと違う点があるかもしれません。ただ本日集まってくださったみなさんが作家としてデビューしたり、この先も長く書き続けていきたいとお考えなら、必ず役に立つライティングです。実践的、ということは商業的な意味でも自己実現のために必要なスキルの一つです。
わたしは最近では絶滅危惧種に近いかもしれませんが、持ち込みデビューの作家なんです。ずっと小説を書いておられる作家の皆さんは、デビューには新人賞を受賞する必要があるとお考えになっていると思います。実際問題として、作家デビューした方の九割九分までが新人賞受賞作家です。以前は二十パーセントくらいは持ち込みでデビューした作家もいたんですが、二〇〇〇年以降、ほとんどいなくなってしまった。今では編集部に原稿を持ち込んでも、門前払いを喰らうでしょうね。
ただわたしの時代だって、門前払いとまではいきませんが、持ち込みはかなり狭くて厳しい門だったんです。わたしはそれを突破したんですが、その際にものすごく有効だったのがリード小説という考え方だった。ですからリード小説には実践的な裏付けがあります。ちょっとずるいやり方という面もあるかもしれません。作品をセルフプロデュースするための方法なんですが、そこにはまあ、多少のハッタリも含まれますから(笑)。
最初にお断りしておきますが、非常に内省的な純文学作品だけを書いてゆきたいんだという方には、リード小説はあまり意味がないかもしれません。ただ昔ながらの大衆小説を書きたいという方には必要不可欠なスキルです。あ、現代ではあまり大衆小説という言い方はしませんね。だいたいみなさんエンターテイメント小説と言います。今の文学出版の七割から八割はエンタメ小説が占めます。パイとしては純文学よりも非常に大きな市場です。
またもしエンタメ作家として新人賞を受賞し、デビューしたとしても、二作目以降には必ず「どんな話なの?」と編集部から聞かれます。その時に、口頭で長々と物語の梗概を説明してゆくには相当なハートの強さが必要です。目の前に編集者が、たいていは苦虫を噛みつぶしたような顔で座っていて、冷たく「それで?」と聞いてきますから。「ああ推理物ね。最近多いんだよね、トリック考えてくる人。どんなトリックなの? ちょっと古くない?」とかいう感じです(笑)。小説を書きあげてから持ち込んで、「編集長、これ、面白いと思うんですよ」と言ってもダメです。小説編集者の机の上には、山のような原稿と企画書の束が積み上がっているんです。一人の人間がそれを全部読めるわけがない。
ですから小説の企画を、短い文章にまとめてプレゼンテーションするのが有効なんです。物語の内容を口で説明すると心が折れますし、肝心なポイントを言い忘れたりもしますからね。書いておくのが一番効率的で効果的です。
この場合の小説企画というかレジュメは、二百字から四百字の、文学表現に寄りかかった詩的な短篇であってはいけません。そういうものは必要ありません。物語の骨格を端的に表現した文章です。リード小説はそういった小説企画、レジュメという位置づけです。
リード小説はツイッターというツールを利用したので、文学金魚のアカウントを除くと百三十数文字の短い表現です。その制約の中で、この続きをもっと読みたいと編集部に思わせなければならない。またこのリード小説のスキルは、編集部へのプレゼンだけに有効なわけではありません。
もっとシビアな話をすると、出版社には営業の方がおられるんです。本は取次を通して本屋さんに配本されますが、出版社の営業さんが各書店を回って自社の本を置いてくれるよう売り込むんです。首尾良くデビューして本が出て、二作目、三作目が出版されたとしても、営業さんが動いて売り込んでくれないと、本は本屋さんの店頭には並ばない。わたしも何度も経験していますが、自分の本の発売日に本屋さんに行っても、本が棚の奥とか目立たない場所にしか置いてない。奥さんと子供を連れて本屋さんに行って、目立つ場所に入れ替えたりしたこともあります。ちょっと情けない(笑)。
なぜそういったことが起こるのかといえば、営業さんはよほどの大作家でない限り、本を読みません。月に新作の本が十点、二十点出たりしますから、全部読んでいる時間なんてないんです。本を売るためには営業さんが本屋さんに行って、「今度出る本は、これこれこうで面白いんですよ」と営業してくれて、書店員さんが「知らない著者だけど、まあ置いてみよう」という流れになるのが理想です。だから本を読む時間のない営業さんに、自分の本の特徴とか内容を理解してもらわなければならないわけです。
山田隆道著『神童チェリー』
アスキーメディアワークス刊
平成二十三年(二〇一一年)十一月刊
「いやそういうのは文学じゃない」とおっしゃる方も大勢いらっしゃると思います。でも現実はそういった作業を求められる。編集部にも営業さんにも訴えかけることができる、自分の作品の効率的なアピール、プロデュース方法がリード小説です。本の帯の書き方としても使えます。わたしのリード小説の考え方はそういうものです。これについては異論はあってもブレませんよぉ。言い出しっぺの人間がブレては困りますからね(笑)。
で、今回はリード小説にたくさんの作品を応募していただいてありがとうございました。これからはエンタメ小説の編集部や、本を読まない営業さんがどんな反応をするだろうかということを想像しながら、みなさんが応募してくださった作品を公評してゆきたいと思います。
あ、前置きにもう一つだけ。わたしが評価するリード小説は、まずなにより物語の骨格が表現されている作品です。営業さんでも書店のアルバイト店員さんでも理解できる必要があるので、文学的表現抜きの、平易な言葉で書かれているのが理想です。またアイディアのみで終わらず、ストーリーの広がりがあることも重要です。だから登場人物の名前や作品タイトルも、それがネタになっていない限り重要ではありません。詩的な雰囲気があってパッケージ化された作品よりも、読みたいと思わせる企画書的作品の方がいいんです。膨らみのある作品ですね。「短篇っぽいよね。せいぜい百枚くらいじゃないの」とかよく言われますから。また最近では、映像化できるかどうかがポイントになることが多い。ドラマや映画になりそうな作品の方がいいわわけです。短い表現であっても、絵が頭に浮かぶようなリード小説が理想的です。では始めましょう。
みなさんから今回応募していただいたリード小説の一覧をお渡ししていますが(末尾の添付資料参照)、最初の方で気になった作品からいきましょう。5番、8番、15番の作品は、非常に上手に書かれています。文学的で表現として艶があるかもしれない。ただこういう表現は、エンタメ系の出版社編集者や営業マンには伝わらない。さっきお話した、雰囲気や詩的なものはNGということです。9番の作品はちょっと面白いです。
9 刑務所に入った、人型アンドロイドと、会社員の男。二人は相部屋。作られた心と頭脳で、何故犯罪を犯したのか悩む彼と、彼を馬鹿にしながら人生をあきらめた生身の人間の交錯する想いの丈。過ぎ行く時の中で、二人が見つける答えは? Airen_Sea
ただこれも先ほどお話した、スケールの大きさや、映像化に向いているかどうかという点でちょっと問題があります。なぜなら刑務所に入っちゃってる。そこから出て来ない。最初から最後まで刑務所の話だともたないです。刑務所の中の話は面白いと思いますが、短篇向きです。脱走してほしい(笑)。次は22番。
22 特技は猫の解体、趣味は解体した猫の写真を撮って、トリミングして本の栞にすること。そんな男性が、ある日女性に本当の恋をしてしまう。異常者は幸せになってはいけないのか?あなたの倫理観を揺さぶる、サイコな純愛小説、「猫が見つからなくて」 ample_acer
「特技は猫の解体」という記述でサイコパスであることがわかります。そんな主人公が「ある日女性に本当の恋をして」、で物語のきっかけも見えてきます。「異常者は幸せになってはいけないのか?」は作品のテーマを示していますね。でも最後の「あなたの倫理観を揺さぶる、サイコな純愛小説」で誤魔化しちゃっている。恋をした段階で純愛だとわかりますし、サイコは最初に示されている。つまり最後のまとめ方がただの煽り文句になっている。ここからもうひとひねりほしかった。次は30番。
30 『魔女狩り』。舞台は中世ヨーロッパの町の近くにあった修道院。恐怖、疑心と迷信にあやつられ、人は理性を失い、魔女狩りをはじめていた。闇につつまれたあの時代を背景にした、魔術を使っていた疑いで処刑された一人の女性の物語。 era_taranu
さらっと読むと、なんていうことのない内容ですが、今まで紹介した中では一番ひっかかる作品です。「魔女狩り」については、漠然とではありますが、みなさんある程度の知識を持っています。そのおどろおどろしい時代的雰囲気が提示された上で、「魔術を使っていた疑いで処刑された一人の女性の物語」と続く。きっと一人の女性が、世の中の矛盾や不正に悩みながら、魔女狩りというキーワードで処刑されるんでしょうね。つまりある女性の人生全体が見えてくる、スケールが大きい。これはひょっとしたら、一定の女性読者層にはうけるかもしれない。出版社の営業さんも、書店員さんに「魔女狩りモノでーす」と簡単に言える。これです。実録モノと銘打てればもっといいんですが(笑)。では次です。
山田隆道著『虎がにじんだ夕暮れ』
PHP研究所刊
平成二十四年(二〇一二年)十月刊
32 菜食主義を広めたのはヒトラー? ベジタリアンの恋人に捨てられた政治学者の網野は、見つけた資料に愕然。復讐のため、肉食こそ民主主義と証明しなければ。そして肉を食いつつ、痩せなければ…。前例のない政治ダイエット小説「脂肪は燃えているか?」 Rosei_Ono
この作品は短篇小説、豆篇小説としては馬鹿馬鹿しくて面白い。でも百三十字くらいで完結した一個のネタになってしまっているとも言えます。広がりがない。こういう大喜利っぽい面白さにリード小説は陥りがちなんです。55番もそうです。
55 砂かけババアの夫は、今日も老体にムチ打って公園の砂場に出かけた。妻が使う砂を仕入れるためだ。しかし、その日の砂場では少年たちが待ち構えており、「てめえが砂泥棒か!」と言って妨害してくる。愛する妻のため、それでも砂を仕入れたい夫は――。 tameiki_remon
この方は、砂かけババアには夫がいるはずだ、いてもいいんだというアイディアを思いついちゃったんでしょうね。砂かけババアがいるなら、砂集めジジイがいるはずだと(笑)。こういうアイディアは面白いと思います。ただ現実を考えると、編集者に「ハッハッハッ、面白いね。で、次のプロットは?」と言われてしまう。大喜利ではなく、物語が見えるのは62番です。
62 片田舎の村長選挙に与党公認の候補者が送り込まれてきた。五期連続無投票当選中の現職に動揺が走る。平均70歳の我が陣営にとって初めての選挙戦。資金力では勝てないと悟った現職は、ある作戦を企て秘書に命令する。「ブログとツイッター買ってこい!」 tameiki_remon
無風選挙に慣れた田舎の現職村長が、与党が送り込んできた対立候補の出現に大慌てするという設定です。現職村長の選挙を支えているのも、村長さんと同じくらいの年のおじいさんたちです。向こうは与党候補ですから豊富な資金力がある。現職陣営はそれに対し、地縁・血縁で戦おうとする。で、「ブログとツイッター買ってこい!」とトンチンカンなことを言ったりします(笑)。この作品がいいかどうかは別として、物語が見えます。企画になっている。最近、おじちゃん、おばあちゃんが頑張る小説はけっこう多いですから、新鮮味というところではちょっと厳しいかもしれませんけれども。次は67番。
67 見た目年齢25歳の五輪美は「時を止める=アンチエイジング」に全てを賭ける50歳。「AAA」 (アンチ・アンチエイジング・アソシエーション)のエージェント・素と、堰き止めた時間を巡って、壮絶なバトルの幕が切って落とされた。 Kuriyamakokoro
この作品の難点をまず言いますと、「五輪美」や「素」の読み方がわからない。企画を通す時に、読めない漢字があったりするのはマイナスです。企画段階では花子でも太郎でもいいわけです。本編を書くときに、好きな名前に変えればいい。で、内容ですが、アンチエージングをテーマにするのは現代的で、また社会批判的な内容も盛り込めますからいい切り口です。ただ「壮絶なバトルの幕」が弱い。これも煽り文句になってしまっていますので、最後のひと押しを意識した方がいい。戻りますが38番。
38 人気女性アイドルが幸せな妊娠・結婚会見を行い、世間は歓喜と祝福のムードに包まれた。しかし、その一方で所属事務所社長は倒産の危機に陥っており、債務整理や社員の再就職斡旋などに奔走する。幸せの裏側にある中年男の破滅ロード。「黒子の美学」 tameiki_remon
わかりやすいストーリーです。企画になっている。ただ「幸せの裏側にある」光と影は、小説の世界では一つのジャンルを形成していると言っていいです。書き始めたらかなり内容を工夫しないと、よくあるパターンにはまってしまう危険があります。94番。
94 先天性視覚障害の男が、奇跡的な手術を経て念願の視力を手に入れた。しかし、それによって男の生活は不自由になった。今まで盲目ながら見えていたものが、見えるようになったことで見えなくなった。男は苦悩の挙句、再び視力を失うことを決意する。 tameiki_remon
テーマ性も高いし、健常と障害というステレオタイプな概念を打ち壊すようなところにも切り込めそうです。ただこの作品も広がりがない。短篇だろうなぁという感じがします。次は134番ですが、これは雰囲気的にはいい作品です。
134 「不幸と呼ぶには大げさだ。ただ、つまらない、悲しいことが、おれの人生には常について回る」……あの人から届いた最初で最後の手紙を読んだわたしは、この10年を振り返る。楽しかった時間は短く、あとは一方的に、わたしはあの人を、憎んでいた。 Nao0000Okamura
百三十字くらいでパッと読める、ちょっとポエム調の雰囲気のある作品です。上手に書けているしリズムもいい。でもこれが、短い小説のよく陥りがちな書き方でもあるんです。ツイッター小説というジャンルがすでに成立していますが、そういった作品で一番多い書き方です。ひとつのパッケージ豆篇小説としてはいいですが、小説は基本、もっと長いものです。これを拡げてゆくのは難しいという意味で、実践的なプロットではない。企画になっていない。あ、169番も豆篇小説としては面白いです。
169 どういうわけか、僕は女が転ぶ場面によく遭遇する。不謹慎ながら僕はそんな場面を見るのがけっこう好きである。転び様にちらっと素の人間性が漏れ出る気がするからだ。リナという女がいた。美しかったがよく転ぶ女だった。『転倒女子十二景』 sasaharatetsuji
いいところに目をつけてるな、くすぐってくるなぁとは思います。面白いんですが、これから書く、書き続けるための小説の企画にはなっていない。こういった面白いけど企画になっていない作品が、今回応募していただいた作品の七割、八割を占めてしまっていると思います。まあそれは、わたしが今回の企画を「リード小説」と名付けてしまったからかもしれません。だけど「小説」に注目しないで、「リード」というところに注目していただきたかった。これから書く小説の「リード」、あるいはそれをリードする小説企画という意図ですから。
これもわたしの経験ですが、編集者は会って企画を読んでくれさえすれば、けっこう優しいんです。一番の難敵は営業さんですね。わたしは書店で自著のサイン会をやった時に、スタッフとして来てくださった出版社の営業さんと会って、「どんな作品なんですか?」と聞かれたことがあります。そういうことはよくあります。それが現実だと思って突破してゆかなければなりません。
で、わたし一人の意見だけで進めてゆくのもつまらないので、ここでゲストをお呼びしたいと思います。第一回金魚屋新人賞 辻原登奨励小説賞を受賞された小松剛生さんです。
小松 小松です。よろしくお願いします。今日は僕自身が勉強になっていることばかりです。全部の作品を読ませていただいたのですが、正直、皆さん素晴らしいなと思いました。僕はかなわないなぁと思って、ちょっと凹むところがありました。みなさん、ほんとに素晴らしい作品をお寄せくださったと思いますが、僕が個人的にいいなと思ったのは136番です。
136 23時のコンビニで今日も彼女に会った。木曜日はいつもインスタントの袋ラーメンとさけるチーズと缶ビールを買うことまで覚えてしまった。よし今日こそ。腹を決めて僕は彼女に話しかける。きょとんとした顔の彼女を前に、僕は言葉を探し続ける。 isotta_1887
僕は文芸作品で、「さけるチーズ」という単語を初めて読んだような気がします。作者さんはなにげなく書いた言葉かもしれませんが、これは実は深い言葉なのかもしれないと思いました。世界中のチーズって、そもそも裂けるんじゃないかと考えこんでしまったんですね。裂けないチーズってあるのかなって(笑)。そこから僕の中で、いろんな考えが広がっていったんです。このおもしろさを僕はなかなか正確に言葉にできないんですが、わからないけど惹かれます。もう一つ好きな作品を取り上げますね。120番です。
120 プロ野球の大打者に不正薬物の使用が発覚し、過去の打撃記録がすべて無効となった。すると、彼に打たれたことのある投手たちが次々に不満を爆発。「あいつの記録が無効になるなら、俺の防御率も変わってくるぞ!」かくして記録部員たちの苦闘が始まった。 tameiki_remon
スポーツマンの不正薬物使用に着目した物語ですが、これに近い出来事が、実際にヨーロッパのスポーツで起こりました。ご存じの方も多いと思われますが、ツール・ド・フランスという自転車競技です。ツール・ド・フランスはオリンピックと同じくらいお金が集まる競技と言われてたりします。またオリンピックは四年に一回ですが、ツール・ド・フランスは年一回ですから、ヨーロッパでは大人気のスポーツなんです。そのツール・ド・フランスを七回も優勝したランス・アームストロングというスター選手が、ドーピングで、ほぼ全記録を取り消されてしまった。この作品はプロ野球が舞台ですが、現実世界とリンクしているところが僕はとても面白かった。あ、今年も七月からツール・ド・フランスが開催されますのでみなさんよろしく。
山田 なんの話や(笑)。小松さん、ありがとうございました。さあ、時間がないので、最後のまとめに入ります。ほんとうはわたしは一つ一つの作品を、メチャクチャチェックしているんですが、もし取り上げることができない場合は、この後の懇親会で声をかけていただいて、お時間が許す限り投稿していただいたみなさんとゆっくりお話したいと思います。で、わたしが今回読んだ中で、エンタメ編集部にも営業さんにも、これが一番アピールするだろうなという作品を最後に取り上げます。184番です。
184 時のテープは使い尽くされ、22世紀が来ると突然リターンし始めた!跳ね返る時間の中で、二重になった現実を描く。国際化の進んだ各都市は”古き良き時代”の復活に喜んだ。〈以降の人々〉は過去の日々の中で、未来の子供達を育ててゆく。過去未来小説! Mamrmtmew
タイムマシンモノ、タイムスリップモノは山ほどありますが、時間逆戻しモノは今まであまりなかった。またこの作品では、過去の時間を切り取っていけば、いくらでも小説を量産できそうです。そういう意味でスケール感もあります。そして実際に起こった世界中のあらゆる史実を、時間を逆戻しすることで作品の中に絡めてゆくことができる。また簡単に「時間逆戻しモノです」と言えるから、営業さんにもアピールする作品です。素晴らしいと思います。
現状では百三十字くらいの作品ですが、これをもっと長い小説にしていっていただければと思います。現実的な商業小説になり得るプロットであり企画です。ですからこの作品を、今回のリード小説大賞としたいと思います。まだまだ取り上げたい作品がありますが、時間がなくなりました。後は懇親会でお話しましょう。ありがとうございました。
(2016/06/18)
■リード小説全投稿作品■
(全228篇、掲載は順不同/通しナンバー 本文 投稿アカウント)
1 その日、世界からSが消えた。世界 (sekai)はえ界 (ekai)に、Artistは「Artit」に。ジョン・レノン (John Lennon)はそのまま。変わり果てた「え界」を世界に戻すべく、1人の少年が立ち上がる。認知言語学ミステリー! gouki0117
2 「オレは東京生まれHIP HOP育ち♪」 あの伝説のパンチラインが生まれて30年が経過した近未来が舞台。もはや日本語ラップは完全に音楽シーンに定着した。その「本当」の創始者が今、紐解かれる! 日本市場初の日本語ラップ歴史小説! gouki0117
3 皇居から数キロ離れた女子学園。密かに行われる授業は預言者育成のためだ。ここで学ぶサナコは「わかる者」としての孤独に耐えながら東京を救おうとする。「政府」が消え、「しごと」が壊れゆく世界で彼女が見たものは? orions3434
4 女子大生ヤヨイが内定をもらったのは奇妙な古道具屋穴熊だった。ある日博物館で宝物が次々消える事件が発生!荒された痕跡はない。「信仰を失った神は鬼になる…」穴熊は意味深な笑みを浮かべた。ヤヨイと穴熊が難事件に立ち向かう空前絶後の感動物語! pen_ema
5 私のこの瞳は、或る大罪を乗せ荒野を往く気球だ…。先生の家に下宿する医学生風見瞳太。彼の潔白なる魂は、六年目の春に帰ってきた先生の病弱な娘 真沙子によって鮮烈な罪の色に染められていく…。倒錯する激情と静謐な情景。彼らの犯した「罪」とは… PngnPicopico81
6 「お嬢さん、俺のコクピット空いてますよ!」遺跡の奥に安置されていた巨大ロボは、現れた少女にそう言った。これは元人間の巨大ロボが、万年最下位のへなちょこパイロットと共にロボットバトルの頂点を目指すバトルアクションである! Hisanapopie
7 美貌を維持するため、たびたび顔を整形する某女性シンガー。その裏には、彼女の顔マネをすべく自分まで後追い整形を繰り返すソックリタレントの苦悩があった! 整形が整形を呼び、あげく顔マネ芸が医者の産物になっていく。不毛な追いかけっこの行方は? Yamadatakamichi
8 想ひ想ひて恋焦がれ、想ひはやがて鬼と成る。君が心に宿らんと、まつは常葉と言ひぬれど、きくは真白き便りのみ、泣き泣き濡れて蛇 (じゃ)となれば、なんか鷹にさらわれて……!?能「道成寺」、コメディ版! Senzaiou
9 刑務所に入った、人型アンドロイドと、会社員の男。二人は相部屋。作られた心と頭脳で、何故犯罪を犯したのか悩む彼と、彼を馬鹿にしながら人生をあきらめた生身の人間の交錯する想いの丈。過ぎ行く時の中で、二人が見つける答えは? Airen_Sea
10 地球とは異なる進化を遂げた並行世界ロウアース。22世紀の人類はそこへの接触に成功し、定期的に調査員を派遣していた。その一人、ロレンツは文化調査の担当員。これは彼の異世界フィールドワーク記録集である。 Hisanapopie
11 「うみ様の愛犬になってください」。臨床心理士の俺は依頼人の屋敷に着くなりそう告げられ茫然とする。「うみ様」は不登校の中学生、しかし治療すべきは彼ではないことに、俺はすぐ気付いた――。家族の闇と光、そして深く愛するがゆえの過ち。 Senzaiou
12 ”勇者”の青年に恋をした魔族の女の子。彼を振り向かせる為に乙女は自分が魔王になろうと決意する! 魔王の座を賭けた熾烈な闘い。でも好きな人の為ならガンバれる!
おっちょこちょいなヒロインの一途で健気な覇王街道 (はなよめしゅぎょう)、開幕! YUHO_H
13 雪の日に訪れる者は化生と思え──。そして彼は来た。父の通夜の日に。大雪の日に。死者は踊り、生者は騙る。一歩も引かぬ化かし合いに、鬼も喰われる。輪廻も歪む。孕みに孕んだ業の一族の、崩壊と大笑い。ご喝采。 planet_doll
14 強い向かい風のあとは、後ろを振り向いちゃいけない。背にかけられた声が幼いものだったなら、絶対に。さもないと……
「おねーぇさん」
そんなことなど露知らぬOL・チカコは、振り向いてしまったがために黒い化猫と暮らすことになった。
『宿借猫』 tou_yae
15 彼女は金魚だ。言葉という名の泡をぷくぷくと水面に放っては微笑み、時折スカートの裾をひらひらさせては物語を編む。水底に縛られ揺らめくだけの僕には眩しすぎるけれど、この小さな《鉢の中 (セカイ)》では僕だけのお姫さまだった。
『文学金魚』 tou_yae
16 職を失い貯蓄も底が見えた頃、男の手にはビー玉大の種に化けてしまった夕飯がコロリと一つ。やけに陽気な売り口上と湧き出た興味に負けて買った怪しげなそれは、鍋で育てる《セカイの種》だという。
『創造主の始め方』 tou_yae
17 皇居から数キロ離れた女子学園。密かに行われる授業は預言者育成のためだ。ここで学ぶサナコは「わかる者」としての孤独に耐えながら東京を救おうとする。「政府」が消え、「しごと」が壊れゆく世界で彼女が見たものは? orions3434
18 僕はその日、大船駅で降りる事が出来なかった。
大船駅で降りなければ家に帰れない。
でもいいや、帰らなくて。
そのまま、ずうっと電車に乗っていたら、終点の沼津に着いた。『静岡に死にに行く。』 zeonP08
19 学の師であった男を何故彼は打たねばならなかったか。右傾化する社会と何物にもなれない自分、死を懇願する”先生”。それぞれの正義の果てに、青年は”時代殺し”を決意する。「ニッポン・エイジ」 silent20eve45
20 それは「タイムマシン」と呼ばれていた。睡眠中に脳の記憶中枢を刺激し、あたかもタイムスリップしたかのように過去の記憶内容を 夢の中で再体験出来る装置。その「タイムマシン」の実験に参加した男は、一体己の過去の何を見たのか。『タイムトラベル』 sasaharatetsuji
21 幼い日絵本の中から忽然と姿を消したテディベア。異国のアンティークショップにて古写真の少女の膝に乗っいるのはその熊アルフレッドに相違ない。スノードームに閉じ込められたかのような雪が降りつづけるなか、アルフレッドを探す不思議な旅が始まる。 Yumicomachi
22 特技は猫の解体、趣味は解体した猫の写真を撮って、トリミングして本の栞にすること。そんな男性が、ある日女性に本当の恋をしてしまう。異常者は幸せになってはいけないのか?あなたの倫理観を揺さぶる、サイコな純愛小説、「猫が見つからなくて」 ample_acer
23 消えていくのは記憶か、それとも存在か…ー 毎年数㎝だけ沈んでいくこの町は病に蝕まれていた。〈シャッタードシンドローム〉記憶が失われていくこの病気の原因を探る高校生 マドは、人の消えた寂れたシャッター通りを歩く。忘れられた真実を探すために。 PngnPicopico81
24 「僕らは止まり木でこそ羽を休めちゃいけないんだ」。二十五歳で女だてらに日本刀研磨の世界に飛び込んだ世安。笑みを絶やさない師匠、優しい姉弟子、超絶美男子の兄弟子に囲まれて抱腹絶倒の……もとい厳しい修行の日々が始まる! Senzaiou
25 決して触れず、ただ傍観することこそが罪悪なのです…獣の魔性を秘めた少女 真沙子と誠実なる医学生 瞳太。この2人の出会いが全ての始まり、そして終わりだった。数々の運命が交錯し線となって鮮烈な罪の絵画を描く。静謐な破滅と激情が、ここにある。 PngnPicopico81
26 いつも一緒の幼なじみ、文学少女のフウとリケジョのミヤ。休みを利用しては旅に出る日々。今度は古都への旅。お寺や神社を巡ったり、小料理やラーメンを食べたり、絶景に感動したり、ショッピングしたり。二人の珍道中はいかに。 mille1_c
27 笠木恒平、17歳。体操の有望選手だった彼は、ある日首を吊って死んだ。彼に憧れていた体操部の友人、彼の子供を宿した幼なじみ、彼を嫌っていた姉の三人は、それぞれ恒平の自殺に翻弄される。やがて交差する視点。恒平が彼らに遺した物とは。 aKiO__saltlook
28 「くだらないねえ、自殺なんて。遅かれ早かれ人は死ぬっていうのにさ」。父を自殺で亡くし、生きる気力を失った青年の前に、突然しゃべる猫が現れた。のんきな三毛猫、トキは父の死の秘密を知っているようで……。 Senzaiou
29 【修正版】
「くだらないねえ、自殺なんて。遅かれ早かれ人は死ぬっていうのにさ」。父を自殺で亡くし、生きる気力を失った青年の前に、突然しゃべる猫が現れた。猫はその不思議な能力とともに、父の死の秘密を知っているようで……。 Senzaiou
30 『魔女狩り』。舞台は中世ヨーロッパの町の近くにあった修道院。恐怖、疑心と迷信にあやつられ、人は理性を失い、魔女狩りをはじめていた。闇につつまれたあの時代を背景にした、魔術を使っていた疑いで処刑された一人の女性の物語。 era_taranu
31 正義は我らにこそあり。諜略、謀殺、それの何が悪か――。戦乱の世にあってひときわ眩く輝いた謀将宇喜多直家の軌跡を、小姓・岡清三郎 (剛介)の視点から描く。 Senzaiou
32 菜食主義を広めたのはヒトラー? ベジタリアンの恋人に捨てられた政治学者の網野は、見つけた資料に愕然。復讐のため、肉食こそ民主主義と証明しなければ。そして肉を食いつつ、痩せなければ…。前例のない政治ダイエット小説「脂肪は燃えているか?」 Rosei_Ono
33 優雅な動きを見せる馬術の馬たち。人に乗られ、人の思いのままに動く馬はいったい何を思っているのだろう? 高校馬術部の人馬に、熱い火花が散る! Senzaiou
34 「退魔鑑ナルカミ」科学全盛な平成の時代。けれど少し暮らしの裏側を覗いてみれば、そこには妖怪たちが住んでいる。とはいえ妖怪と言っても色んな輩がいるもので、人を拒む妖怪だっている。これはそんな妖怪と戦う少女たちの物語。 Hisanapopie
35 「失われた処女の行方」 初恋の人にあげたかった処女は、違う人のものになった。しかし特定の人に向けられた処女はまだどこかで生きている…!エルは街中に貼り紙をし、処女探しを始める。ある男は、処女を袋に詰めて運ぶ民族衣装の女を見たという。 Mamrmtmew
36 誰かが強くあれと言う。誰もが正しくあれと言う。皆、その歩く速度はそれぞれであるはずなのに……。なぜ……誰か……どうして……誰か……どうすれば……誰か……お願い……誰か……誰かだれかダレカ誰かだれかダレカ誰かだれかダレカ──── kamata_yu
37 「UNTITLEdS」
同じ内容 (街に緑色の雪が積もる+個性の献金を募るホームレス)を書いた7つの章から構成。点描 (点=1単語)、未来派 (動きを詳細に)、キアロスクーロ (明暗)他、全く別の手法で描かれた7つの習作”Untitled”S mamrmtmew
38 人気女性アイドルが幸せな妊娠・結婚会見を行い、世間は歓喜と祝福のムードに包まれた。しかし、その一方で所属事務所社長は倒産の危機に陥っており、債務整理や社員の再就職斡旋などに奔走する。幸せの裏側にある中年男の破滅ロード。「黒子の美学」 tameiki_remon
39 「スターバックスの人々」
ジム・ジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』にオマージュ。世界の5つのスターバックスとスターバックスの人々。彼らの会話を盗み聞き、議論やぼやきや口説きを再現。国分寺駅前のスタバに天海祐希が来店、相手は…? mamrmtmew
40 「コラージュの国」実在する3つの国を掛け合わせ、専用の混合機によって風景や街並み、人間などがランダムに配置され直し、コラージュされた国を旅するアルツールとアンヘラ。予測不可能で突飛なイメージの連続を潜り抜けていった先にあるものは…? mamrmtmew
41 僕の名前は虎舞竜。これで「ロード」と読む。今まで名前のせいで嫌な思いをしてきたから、中学進学を機に改名したいけど、母は反対している。十年前にバイク事故で死んだ父がつけた名前を残したいからだ。ふん、いいよ。だったら一人で改名してやる。 tameiki_remon
42 絶対死んではいけない、これが君への呪いだ。そう言い笑顔で飛び降りた恋人である貴方。私はもう誰も愛せず、死ぬことも出来ず、死への疑問だけが残った。そんなある日、死ぬ前に行った店の領収証に”呪屋”という店名と契約完了のサインを見つけた。 Ekureanosekai
43 感情発電。それは人間の快感情を発電に利用する新たなエネルギー。白石ヤヒロは発電作業員として、RPG風世界”いしずえワールド”に移住した。順当に発電値を稼いでいたヤヒロだが、あるきっかけに世界の矛盾に気づいてしまい──「感情発電いしずえ」 yakizaka_nan
44 「粒粒」
掌編ならぬ粒編を集めた粒編集!
珠玉の101粒 mamrmtmew
45 「世界旅行」
旅する前に、個人の頭の中で勝手に想像される国々。知識の有無や願望、思いこみが生生しく反映された国。行ったことのない国へ行ったことのないまま足を踏み入れる!異常に定型なイギリス、フランス。想像できず白い台地が続くウクライナ! Mamrmtmew
46 変形
理沙子は老人の夢の中で息をする。若い頃の彼と出会い恋に落ちるが男は姿を消し当然メールにも返信はない。喪失の中、男を想起させる物・人を記録、恋した男のイメージの変形を追う。重要なイメージを捌く行商人。男は今度は老人の姿のままで現れ mamrmtmew
47 あなたが。少しだけ力を入れて、つけた傷が、今でも痛い。傷は消え、血は流れていなくても、いつまでも痛い。何を伝えたかったのか、わからないままで、痛みだけが残った。わたしも。あなたに傷をつけただろうか。今でも痛みを感じているだろうか。 kamata_yu
48 ある日、1年後から来た俺だと名乗る俺そっくりの男が、焦ったような顔で俺に言った。「この1年間おまえは絶対に何もするなよ、わかったな!」そこで男は消えた。・・・なんだよ、これ。超気になるじゃん。この1年間、俺に何かが起きるということか? tameiki_remon
49 ある夏の日、遊びに来ていた叔母が僕の目の前で急に倒れた。僕は近くに住む友人に電話を借りようと、彼の家まで叔母を引っ張っていく。僕の頼みをを了承した友人は「その前に」と付け足した。「少し君のおばさんの話を聞いていいかな?」 ryu_shi_so
50 「泣けるやつも笑えるやつも飽きてきたから、次は推理ミステリーみたいなやつよろしく!」肩にセーターをかけた劇場の支配人にそう言われたので、シェイクスピアは頭を抱えた。参ったなあ、トリックとか苦手なんだよなー。天才劇作家の知られざる苦悩。 tameiki_remon
51 学生向けの下宿で暮らす雑種猫の次郎さん。高級猫缶と、高邁な思想に耽る時間が大好き。恋愛に振り回される学生たちや他の猫を「慎みがない」と苦々しく思って見ていたが、ある日名家の飼猫と出会ってから、彼女が気になって仕方ない。まさかこれは恋? Nao0000Okamura
52 失業した俺が、ハローワークの外にいた男に誘われた仕事。高収入、福利厚生も充実。だが業務内容がとんでもなかった。「変身して、同僚たちと『敵』から地球を守れ」というのだ! それでも妻子のために「戦隊」として戦うことを決意した俺だが……。 Nao0000Okamura
53 キレイね、と君がつぶやく。桜の花を見上げたまま、独り言みたいに。微笑んで首を傾げる、いつもの君の癖。細めた目が、綺麗な三日月になって、黒く長い髪が、左の肩をさらりと撫でた。君はまた花を見上げる。僕もその視線を追った──うん、キレイだね。 kamata_yu
54 阪神の優勝マジックが減るたびに、道頓堀川で水死体が発見された。当初は阪神ファンのバカ騒ぎが招いた事故だと考えられていたが、五人目の水死体から警察の見方が変わる。これは事故ではない、虎党の熱狂に隠れた連続殺人事件だ。犯人は戎橋の上にいる! tameiki_remon
55 砂かけババアの夫は、今日も老体にムチ打って公園の砂場に出かけた。妻が使う砂を仕入れるためだ。しかし、その日の砂場では少年たちが待ち構えており、「てめえが砂泥棒か!」と言って妨害してくる。愛する妻のため、それでも砂を仕入れたい夫は――。 tameiki_remon
56 あなたさえいなければ、あなたにこそ愛されたくて。自由闊達に戦国の乱世を渡りながらも得られぬ母の愛に苦悩する奥州の雄、伊達政宗を、近習片倉景綱の視点から描く。 Senzaiou
57 精子・卵子の冷凍保存技術とセックスのバーチャル化が発達し、人が生身で交わる事が無くなった近未来。「僕」が偶然出逢った女性は “人類最後の娼婦” だった。『ハダカのクラウン』 YUHO_H
58 ―あなたの復讐、引き受けます。―
欲望の中心地‐東京にひっそりと息づく都市伝説。なんでも自分の復讐を代行してくれる人達がこの東京の何処かにいるらしい……
現代社会の片隅で暗躍する四人の男女。彼らは悪魔か? 救済者か? 『リベンジャーズ』 YUHO_H
59 女神に召喚されてたどり着いた世界は剣と魔法の世界。だがその世界はすでに勇者によって攻略 (クリア)されていた…⁈すべてが終わった世界で俺は何をするべきなのか。この世界に呼ばれた理由を求めて攻略本に載るはずがない冒険が今始まる! SAZZY_KTY
60 砂糖、塩、コショウを少々、酒と醤油、そして味噌。俺はこれで世界から争いを無くす SAZZY_KTY
61 先生が死んだ。たった一人で死んだ。弔問に訪れたのはカッパばかりだった。もしかしたら先生はカッパだったのかもしれなかった。でも偏屈な画家の先生との穏やかな日々は、確かに僕の中に生きていて。 Senzaiou
62 片田舎の村長選挙に与党公認の候補者が送り込まれてきた。五期連続無投票当選中の現職に動揺が走る。平均70歳の我が陣営にとって初めての選挙戦。資金力では勝てないと悟った現職は、ある作戦を企て秘書に命令する。「ブログとツイッター買ってこい!」 tameiki_remon
63 ああ、なんで彼氏はパイロットだなんて言っちゃったんだろう。本当は彼氏すらいないのに。佑子は友達に嘘がばれることを恐れ、架空の彼氏の設定を詳細に練り上げていた。すると、いつしか本気で恋心が芽生え――。叶うはずのない「架空の片想い」の行方は? tameiki_remon
64 朝子に振られた。徹頭徹尾、完膚なきまでに。その十年後、朝子から連絡が来た。喜び勇んでのこのこと朝子の元に向かう僕。好機到来だった。今度はこっちが振る番だ! 密かにそんなみみっちい復讐劇も企てていたのだが……。『愛しのズルい女 朝子』 sasaharatetsuji
65 望むものほど、遠ざかる。そのことに、まだ気づいていない彼方に別れを告げるのは簡単なことかもしれない。でも、行動に移せない私は、ただ星が瞬くのを一つ二つと、今日も数えている方が気楽なのだ。欠けたことに気づこうとしない月は眠る。「宇宙の彼方」 YearMoon
66 「挫折した魔法使いのSF (少し不思議)な日常」
とある理由から魔法学校をやめたあたしは普通の高校に転校する。けどそこには実家の刺客が紛れていて、あらゆる手であたしを復帰させようと……って、学校で魔獣の卵孵すな!こんな日常やめてほしいわ! Hisanapopie
67 見た目年齢25歳の五輪美は「時を止める=アンチエイジング」に全てを賭ける50歳。「AAA」 (アンチ・アンチエイジング・アソシエーション)のエージェント・素と、堰き止めた時間を巡って、壮絶なバトルの幕が切って落とされた。 Kuriyamakokoro
68 2016年10月、Twitterでアリスを演じるわたしのアカウントに届いた殺害予告。『アリス乱用者に死を! 白い皮手袋の会』いたずらだと思ってたのに、最初の犠牲者が出た。「メアリ・アン」を名乗る犯行声明動画にはお姉ちゃんが映っていた。 ALICEs_wndrland
69 昔々ある男が初めてウニを食べてみたところ、口の中が血まみれになった。「やっぱりダメか・・・」男はあきらめてウニを投げ捨てる。すると、近くの岩に当たったウニが真っ二つに割れ、中からオレンジ色の軟体物が顔を出した。食の起源を妄想する超短編! tameiki_remon
70 接待ゴルフの雲行きが怪しくなってきた。取引先の部長が下手すぎて、このままだと俺が勝ってしまう。俺はなんとしてでも負けるべく、後半はスコアを落とす作戦に出たのだが、手を抜けば抜くほどなぜか好ショットを連発して――。果たして敗北の行方は? tameiki_remon
71 もしもオレが女なら、あいつと上手く行ったはずなのに!
初恋のあいつ (幼馴染み♂)を眺めながらいっとう身悶えする男子高校生「オレ」。ある朝目覚めると体が女子に変わっていて…!?変化した日常、行方不明のあいつ…オレの恋路の行方は何処へ! PngnPicopico81
72 昔から夢見た教師になった大歩危響は、赴任先の学校で『教育執行人』に任命するという手紙を受け取った。それは、教育に害成すものを裏で粛清する政府直轄の秘密機関だったのだ。子供大人容赦無しの粛清、本来の教育を取り戻すための戦いが始まる……! kuzuha_miduki
73 『続・心』by 鶴山裕司
先生の家に駆けつけると、先生は膝の上にネコを乗せ縁側で日向ぼっこしていた。「自殺したんぢゃ・・・」「君、お父さん危篤ぢゃなかったっけ。手紙に書いたよね、人を信じちゃダメよ」。先生との心の交流第二章が始まった…。 Bungakukingyo
74 『続続・心』by 鶴山裕司
「小林君『心』は読んだかね」「朝日で話題の実話美談ですね」「臭わないかね?」「と言いますと明智先生」「後半の先生の遺書、実は〝私〟が書いたんぢゃ」「まさか偽装殺人!」。世に名高い『心』殺人事件が始まった…。 Bungakukingyo
75 自ら命を絶とうとした中年女性が自殺を止めた謎の老人に与えられた仕事は「聞き屋」。様々な人たちの人生を聞いていくうちに彼女は自らを見つめ直していく。魂の再生の物語。 Littlekubo
76 わがまま放題のお嬢様が泥酔して凍死。あの世でもわがまま放題の彼女を神様は下界で再修行させることに。一度も働いたことがない彼女が放り込まれたはじめての仕事場はある地方都市のホテル。そこには一癖も二癖もある人たちが集まっていて・・・ littlekubo
77 「もう、これで終わりだから」卒業を機に告白をした先生へ。私、この先も独りで生きていきます。だから、今だけ。お願いします。 9clematis1
78 バンドのボーカリストの告別式で追っかけ仲間だった現在は落ち目の女優の真由、お局扱いされているOLのなつき、閉塞感を抱えた専業主婦の奏子が再会。友情を取り戻したかに見えたが、ある週刊誌の記事をきっかけに3人の関係が壊れていく・・・ littlekubo
79 題名『締切厳守』目立ちたがり屋の中堅小説家・越智主一はタレント活動に忙しく締切を守れない。テレビ番組で締切から逃げる方法を話したことで息子・幸一が小学校でいじめに遭い不登校に。息子のために締切を守ろうとするが、次々と誘惑や災難が・・・ littlekubo
80 「大丈夫。すぐに戻るから」
そう言って出て行ったあの人が、戻ってくることはなかった。満開の桜の下でその右手に短刀を握りしめて倒れるあの人は、殺されたのだ。
移り行く時代に、殺されたのだ。 Icyicecrown
81 アリスはお姉さんに不思議の国の冒険を話して聞かせようとしましたが、全然覚えていません。「お姉ちゃん待ってて! 思い出してくるから!」と言ってアリスはまた眠り、不思議の国に再突入!すると、出番を終えた白ウサギたちは打ち上げの真最中で…! ALICEs_wndrland
82 「彼」に関わった人間は次第に狂ってゆき破滅する。「彼」を尊敬していたある青年も狂った末に自死を試みたが、命を取り留め「彼」から離れた。月日が経ち、青年は作家になった。「彼」の訃報を聞いた作家は「彼」の秘密と悪行を小説に書こうと決めたが…。 Nao0000Okamura
83 近衛兵シーアを門番へ降格す。
理由、足下の影を失ったため。
良家の許嫁から別れを告げられ不遇の日々を送る彼女は、隣国の技術研修員・叉牙雉の護衛を指名で言い付かる。この男、どうも影の行方を知っているようで──『影無女と星落とす魔導士』 yakizaka_nan
84 ある日、空が割れた。世界各地で割れた空からは巨大な”眼”が覗いていた。程無くして、地上から人が消失する事件が断続的に起こりはじめた。次第に人々は”眼”が地上の人間を見張る”監視者”であり、悪人を見つけるたびに消していると考えはじめる。 YUHO_H
85 ある劇団が推理劇を上演中、本物の殺人事件が起こってしまった…という舞台〈マトリョーシカ殺人事件〉を観にきた久那葉と渚。しかし劇中とよく似た状況で本当に人が殺されてしまう。
幾重の虚構と事実の狭間に隠された真実を二人は見抜けるか!? YUHO_H
86 「生きている水饅頭の餡はね、脳味噌なんです。皆が知ってるソレは、水饅頭の死骸ですよ。」―前作『生駒の森』の13年前が舞台。あの日、少年・瀧澤が目にした”人形の骨”を巡るもう一つの物語。 kiyohal_
87 今朝、バス事故で死んだ琴子の、一人暮らしの部屋に合鍵で入った。そこには、パジャマ姿の琴子が窓から遠くを見ていた。薄暗い部屋の中で、“残された琴子”が伝えたかった言葉に耳を傾ける。 midorimaru033
88 国境の村。隣国は独裁国家。ある日、村に住む兄妹は隣国へと続く「穴」を見つける。毎日乾パンを穴に投げ入れる兄妹。一週間後、「向こう側」からお礼の手紙が届く。そして十年後。兄妹の元に向こう側から少年が訪ねてきた。少年の口から語られる真実とは。 psychopaths75
89 「小説家ってのは身を削りながら物を書くのです。だから十年もやっているとこんな身体になってしまうんです」そう言って服を脱いだ彼の上半身を見ると、なるほど全く言うとおりでテニスボール大の穴が幾つもその身体に空いていたのだった「切り売り小説家」 tukasatusa
90 僕はすっかり酔っぱらって電車を待っていた。すると見慣れない古びた外観の電車が到着。車体の「モハ451」という文字が目に入る。それはもうとっくに引退し、走っていない筈の車両だった。その電車に乗り込んだ僕の身に起きた事とは。『臨時急行』 sasaharatetsuji
91 題名『古希料理道』大学准教授の百合子は家事を任せていた娘の嘉恵が結婚で家を出ていったのを契機に料理教室に通いはじめるが、とんでもない料理を作り続ける。夫の嘉男は必死で阻止しようとするが、百合子の心には届かない。 Littlekubo
92 助役・牛島丈夫は今日で定年。泊まり勤務で組むのは、大柄だが小心者の小杉と真面目だが少し頭が弱い東出。小杉の妻の圭子に手料理を差し入れされたりと皆に労われ無事に鉄道員生活を終えるはずだったが、謎の男に手渡された荷物が原因で駅に緊張が走る。 Littlekubo
93 会社員の平田はデモによる混雑で遅刻し、商談が破談になる。数日後、デモの隊列を見た平田は怒りや悔しさが込み上げ隊列に投石。参加者の男に追い回される。スポーツマンの平田も疲弊し判断力を失う。翌日デモで反対と叫ぶ平田の姿があった。 Littlekubo
94 先天性視覚障害の男が、奇跡的な手術を経て念願の視力を手に入れた。しかし、それによって男の生活は不自由になった。今まで盲目ながら見えていたものが、見えるようになったことで見えなくなった。男は苦悩の挙句、再び視力を失うことを決意する。 tameiki_remon
95 政子ちゃんはとにかく女子力が高い。女から見たら嫉妬深いし図々しいし、自分アピールがうまいだけなんだけど、男はああいう女に騙されるのよね。あーあ、源家の男子ってバカばっかりでやんなっちゃう。そのうち北条家に幕府のっとられんじゃね? tameiki_remon
96 「守備側が9人いて、攻撃側の1人に鉛のような球を全力で投げるんです」米国人がいくら説明しても、侍文化が根強く残る日本人にはなかなか伝わらない。「9対1では卑怯だ!」「守備側が鉛球を投げるなら、それは攻撃ではないか!」明治時代の野球物語。 tameiki_remon
97 憧れの田舎暮らしを実現させた、市川利夫・むつみ夫婦。集落の風習を知らないことが原因でトラブルをくり返す。ある日、利夫が逮捕される。無実を信じるむつみは集落で孤立していく。途方に暮れるむつみの前に、元住人の成瀬咲子の幽霊が現れる・・・ littlekubo
98 桜を見に行ってくる。そんな言葉を残し消えた母が七年ぶりに帰郷した
料理対決を控えた私は彼女が紹介したケチュア族の少女と共にチチカカ湖上空で周回軌道に乗る
スコープ越しの大統領が論ずる霊長類の未来とは
次回作――『破綻の際際』お楽しみに tumitovatu
99 花の咲く季節に、またお会いいたしましょう――。儚げな微笑と共にそう告げて、桜色の振袖を纏った少年は去っていった。人ならぬものと悟っていた。それでも徳川綱吉は思慕を募らせていき、春を待ちわびたその身はいつしか狂気に包まれていく。 Senzaiou
100 日米交流のため日本プロ野球界に派遣されてきた米国人審判が、ある試合で重大な誤審を犯した。しかし、男はミスを認めず、それどころか「誤審という概念は存在しない」と主張。当然、日本中から大批判を浴び、いつしか日米の概念バトルに発展していく――。 tameiki_remon
101 パート先をリストラされ不妊治療も諦め夫は単身赴任中で暇をもて余すあおいは、小説の書き方教室に通いはじめる。ある日、あおいの発表前の作品を模倣したような出来事が起こる。不安げなあおいを放ってはおけないと個性派揃いの教室の皆が立ち上がる。 Littlekubo
102 ダイス〈確率〉の力が世界を回す!?万年金欠大学生が安楽椅子探偵の「骨〈ドクロ〉」から渡されたのは一つの世にも不思議なサイコロで…?言葉あるところに事件アリ!事件あるところに確率アリ!痛快ダイスアクションミステリー『saiful』 PngnPicopico81
103 人の欲望を具現化した化け物ディザイア。それに対抗するものこそが魔法少女。主人公の西園寺あかねは魔力が全然無いが、ひょんなことから魔法少女としての契約を結んでしまい、今ここに最弱の魔法少女が誕生した!最初は読みにくいことで有名な小説! hagenn51
104 僕は犬。大きくて白い犬。君が小さな頃からずっと側で見守ってきた、ぼろぼろのぬいぐるみの犬。夢を叶えて子供のお医者さんになった君、でも君はとても悲しそうで。「僕とダンスを」 senzaiou
105 新書部門に配属された新人編集者の杉下は、先輩の与那嶺と大学教授の関根の家に行く。関根は与那嶺の書き直しの助言を拒否して10年。定年まで1年を切った与那嶺はどうしても出版にこぎ着けたい。杉下と関根の娘の奈緒は一計を案じる。 Littlekubo
106 吸血する羽虫の微震動、耳元で合成される音楽或いは人語、頭部右側に口を開け蠢く悪夢、視界の隅の手首が示す先。床に散乱する日に焼けたメモに書かれた、これら見慣れた文字たちを連れて帰るべきか逡巡したのは半日前。扉を開けてしまったのか私は…。 Hakobunehatukin
107 80歳の父が車の免許をなかなか返納してくれない。頑固で自信家の父だけに自分の老いを認めず、今日も危なっかしい運転を続けている。僕ら家族はそんな父を翻意させようと、あの手この手で説得するのだが――あろうことか父はついに事故を起こしてしまう。 tameiki_remon
108 20XX年、女性誌によるシングルマザー美化戦略により、世は空前の離婚ブームとなっていた。そんな中、小学五年のヒロシはイジメに悩んでいる。クラスで一人だけ、両親がいるからだ――。かくして、ヒロシは父母を恨み、二人の仲を引き裂く計画を企てる。 tameiki_remon
109 伯父の縁故で私立楓医療大学医学部附属病院の精神科医局で働いている医局秘書・松永真弓の最大の関心事は、大病院経営者一族の医局員の藤岡と結婚する方法。しかし、伯父の弟子で医局員の益田に論文盗用の疑いがかかったことで真弓の正義感に火がつく。 Littlekubo
110 新書部門に配属された新人編集者の杉下は、先輩の与那嶺と学者の関根の家に行く。関根は与那嶺の書き直しの助言を拒否して10年。杉下は与那嶺が関根に執着する理由がわからず困惑するがお局の牧野からある話を聞き、関根の娘の奈緒とともに立ち上がる。 Littlekubo
111 海山県の知事に市民運動家兼大学教授の戸浦が就任。情操教育の名のもとに県立図書館の児童書の棚から戸浦の価値観に合わない本が排除されていく。子どものうちから様々な生き方・考え方に触れて欲しいと考える司書の小松文代の孤独な戦いがはじまる・・・ littlekubo
112 不倫の恋に訣別したけれど、ぽっかりとした喪失感を抱える私の許に、白いもっちりとした猫がやって来た。平林シロさんと名乗るその猫は、ラジオ深夜便で言葉を覚えたらしい。奇妙でゆるやかな共同生活の始まり。そして私はある男性に出会う。 isotta_1887
113 結婚直前で破談になったさくら。両親の離婚に心痛めながらも、健気に振る舞う千帆。新婚生活の戸惑いでぎくしゃくする徹と里花。それぞれの人生の中の消せない痛みが、ささやかな食卓を通じてゆっくりと癒されていく。中編小説集「ボナペティート」 isotta_1887
114 野呂弥生の4歳の一人息子の悠太は食物アレルギー持ち。姑・早苗は理解がなく、夫と舅は無関心。ある日姑が与えた食事が原因で悠太が一時危篤状態に。弥生は大学の同級生で弁護士の黒川に接近。化学者の伯父・峰岸和昭にも協力を仰ぎ復讐の爪を磨ぐ・・・ littlekubo
115 定年後に病弱な妻のために転居した岡部宗一は、病院の待合室で騒いでいた親子連れの団体に注意した翌日、地元の議員の友田愛子に親子連れへの謝罪を求められる。持論を展開し謝罪を拒否した宗一。その日から宗一夫婦の日常が崩壊していく・・・ littlekubo
116 「いつくしみふかき……」結婚式で流れる賛美歌を歌うのが、週末の私の仕事。お日柄のいい日は朝から夜まで式場に缶詰になるのも、いつものこと。でも、その日の式はいつもとは様子が少し違っていました。聖歌隊の私達、お節介かもしれないけれど動きます。 isotta_1887
117 英文学者兼児童文学作家の高樹泰子は小学生・安藤太一からファンレターをもらって以来30年近く文通を続けていた。太一からの手紙がプツリと途絶えて一年、心配になった高樹は太一に手紙を出した。太一の妹の実果から届いた返信には・・・ littlekubo
118 テレビ局・山猫放送の視聴者センター責任者の石濱。タイラと名乗る女性からのクレームに日々困惑している。内容のほとんどが女子アナ・豊田つばさに対するもの。豊田の失言の件でタイラを訪問した石濱、そこでタイラと豊田の関係が明らかになる・・・ littlekubo
119 記者投票で決まる野球殿堂入り。その候補に選ばれた男は、今日も投票権をもつ野球記者たちに食事をおごっていた。他の候補には自分と同等の実績を誇る元選手が何人も並んでいるため、熾烈な得票合戦が予想される。元プロ野球選手の知られる政治活動とは!? tameiki_remon
120 プロ野球の大打者に不正薬物の使用が発覚し、過去の打撃記録がすべて無効となった。すると、彼に打たれたことのある投手たちが次々に不満を爆発。「あいつの記録が無効になるなら、俺の防御率も変わってくるぞ!」かくして記録部員たちの苦闘が始まった。 tameiki_remon
121 団員不足に悩む山城台消防団々長・三上は、ダメ元で近くの城下国際大学の学生課に団員募集の張り紙を出す。集まったのは、体力だけはありそうな加地、タイ人留学生のポール、ペルー人留学生のパストス、台湾人留学生の劉と個性派揃いの面々・・・ littlekubo
122 昔のノートが出て来た。事故で亡くなってしまった隣の席の女の子との交信の記録。郷愁にかられて、ひとこと書き込む。次の朝見てみると、ノートには返事が書かれていた。なにげないやり取りに心慰められる日々。桜の夜、僕は彼女にある提案をする。 isotta_1887
123 湖畔市でベビーカー襲撃事件が続発。以前、街を走る堀川電鉄車内で通路を塞いでいたベビーカーが原因で被害が拡大した通り魔事件が発生。捜査線上に堀鉄事件で妻を亡くした小料理屋の店主・神代が浮かぶ中、別の被害者・末吉愛梨の兄・正智が自首・・・ littlekubo
124 一卵性双生児の姉の真琴と比較され続け皆に疎まれていた珠希は、高校1年生のある日姿を消す。6年後、見違えるようにきれいになり、ブランド物を身につけた珠希が突然家に戻って来る。珠希が置いて帰った1千万円の札束が原因で大騒動が巻き起こる。 Littlekubo
125 『ワルキューレ』の譜読みをしていたら、駆ける蹄の音が聴こえてきた。気が付くと、ここは岩山。私は光る鎧を身につけている。どうやら物語の世界に入り込んでしまったらしい。今ならまだ助けられるかもしれない。私は馬に乗って、双子の兄妹の許に赴く。 isotta_1887
126 女性トラブルに巻き込まれた会社員・須坂はQ&Aサイトに助けを求める。ふざけた回答をしたアカウント名・Schadenfreudeをたしなめた翌日からSNSや各種掲示板でSchadenfreudeが粘着を開始。須坂は追い詰められていく・・・ littlekubo
127 流行に置き去りにされたような街の片隅にある塔、そこには塔守と呼ばれる男が住んでいる。季節ごとに彼のもとを訪れる人々が、必ず携えている標本箱。そこに収められたもの達にまつわる記憶を、彼は酒盃片手にゆっくりと解きほぐしていく。 Ichihukuchiharu
128 どこへ行っても嫌われる女。それがわたし。嫌われたってどうでもいい。恋人も友達もいらない。SNSはムカつくだけだからやらない。そんな毎日でも別によかった。でも、ある日届いた手紙が、わたしに思わぬ出会いをもたらす。 Nao0000Okamura
129 演歌歌手を目指し上京した熊沢権吉は歌謡コンテストで優勝する。作曲家・三嶋の内弟子に入るが浮世離れした権吉は内弟子仲間を呆れさせる。歌手デビューした権吉は三曲目の山男哀歌-エレジー-がヒットし、紅白にも出場。しかし、権吉には秘密が・・・ littlekubo
130 実話誌の新人編集者・黒澤ふみは、ベッドタウンの兎が丘駅付近を奇抜な格好で徘徊し物怖じせずに他人に話しかける初老女性、通称”紅子さん”への取材に成功。記事は好評で連載化され、”紅子さん”担当のふみも次第に”紅子さん”の魅力にひかれていく。 Littlekubo
131 ナザレ女子学院の同窓会で飲食後に参加者が苦しみ出す。在学中にいじめられていた大学生の鹿山と久田が事情聴取されるが、2人にはアリバイがあった。23年後、学院に有名英語教師の武田和恵が赴任。事件の被害者の留奥万里は胸騒ぎを覚える・・・ littlekubo
132 山奥で木の棒を振り回して遊ぶツキノワグマに、プロ野球団・山海ワイルズのスカウト・強羅が目をつけ契約を結ぶ。ツキオと名づけられ代打でホームランを量産、人気者に。だが、悪い遊びを覚え素行が悪化。強羅とGMの大山は山の主に力を借りに行く。 Littlekubo
133 私立女子中学に通うは中里多香子は、家庭環境が普通ではないと教職員や在校生から笑われ続けて不登校になる。祖父は多香子に愛人の名塚真澄と旅をすることを厳命する。明るくざっくばらんな真澄と内向的な多香子の二人旅がはじまる・・・ littlekubo
134 「不幸と呼ぶには大げさだ。ただ、つまらない、悲しいことが、おれの人生には常について回る」……あの人から届いた最初で最後の手紙を読んだわたしは、この10年を振り返る。楽しかった時間は短く、あとは一方的に、わたしはあの人を、憎んでいた。 Nao0000Okamura
135 駅員・小杉の後輩の内田が乗客からの暴力が原因で退職。元助役の牛島にサシ飲みで話すと、深く関わるなと忠告される。ある日、妻の圭子が内田の元勤務先の久馬駅近くに大物政治家・仁田の悪名高いドラ息子が住んでいるという情報を仕入れてくる。 Littlekubo
136 23時のコンビニで今日も彼女に会った。木曜日はいつもインスタントの袋ラーメンとさけるチーズと缶ビールを買うことまで覚えてしまった。よし今日こそ。腹を決めて僕は彼女に話しかける。きょとんとした顔の彼女を前に、僕は言葉を探し続ける。 isotta_1887
137 桂木小夜子は子どもが産めない身体だが、健康に見えるので理解されない。夫の叔母・柴田さかえに日常的に暴言を吐かれ、うつ病になる。ある日、臨床心理士の浅利から混声合唱団への参加を勧められる。合唱団での活動の中で生きる意味を見出していく。 Littlekubo
138 何回目の失恋だか忘れたが、今回も俺はアイツの愚痴を聞きながら芋焼酎を飲んでいる。ここまで自分の気持ちをセーブしていられるのは奇跡に近い。だが、その夜は様子がちょっと違った。長年の片想いがひょんな形で動き出して、俺はみっともなく焦り始める。 isotta_1887
139 「最後に笑う者こそが一番よく笑う者」……《ファルスタッフ》の最後の台詞を教えてくれたのは、私を音楽の道に導いた先輩だった。先輩が失踪してから5年の歳月が経ったある日、小包が届く。中には一冊の楽譜が―—失われた歳月を巡る冒険が始まる。 isotta_1887
140 幼い日、神社の桜の下で僕はその女性と出会った。着物姿の女性は僕の首筋に唇を付けると「これが約束。これが印。いずれまた会いましょう」と去って行った。倒れていた僕が発見されたのは三日後のことだった……。桜をうたった歌に寄せて紡がれる短編五篇。 isotta_1887
141 「再生者の記憶は誰のもの?」記憶保持庁の職員である僕は上司である関澤凛子嬢に日々いなされながら業務にあたっている。ある日のクライアントは国の任務を負ったピアニストの女性。彼女を見た瞬間、僕は……。過去が、現在が、螺旋になって動き始める。 isotta_1887
142 ある男を怨む男女3人。「奴を殺したい」と思っていた彼らだが、やがて「ただ殺しても仕方ない。猛烈にバカバカしくて不様な最期を遂げさせよう」ということで意見が一致。自称復讐代行業者の青年も巻き込んで、くだらなくも凄まじい復讐劇が始まるが…。 Nao0000Okamura
143 世界が検索で満ちていたその時代、情報はドライヤーのように溢れていた。そんな検索の網から唯一逃れることのできたのは、とんかつソースに描かれたブルドッグ。誰にも検索されない彼が忘却の果てに辿りついた地。そこは存在しないはずの言語の墓場だった。 gouki0117
144 ビルの屋上から身を投げようとした時に、俺の前に現れたのはメフィストフェレスと名乗る悪魔。メフィストは俺に命を与えるという代わりに賭けを持ちかける。どのみち先はないのだ。俺は契約書にサインをするーー。短編小説『ファウスト奇譚』 isotta_1887
145 古本屋で見つけたフランス語の辞書には、愛に関する言葉に赤鉛筆が引いてあった。その赤鉛筆の跡をなぞるたびに、私はいつしか辞書の持ち主に心惹かれていった。持ち主の名前が数学教師と同じだということに気がついたのは、卒業式の三ヶ月前だった……。 isotta_1887
146 心がはりさけそうな夜は、台所に立つ。常備菜をつくったりしながら私の夜は過ぎていく。手を動かしながら、自分の心を立て直していく。亡くなった妹がいつも楽しみにしていた甘夏のシロップを作ろうとした時、声が聴こえた。振り向いた私の目には……。 isotta_1887
147 光映える大きな川を渡り、水色の電車はダイナミックに地下に向かっていく。7時34分の電車、いつもの通い慣れた風景、僕の大好きな風景。今朝はあの娘がいる。僕の胸は騒ぎ出す―—。東京メトロ9路線が舞台の短編小説集『Neuf métros』 isotta_1887
148 「昔の丸の内線、覚えてる?」妻は悪戯っぽく、私を見上げる。私の心は二十年前の大手町駅に引き戻されるーー。東京メトロ9路線を舞台にした短編小説集『Neuf métros』。地下鉄は人生を、恋を、そして愛を乗せて今日も走る。 isotta_1887
149 十数年ぶりに降りた湯島は、やはり曇り空が似合う街だった。神社に向かいながら、僕は受験生だったあの頃を思い出す。東京メトロ9路線を舞台にした短編小説集『Neuf métros』。地下鉄は、人生の苦味も甘味も包み込んで、今日も走る。 isotta_1887
150 広尾のお洒落なビストロで私は男性と向かい合いながら、あの人のことを思い出していた。築地なんて日比谷線で一本なのに、今はこんなにも遠い。東京メトロ9路線を舞台にした短編小説集『Neuf métros』。地下鉄はすれ違いながら、今日も走る。 isotta_1887
151 雑司ヶ谷の駅を降りて、鬼子母神に向かう途中、私は奇妙な既視感に捕われた。舞い落ちる銀杏の中、幼い私が探していたのは……。東京メトロ9路線を舞台にした短編小説集『Neuf métros』。地下鉄は、昔と今を交錯させて、今日も走る。 isotta_1887
152 ガンで余命宣告を受けた城山克樹は妻の藍子に古いノートを差し出し、過去に交際した女性たちを死の床にできる限り連れて来て欲しいと頼む。藍子が戸惑っているうちに克樹の病状は進行していく。覚悟を決めた藍子は克樹の女性遍歴をたどっていく・・・ littlekubo
153 妻への暴力行為で逮捕され罰金刑を受けた大学教授・石津欣一は齢七十にして職も家庭も失う。今まで勉強と仕事しかしてこなかった欣一は社会との接点を失い偏屈さを増す。見かねた弟の洋司は雑誌で知った友だち屋に兄の欣一への友だちの派遣を依頼する。 Littlekubo
154 門脇正志は天涯孤独のOLの真野麻美と約一年の交際を経て結婚。ある日、門脇にパワハラを働いていた上司の島袋がゴルフの帰りにAT車の操作を誤り命を落とす。門脇は麻美との結婚後に周囲で大けがをしたり亡くなった人間が多いことに気がつく・・・ littlekubo
155 荒井謙一は大型掲示板にアンチスレができるほどの有名なレビュアー。女性から飲食店まで荒井にとって全てが評価の対象。ある日、新しいレビューサイトができたことを聞いてアクセスすると、荒井が関わった人たちが荒井の評価をしていた・・・ littlekubo
156 ハイボールに涙は似合わない。彼女はからから笑いながら、自分の失恋話をまな板の上に載せてきた。流されない涙を知りながら、僕は笑って調子を合わせる。人生を慰め、時に赦してくれるアルコール。酒と共に語られる五つの小さな物語「今夜、あの店で」 isotta_1887
157 昔読んだ小説に出てきたジントニックは、あたしにとって大人の女性の象徴だった。でもその店のジントニックは合成の味と香りに満ちていて、あたしは眉をしかめた……。酒は時に、人生の伴走者でもある。酒にまつわる五つの小さな物語「今夜、あの店で」 isotta_1887
158 会社からリストラを宣告され、ヤケになって酔いつぶれた俺は、気がつくと公園で見知らぬオヤジのテントの中にいた。オヤジは俺の話を聞いて、カップに入った日本酒を差し出した。その酒は苦く、でも不思議と甘かった。五つの小さな物語「今夜、あの店で」 isotta_1887
159 門前仲町のお不動さんに行きたいの。懇願するおばあちゃんとふたり、私はお参りに向かう。その途中ある男の子に出会う……。東京メトロ9路線を舞台にした短編小説集『Neuf métros』。地下鉄は、すべての運命を平等に包み込んで、今日も走る。 isotta_1887
160 九段下の堀端のカフェで私は亮と向かい合う。別れの予感はとうに感じていた。口を開こうとしたその時、紫の服の女が入ってきた。東京メトロ9路線を舞台にした短編小説集『Neuf métros』。地下鉄は、愛も嫉妬も包み込んで、今日も走る。 isotta_1887
161 テキーラショットで勝負をつけることにした。朦朧とした頭には、ひとつの想いしかない。あいつに勝ちたい。彼女を奪い、不敵に笑うあいつに勝ちたい。心配そうな顔で俺を見る彼女から目を逸らし、俺は杯を重ねる。五つの小さな物語「今夜、あの店で」 isotta_1887
162 記念すべき7歳の誕生日に目を覚ますとそこは見知らぬ神社の中で、ひょんなことから妖怪達のママになることになっちゃって……!?幼ママとワガママ妖怪達が繰り広げる、笑いあり涙ありの珍育児劇!『七つからはママのうち!』 PngnPicopico81
163 「もう疲れたの。私も誰かに世話を焼いてほしいの」氷川台のサミットの前で、愛花は押しつぶされたような呟きをもらした。桜にかかる月がやけに綺麗な夜だった。東京メトロ9路線を舞台にした短編小説集『Neuf métros』。地下鉄は、今日も走る。 isotta_1887
164 OL・相沢茜の行きつけの居酒屋の常連客の老人・村根が急死。遺言でお気に入りだった茜が遺産を相続することに。天涯孤独の村根は実は資産家だった。取り巻く環境が急変した茜は人間不信に陥る。茜は会社を辞め、村根との思い出を整理する旅に出る。 Littlekubo
165 勉強嫌いの高校生・北上路美は進級の交換条件として教師に作文を提出することになる。家の仏壇の奥に何かが書かれた黄ばんだ原稿用紙を見つける。丸写しして提出したところ激賞され文学賞に応募される。それが入賞し、路美は一躍時の人になるが・・・ littlekubo
166 伊丹風花は大学中退後家出、夜の仕事をしながら愛人生活10年余り。ある日、パトロンの芝に白痴美と罵られ与えられていたマンションを追い出される。痛飲していた居酒屋で隣り合わせた偏屈な研究者の久富と意気投合。二人は共同生活を開始・・・ littlekubo
167 魚崎の妻・駒子が失踪。妻の行方を捜す中、妻の親友の園原絵里香から妻が元交際相手の桧垣が余命いくばくもなく家族から会って欲しいと何度も頼まれて悩んでいた話を聞く。そして、妻と桧垣は19年前のある事件の被害者と加害者の関係だったことを知る。 Littlekubo
168 麻布十番の焼鳥屋で煙にまみれて、隣の女はレバーを10本は食っている。プリン体が心配になりつつ、横目で見やる。突如店内で喧嘩勃発。女は立ち上がり一喝する。東京メトロ9路線を舞台にした短編9編「Neuf métros」。地下鉄はどこに向かう。 isotta_1887
169 どういうわけか、僕は女が転ぶ場面によく遭遇する。不謹慎ながら僕はそんな場面を見るのがけっこう好きである。転び様にちらっと素の人間性が漏れ出る気がするからだ。リナという女がいた。美しかったがよく転ぶ女だった。『転倒女子十二景』 sasaharatetsuji
170 小森由美子は地味な自分に劣等感を持つ派遣社員。ひっそりと生きていたが、由美子にそっくりな女優・真弓あかりの人気が上昇するにつれてモテはじめ、自分に自信を持つようになり社交的な性格になる。幼なじみの榎田学はそれを複雑な心境で見ていた・・・ littlekubo
171 東京の地下鉄は、複雑に絡み合う。時に予期しない場所で出会い、並行して走り、そして離れていく。地下鉄は心のように深い所を走る。時にその姿を現す。東京メトロ9路線を舞台にした短編小説集『Neuf métros』。地下鉄に、人生は少し似ている。 isotta_1887
172 またか。私は溜息をついた。目の前には怖々と覗き込んでくる女の子たちがいる。私は妖刀などではないのに。私は再び瞼を閉ざした――。かつて徳川に仇なすと畏れられた村正の刀は、今日もショーケースの中で穏やかに微睡んでいる。「村正は今日も眠い」 senzaiou
173 執拗なネットストーキングを受け、精神を病んだ彼女はやがて幻聴に心を支配されるようになる。テレビ画面は全て自分への指令に聞こえ、車のナンバーは何らかの暗号として見えるらしい。しかし私は彼女の妄言と現実との奇妙な符号に気付き、探り始める。 isotta_1887
174 眼球屋に寄った僕は、瓶の中の眼球を注文する。彼女の見る世界が見える眼だ。最初は背徳的な悦びにうち震えるが、やがて彼女の視界にある男ばかり登場することに気がつく。日毎に縮まる距離に、僕の心は均衡を崩す。やがて二人の逢引の現場に僕は踏み込む。 isotta_1887
175 優しい物語を書きたいと思った。幸福な物語を書きたいと願った。それなのに、彼女の紡ぐ小説は常に死の色を湛えていて――。湧き起こる衝動はどこから来るのか。人の命の根源を穏やかなトーンで描き出す。 Senzaiou
176 声楽家の薫が父のように慕っていた作曲家が亡くなった。最後に残されたのは、中原中也の「吾子や吾子」をテクストに書かれた歌曲だった。薫は譜読みを始め、この曲が彼女への遺言であることにやがて気がつく。薫は自らの出生の謎を探り始める。 isotta_1887
177 一度寝てしまうともう目が覚めなくなる恐ろしい病、無限睡眠症候群。しかし5年もすれば恐ろしさも薄れていく。主人公、なのはは自分に自信がない少女。ひょんなことから無限睡眠症候群を治す仕事についてしまい……?実は正義の魔法少女 (?)物 hagenn51
178 女子生徒が教室のカーテンを開くと、見慣れた景色は消えていた。文明の失われた大自然を前に、どうすれば良いのか分からない。だが、ここに留まっていても死を待つだけ。ならば……と一人、またひとりと旅立ってゆく。『それが彼女の生存戦略!』今春公開 soekiba
179 それは、古いゲームの話だ。装備を纏わなければ最強の防御力を引き出せるジョブ――忍者。だがそれは、裸になることを奨励しているわけではなく、間違っても僕にそんな趣味など……! 些細な誤解から引き起こされた『忍者の居ぬ間につまみ喰い』今秋公開 soekiba
180 コンビニに並ぶポルノグラフィ。その表紙を飾るのは薄い胸板の若き青少年たち。教室では女子からのセクハラに頭を悩ませ、男子トイレには盗撮カメラ。どうして女ってヤツはこうも性欲に忠実なのか! と彼は叫ぶ。『男女の性欲が反転した世界で』今秋公開 soekiba
181 十年前に使っていたガラケーが出てきた。電源を入れると、過去の自分からのメッセージが届いた。返信してやり取りを続ける内に、僕の現実が変わっていく。過去に干渉することで、今を変えられることに気付いた僕は、過去の自分にある指令を出す。 isotta_1887
182 【訂正版】優しい物語を書きたいと思った。幸福な物語を書きたいと願った。それなのに、「私」の紡ぐ小説は常に死の色を湛えていて――。湧き起こる衝動はどこから来るのか。人の命の根源を穏やかに描き出す。 Senzaiou
183 父方の祖父をボルヘス、母方の祖母にルイーズ・ブルジョワを持って生まれた主人公は、モー娘。に入るもスキャンダルで脱退、追われるように進学したブルガリアの大学で医師免許取得を目指すが、本当は医者なんてなりたくない!スリップストリーム小説。 Mamrmtmew
184 時のテープは使い尽くされ、22世紀が来ると突然リターンし始めた!跳ね返る時間の中で、二重になった現実を描く。国際化の進んだ各都市は”古き良き時代”の復活に喜んだ。〈以降の人々〉は過去の日々の中で、未来の子供達を育ててゆく。過去未来小説! Mamrmtmew
185 退職後欧州に移住した女は、現地で台湾人、上海出身、『両親とカザフスタンから移民した』、トルコ商人の1/8、スリルある伊クオーター、実は北朝鮮の…アイデンティティーを使い分け日常を豊かにしていた。13人が語る『日本版老女アメリ』の運命は? Mamrmtmew
186 「コラージュの国」を旅する2人。WIFIメトロにナイロビ町国、地中海入りの田の脇を走るルート188。宮殿の壁を這い敷地内へと忍び入る〈ドクター.ふらふら〉通り。観光客を狙う犯罪組織のアジトからは5教科の試験を受けなきゃ出れない!? Mamrmtmew
187 海外在住の日本人ミアは、現地で台湾人、上海出身、『両親とカザフスタンから移住した』、トルコ商人の1/8、スリルある伊クオーター、実は北朝鮮の…アイデンティティーを使い、演じ分け、日常を豊かにしていた。27人が語る『日本産アメリ』の結末は mamrmtmew
188 人類を乗っ取るのは人工知能ではなかった。桜の代表格「ソメイヨシノ」は、すべてクローン植物。ある日、その「人格」が一斉に目覚めたら? 世界中の首都に桜がほころぶ206x年春、染井と吉野の野望がついに狂い咲く。「人類の散る時がきた」……。 Rosei_Ono
189 私は療養楽士でアユミビトのリュラ。睡眠障害の患者を治療する傍ら、悪夢除御守りの通販もしている。通販部の業務の殆どを担うのは、飛翔最速記録保持者のカケルビトのシキ。ある日、新患の悪夢相談を受けてから二人は不思議な世界へ足を踏み入れ―― hakobunehatukin
190 或る日、十六夜区から送られてきたのは手のひら大の緑色の半透明のゼリー状の人工生命体。人間の感情を学ばせるために、区民の中から無作為抽出された350人のもとに配送されたらしい。僕らと、こいつの奇妙な共同生活が始まった。 isotta_1887
191 あの日も揺さぶるように陽炎が立っていた。草熱れと蝉時雨に幾重にも包まれ、母に手を引かれて歩いた。屋敷杜の、扇を幾つも開いたような梢が、手招きながらうねっていた。酷く暑い日だった。私の手ときつく繋がれた母の手は、けれど冷たく汗ばんでいた。 Hakobunehatukin
192 千拍村に妖怪が出るという噂が広まり村民は大パニック。県庁から心理学者の武智桜が派遣される。実は桜の両親は村に派遣され養鶏の指導をしていたが、デマが原因で家に放火され死亡。残された桜は養子先で名を変え勉学に励み復讐の時を待っていた・・・ littlekubo
193 狩られる鬼と狩る人と。いずれが悪か、善なのか。哀しき定めは隠された扉の向こうに広がっていて――。能「黒塚」を題材として、人と鬼の業と悲哀を色鮮やかに描く。 Senzaiou
194 「まるで死ぬ為に越してきたみたい。先月末だもの」隣室の住人が、黒く焼け焦げた外壁を見ながら呟く。未明の火事。煙の臭いがまだ漂う。私は一度だけ見かけた左足が不自由な男性の姿を思い起こす。その晩、煤けた猫を拾った私の身に奇妙な出来事が―― hakobunehatukin
195 小川弥生は自分に自信がない女性。ある日、夫がファンの女優・堀田愛への嫉妬から待ち伏せて愛の髪をはさみで切り逮捕される。離婚された弥生は愛に逆恨みし、愛がアシスタントをしている生放送の音楽番組に乗り込んで愛を人質に立てこもる。 Littlekubo
196 44歳の橋本妙子は友人グループのまとめ役の鷲津から皆で老後助け合おうと同じマンションに住むことを提案される。夫を説得して皆で同じ新築の分譲マンションに引っ越す。ある日老後の積立金の管理者の新美が横領し失踪。人間関係が崩壊しはじめる・・・ littlekubo
197 小学生・仮屋和人の家は代々下宿屋。騒がしくも楽しい日々を送っていたが、学校では家業の下宿屋をからかわれていた。ある日、和人をからかっていた宮本勇気の父が収賄で逮捕され母が心労で入院。勇気は祖母が来るまで和人の家に預けられることになる。 Littlekubo
198 通り魔に切断されたはずの僕の小指を右手に持ったつぎはぎフランケン少女百々花は自分を作った”先生”を慕いながらも普通の女の子になることを夢見ていた。僕は百々花を助けると約束するが、小指がないから指切りできない。怪物少女と僕の行く末は… haqlkoiwai
199 百年前の凄惨な戦争の中で遺体から作られた兵士である「ご遺体さん」は、今ではこの国を守る重要な存在となっていた。しかしある殺人事件により、ご遺体さん排斥運動が始まる。ご先祖のご遺体さんと暮らしている「僕」がとった行動は… 『ご遺体さん』 haqlkoiwai
200 百年前の凄惨な戦争の中で遺体から作られた兵士である「ご遺体さん」は、今では国を守る重要な存在となっていた。しかしある日、ご遺体さんが殺人事件を起こしたことから排斥運動が始まってしまう。親族のご遺体さんと暮らしている僕は… 『ご遺体さん』 haqlkoiwai
201 望月芽以は自分を醜いと思い込んでいる。短大を卒業してOLの後水商売で働いて、なりたい顔にランク入りした芸能人の顔や好きな人が好きな顔に美容整形をくり返している。ある日目覚めると、芽以は何事も自分で判断・決断できなくなっていた・・・ littlekubo
202 永代橋を渡ろうとした時に、老人が話し掛けてきた。「星の船の乗り場は何処でしょうかね」立ち止まる僕に老人は虹色に輝く乗船券を見せる。興味を惹かれた僕は、老人と共に乗り場を探し、想い出を辿る小さな船旅に共に出ることに…「星の船旅」 isotta_1887
203 同じ人に二回も失恋してしまった。自分の学習能力のなさに苦笑しつつ、職場からの帰り道、いつもと違う道を通ると「ラ・メール」という名前のカフェに惹かれ…。もう恋なんて疲れてしまった、人生を何処かで諦めかけた女性の心の再生を描く「ラ・メール」 isotta_1887
204 私は余生を生きている。1999年のノストラダムスの時も、2012年のマヤ暦最後の日にも、死ぬことが出来なかった。以来、これといった希望もないまま、随分と長い余生を生き続けている。そんな余生の中で出会う人々の人生を描写する「アマランタの春」 isotta_1887
205 特急に乗って、何気なく目の前のフリーペーパーに手を伸ばすと「理想の家族お届けします」という広告が目に入った。考えた末に俺は広告先に電話をする。一週間後「理想の家族」が俺の家にやってきたが、徐々に日常は軋み始める…「サクラダファミリア」 isotta_1887
206 季節の花に寄せられた、十二の恋物語「旬花暦」。冬は椿、春は桜、初夏は藤、盛夏は向日葵…匂い立つ花々の中で時に立ちすくみ、時に歩みを進める恋する心を描く。「恋を休んでるだなんて言い訳、信じなくてもいい?」満開の桜の下、彼女は僕を見上げた。 isotta_1887
207 祖母が残したレシピブックの中から、古い手紙が出てきた。娘である私の母が不義の子であることを示すその手紙を頼りに、本当の祖父を探し始める。その旅で不安定に揺らぐ私の心を支え、慰めてくれたのはレシピブックの中の祖母の味だった。「花栞」 isotta_1887
208 失恋をした途端に、鍵付きのTwitterアカウントにフォローされた。フォローを返すと、そのアカウントは、彼しか知らない思い出を彼女へのリプライと共に語っていた。謎のアカウントからの執拗なつきまといに彼女は徐々に精神の均衡を失っていく。 isotta_1887
209 東京をぐるりと回る山手線。ひとつひとつの駅に、ひとつひとつの物語が潜んでいる。新橋の立ち飲み屋でくだを巻く女性。上野の音楽会に向かうひと組の夫婦。駒込の六義園に向かう老婦人。渋谷で初めての待合せをするカップル。29の駅のちいさな物語。 isotta_1887
210 教育評論家・友竹夫妻の一人娘が自殺。遺書の内容や子分たちのマスコミへの告発で夫妻は表舞台から消える。夫の大学の同級生・平田の助けで夫妻は転居。偽名を使いシルバー人材センターで働く。プライドが高い夫妻は心を閉ざしたままだったが・・・ littlekubo
211 生まれつき心臓のない僕は恋をしたことがない。どきどきしないからだ。しかし高校生になったある日、教師とのただならぬ関係を噂される同級生に心臓が二つあることを知ってしまう。彼は僕に片方を貰ってくれないかと言うのだが…。 Qrnhl
212 夫は小説家志望でヒモ状態の熟女パブホステスの椿舞子。ある日、中高の同級生で大学准教授の小宮山蕗子が移籍で上京。舞子は夫はエリートで自分は弁護士秘書と偽っていた。夫と妹分のもえ、ボーイの末永を巻き込んで取り繕うためのドタバタがはじまる。 Littlekubo
213 世界には〈直射光の人〉と〈反射光の人〉がいる。前者は容姿を晒し、光の下で笑顔を作るが、思考や言動は束縛を受ける。後者は前半身が漆黒、表情の詳細が見えない分、静寂を持つ。斜めに影の射した航は両者の子、戸籍はないが反射光の町で凛々しく育つ。 Mamrmtmew
214 『横に、ズらス』
ある朝目覚めると、昨日までの苦痛は消え、代わりに隣人の厄介ごとが己の中に!二重印刷のズレの様に、左から来た問題を右が解く。韓国は中国、日本は韓国、米が日本の政治問題に苦戦する一方で、正嗣は隣人ゾエの犬ロスを感じ始め…。 Mamrmtmew
215 ロープーウェイに乗る私達の写真を撮ると言って、彼は次のロープーウェイに乗り込んだ。季節外れの箱根は人がまばらで、霧に包まれた私達は若者特有の賑やかさではしゃいだ。しかし大湧谷に着くと、彼の姿はなかった。あれから十年。私達は再び箱根へ…。 isotta_1887
216 総合病院受付の別所愛は弱視の患者・武田の指名で来院ごとに案内係をしている。ある日、武田に目の手術が成功したら交際して欲しいと告白される。容姿に自信がない愛はそのままの自分を見せるか売れない女優の親友に替え玉を頼むか悩む・・・・ littlekubo
217 世界では今、ゾンビ薬による擬似ゾンビ化がはやっている。何でも死なない体で愛すべき人と永久に支えあうためとか。人々は言う、ゾンビ最高!ゾンビが愛で世界を救う!…はずが、僕が恋してしまったのは、極度のゾンビ嫌いの子で…。この恋、叶うか? Sqlinu
218 傷つく顔を見て喜んでいたかった。あの女が俺に寄せる好意は知っていた。その心を黙ってポケットに捩じ込んで、素知らぬ顔で他の女と口づけを交わしてやりたかった。女は去った。やがてまた現れた。俺の知らない男と結婚すると言う。俺の心は初めて軋む。 isotta_1887
219 堤瑛子の母は経済的に恵まれているものの愛情に恵まれない環境に育った。そんな母は金品で他人の歓心を得る術しか知らない。瑛子と離れて暮らしてからもゆき過ぎた贈り物をくり返してくる。とうとう限界に達した瑛子はある決断をする・・・・ littlekubo
220 そなたは鬼よ。人が心を惑わす、美しき鬼よ――。将軍が寵を受ける紅顔の能楽師鬼夜叉は、天与の才により反対に芸の道に懊悩する。ようやく能楽の一端を悟ったかと思われた矢先、望月の光に照らされながら鬼夜叉は崩れ落ちていく。「鬼は月光のもとに」 senzaiou
221 「だからさ、江戸時代では屋台の蕎麦ってのは今で言うラーメン感覚だったわけ
洸一はそう言いながら蕎麦を啜る。無類の蕎麦好きの彼は、ラーメン好きの私を何だかんだと丸め込んでいつも蕎麦屋に連れてくる。同棲中のカップルのほのぼのとした日常を描く。 isotta_1887
222 今日が最期の日だと予感した。病院の天井を見上げるのもしんどくなった。細い管に繋がれた腕、指先を動かすのも億劫だ。俺は目を閉じる。口が粘っこく乾く。こうして俺は涸れていく。俺の思考が深く沈み始めようとした時、俺の頬に触れる手があった。 isotta_1887
223 【ツマドル】井筒優美は自己肯定感が低い30代の既婚者。高校の同級生の三輪翠から人妻のアイドルユニットに誘われる。夫の理解を得て活動を開始し人気者に。自分に自信を持ちはじめる。しかし、姑の失言で厳格な父にばれ実家に軟禁される・・・・ littlekubo
224 又木絢子の夫の富士男は動物が苦手で関心がないが、山からおりてきた熊のニュースには過剰に反応する。それが祟って、部下とケンカになり自宅謹慎に。温厚な夫が起こした行動が理解できない絢子。自宅謹慎最終日に、富士男は絢子に重い口を開く・・・・ littlekubo
225 ハントケの『ドンフアン本人が語る』を読んで彼が地球上にいると知った唯は、東京・新宿で伊勢丹に入ってゆくドンを見かける。そしてあろうことか、その日の午後には若紫を渋谷パルコで。時代錯誤な似通った二人が恋に落ちなければいいと思ったーー。 Mamrmtmew
226 百年の孤独を愛読する南米チリ人のヘラルドは、名古屋大学で化学を専攻する傍ら、休暇を使ってアジアのマコンドを見出そうと日本中を渡り歩く。草津温泉の近くに彼の思うマコンド的集落を見つけ。各国に一つはマコンドがある?!君だけのMを探しに行こう mamrmtmew
227 体育大学の優等生・村川は戦力外通告を受ける。コーチの言いつけ通り体操だけをやってきた村川は、自分の考えや言葉を持っていないがゆえに、知恵のある大人に利用され続ける。自分に嘘をつきつつ、他者を利用してまで、僕らは生き延びるべきなのだろうか? hitomi_sho
228 何度やっても生えてくるのだ。手の指だろうが足の指だろうが関係ない。切っても切っても「ぶっしゅっ」という音を立て、妙な汁と共に切り落とした部位が即座に生えてくる。その汁がまたツンとして嫌な臭いがするので困っている。腕は、まだ試せていない。 tukasatusa
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■ 山田隆道さんの本 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■