社会は激変しつつある。2020年に向けて不動産は、通貨は、株価は、雇用はどうなってゆくのか。そして文学は昔も今も、世界の変容を捉えるものだ。文学者だからこそ感知する。現代社会を生きるための人々の営みについて。人のサガを、そのオモシロさもカナシさも露わにするための「投資術」を漲る好奇心で、全身で試みるのだ。
小原眞紀子
第二十七回 P2PトレジャーボックスI―詩人のための宝箱
ついに見つけた、のかもしれない。詩人にもできる、詩人のための投資案件を。〈詩人のため〉というのはもちろんメタファーで、すなわち〈万人のための〉ということだ。なんたって詩人ほど投資に向いてない、と少なくとも一般に思われている人種はいないのだから。それは詩人は計算ができないから、というわけではない。むしろ詩人は小説家よりは理数系が多いし、さほど感情的でもない。その世俗に感情が動かない、無関心なところが投資に向かないと考えられている所以である。
しかし、もし世俗、この世に対して本当に関心を失ったら、文学者はつとまらない。この世界がどういう構造になっているのか俯瞰で見て、それを調べ上げることこそ文学者の仕事である。ただそのことと、自分の利害を突き詰めるパッションとがなかなか両立しづらいのである。にもかかわらず、誰もが知っている通り、文学者にもお金は必要なのだ。
11月10日、有楽町の某所である集まりがあった。シンガポールのVIVE社によるP2P案件『トレジャーボックス』のプレオープンを記念するセミナーである。正式なオープンは1月なのだが、プレの段階ですでに噂が噂を呼び、150人の人数制限はすぐに埋まった。立ち見も多くいる盛況であったが、撮影や録音は禁止され、会場は警備員に囲まれて、ちょっと物々しい。注目の大型案件の雰囲気が伝わってくる。
さて詩人、あるいは文学者、もしくは常識人の方々に対して、まずは「P2P」とはなんぞや、を説明しなくてはなるまい。それ自体は「売り手と書い手が直接取引する」ということを意味する、ごく一般的な表現である。ドア・ツー・ドア、みたいなものだ。違うけど、まぁ雰囲気的にはそんなもの。to を2と書くのがおしゃれ。
ではあるが、「P2P案件」となると、多少ニュアンスが違ってくる。かつての「P2Pではない案件」に対して、「こいつはP2Pですよ、だから大丈夫ですよ」という主張が含まれてくるのだ。「P2Pではない案件」と言われて、多くの人が思い出すのが、昨年流行った「ポンジ・ウォレット案件」というやつで、世界的に大きな詐欺事件に発展した。
ポンジスキーム自体は昔からあるもので、要するに運営本体が参加者からの資金を預かり、何らかのビジネスでそれを運用していると偽り、その運用利益から参加者に配当を渡していくかたちをとる。実際にはなんらビジネスを行わず、後から入ってきた参加者の預けた資金を、早くからの参加者の配当に充てているだけである。最初の方から参加した人は長い期間の配当を得て、結果的に元本を超える利益を上げることもできるので、ポンジであることを承知の上で参加する強者もいる。そして、この組織に資金が十分に集まったところで突然、運営がそれを持ち逃げし、後から入った参加者の資金がそのままなくなってしまう。いわゆる「飛ぶ」という状態で、これが最初から仕組まれているのだ。もっとも詐欺の認定は、「最初から仕組まれていたかどうか」という「意図」を問題にするのではない。内心を証明するのは困難なので、あくまで「謳われていたビジネスを実際に行っていたかどうか」である。それが行われていなければ、当然に詐取が仕組まれていたわけで、「虚偽の説明により出資させた」事実により詐欺罪が成立する。
詐欺の認定としてはそうだけれども、参加者において、実際にそのビジネスが行われているかどうかを確認するのは極めて難しい。そして運営にお金を預けると、配当を何度か引き出して元本分を回収するまで、ずっと損失のリスクにさらされる。もし月利25%の配当なら、複利を選ばず毎月配当を引き出したとして、4カ月間は元本回収に満たない状態にあるのだ。
半年ほど前、このようなユーザーの不利をすべてクリアした、画期的に面白い投資案件が登場した。エクスカシーファーム、通称『動物園』と呼ばれるものだ。ユーザーそれぞれのスマホの中で、ゲームのように動物キャラクターの売り買いが行われるという、ちょっと楽しいものである。ここでの運営の仕事は、参加者の資金を預かることではなく、この売買を監視し、市場をコントロールすること。運営の監視のもとで、この売買は行われれば必ず各ユーザーの利益になることが約束されている。いったんキャラクターを買ったら、何日間かの決められた保有期間の後、何%かの決められた利益をのせた状態で売りに出されるとルールで決まっているのだ。キャラクターを市場に放出し、この市場のルールを守らせるのが運営の仕事であり、ざっくり言えば取引手数料のみが運営の利益だ。
買えば絶対に利益が上乗せされると決まっているのだから当然、キャラクターを皆が欲しがる。そしてキャラクターは常に、それに対して品薄である。キャラクターの価格は決まっているので、品薄であっても個々の値段が釣り上げられることはなく、抽選で買い手が決まる。買い手はいつもキャラクターに飢えている状態なのだ。当選率は10%ぐらい。10回チャレンジすれば1回は当たる計算だ。アカウントをたくさん、10個ほど作って毎日抽選に臨めば1日に平均1つは当たることになる。よって参加者は複数のアカウントを作り、少しでも当選率を上げようとする。このようにして全体のアカウント数は増え、投入される資金も増えていって、このゲーム的な仮想の市場はどんどん大きくなっていく。
このスキームをいくら考えても詐欺の要素は一つもない。しかも全員が儲かる。損失リスクもほとんどない。(絶対にないと言えないのは、どんな取引にも、たとえば為替リスクがあるようなものだ。それぞれのシステムに依存する瑣末な手数料があるし、ごく短期間しかやらなかった人が抽選に一度も当たらなかった、という確率が完全に0ではないわけだから、「絶対」と言うことは禁止されている。ただ、それは学習すれば十分に回避できる。)
あまりにもうまい話のようだが、実際にエクスカシーファーム『動物園』で、今まで損した人は一人もいないという。実際、これは「儲かるとわかっているものを安く買って、高く売る」という「転売」ビジネスをなぞったもので、投資というより労働に近い。ただ、それがスマホ上のゲームになり代わっただけで、損などしようがないスキームなのである。
有楽町でプレセミナーが行われた『トレジャーボックス』は、これらのP2P案件を思い切ったスケールで進化・洗練させた大型案件である。だからこそ注目され、数多くの人を集めている。ユーザーは〈シルバー〉や〈ゴールド〉、〈ダイヤモンド〉といった〈原石〉を取引するが、これまでのさまざまな面倒や非効率から解放された。たとえば買い手が資金不足からお金を入れられなかった場合には運営が買い上げるので、売り手がイライラするリスクはない。なにより目立つ進化は、銀行振込の手間を省き、さらにプロジェクトを展開させる仮想通貨のウォレットが導入されたことだ。これによりユーザーはさらに大きな資金を効率よく回すことができるようになる。
しかしながら、これこそ〈文学者のための投資〉では、と思うのは、まず何よりも『トレジャーボックス』運営への安心感からである。『トレジャーボックス』のウォレットのシステム開発は、仮想通貨の世界では大変メジャーなプロバイダー、チェーンアップ社だ。だがそれ以上に、文学者・投資初心者にとっても安心なのは、この『トレジャーボックス』の企画者は、あの「文学金魚特別インタビュー『僕は勝たせる』」の戦略コンサルタント、渡辺一誠さんなのだ。
11月28日現在、『トレジャーボックス』の登録者数はすでにI万を超えているという。しかしながらまだプレの状態であり、動作には多少のバグが見られる。こういったことに慣れているプレ参加者は、これら動作のバグをレポートして、システムの改善に協力している。文学者・投資初心者が参加するのはグランドオープンから、それまでゆっくり学習と理解を進め、今後のプロジェクトの展開にも見通しを得てからの方がよいだろう。次回のこの連載では、プレオープンセミナーのメインスピーカー、楠美健太さんのお話から『トレジャーボックス』のあれこれを、より具体的に伝えていきたい。
セミナーメインスピーカーの楠美健太さんと渡辺一誠さん
さらに文学金魚では、読者がより豊かで余裕のある生活を実現し、執筆や読書などの文化活動に勤しめる環境をつくるメルマガを企画している。その発刊記念として、メルマガ読者に向けた【トレジャーボックス 文学者マニュアル】を準備中とのことである。
※グランドオープンに先立ち、『トレジャーボックス』の具体的な参加方法について、もっと早く知りたいという方は、以下にメールをお送りください。現時点での運営からの確実な情報をお伝えいたします。
kingyoya【アット】gold-fish-press.com
(【アット】を @ に変えてください)
メールタイトル 「トレジャーボックス情報希望」
小原眞紀子
* 『詩人のための投資術』は毎月月末に更新されます。
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