大野露井さんの連載小説『新故郷』(第09回)をアップしましたぁ。最初に文学金魚新人賞を受賞した小説『故郷-エル・ポアル-』があり、次に『故郷-エル・ポアル-』の注釈、そして今回の小説『新故郷』です。〝エル・ポアル〟は作家自身による注釈を間に挟んだ2つの作品から構成されます。
親の転勤などで、故郷らしい故郷が見当たらない方もいらっしゃるとは思いますが、たいていの人は故郷を持っています。ただ文学のテーマとして言えば、故郷はどこでもよろし。観光地とか有名な場所でなくてもいいのはもちろんですが、方言や風習などの特徴も、本当のことを言えば作品の素材に過ぎません。
特に小説の場合、人と人が交わり合わなければストーリーが進みません。方言・風習などの特徴に頼ってしまうのはかえって危険で、人間関係の渦巻きの中でそれらが活かされるのが理想的です。土地ならではの突飛な特徴など、なければ創作してしまってもいいわけです。ローカルな特徴なんぞ、地元の人間だって全部知ってるわけではないですから。
ヨーロッパ小説では、広い意味でのキリスト教が故郷に設定されていることも多い。そういった集合的無意識を、異なる人間の自我意識の葛藤から普遍的無意識まで昇華してゆくのが小説の一つのあり方です。地上の物語を地上で終わらせながら、読者がなんらかの天上の物語を感じてくれれば純文学の要件は満たされたと言っていいでしょうね。
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