大野露井さんの連載小説『新故郷』(第06回)をアップしましたぁ。最初に文学金魚新人賞を受賞した小説『故郷-エル・ポアル-』があり、次に『故郷-エル・ポアル-』の注釈、そして今回の小説『新故郷』です。〝エル・ポアル〟は作家自身による注釈を間に挟んだ2つの作品から構成されます。今回から次回から『第二部 ポアル』編です。
人間の死は一大事なのですが、たいていの場合、死そのものには謎がありません。死によってその人間の生の輪郭がはっきりすることもあります。歴史上の人物の死はたいていそうです。死によって思想と行動がほぼ一直線に結びつくようになる。輪郭が明瞭になったからこそ、様々な解釈が生まれる余地が生じると言っていいかもしれません。
ただ時おり、死によってもその人間の思想と行動が相対化できない場合があります。生者の側に、死者を相対化する準備ができていないのですね。この場合はなぜ相対化できないのかを考える必要があります。このケースでは死者の言動を完全に相対化し得る可能性は低いわけですから、なぜ相対化が不可能なのかを考えるんですね。
それは明確な論理の道筋を通らない分、ある人間的問題の本質に近接出来る可能性を持っています。この道筋で読者の心を打つためには相当な圧をかける必要がありますね。読者が他者の肉親の死を悼みその謎を自分のものとして受け取るよう、切迫感をもって謎に迫る必要があるわけです。〝生きていた時より死んだ後の方が怖い〟と思わせるようなエクリチュールですね。
■ 第6、7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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