大野露井さんの連載小説『新故郷』(第04回)をアップしましたぁ。最初に文学金魚新人賞を受賞した小説『故郷-エル・ポアル-』があり、次に『故郷-エル・ポアル-』の注釈、そして今回の小説『新故郷』です。〝エル・ポアル〟は作家自身による注釈を間に挟んだ2つの作品から構成されます。
金魚屋では本格的な単行本の刊行を始めますが、文学書を取り巻く状況は決して良くありません。石川は常々作家の卵さんに厳しい姿勢が必要だと口を酸っぱくして言っていますが、意地悪で言っているわけではないのです。受験でも就職でも自分が突破しようとする対象の分析を行いますよね。それと同じことを作家の卵はしなくてはならないといふことです。
上の3つのグラフは公益社団法人全国出版協会がまとめた2017年度、つまり去年までの本の売り上げ推移です。本の売り上げが激減しているのがわかりますね。予想はしていましたが衝撃的なデータ(事実)です。出版販売額総額で10年前の2分の1、コミックは3分の1、文庫本は出版点数は増えているのに、売上は10年前の4分の1くらいに下がっているのがハッキリわかります。文庫本になった本は売れているという通念はもう過去のものです。amazonなどの直販ルートを含めれば下降率は多少修正されるでしょうが、書店ルートでの販売額が激減しているのは事実。出版を取り巻く環境は厳しいのです。
もちろんどんな業界でも〝夢〟は必要です。夢がなければ努力する甲斐がないと言ってもいいです。ただ文学の世界では、漠然と夢見るのではもうダメという状況になっています。まず最低限の部数を売ること、その売上を維持すること、そしてさらに多くの読者を獲得する努力を重ねること。宝くじに当たるような一発バカ売れを夢見るのではなく、コンスタントに本を売るにはどうしたらいいのかを、版元も作家も考えなければならない時期にさしかかっています。
文学金魚はそのためのあらゆる方策を考えます。ただそれには作家の協力が不可欠です。厳しい状況を前提として、虚心坦懐にいろんなアイディアに耳を傾けて、作品のプロデュース方法を修正できる柔軟性のある作家でないと、なかなか生き残れないでしょうね。強硬に我を通しても失敗します。作家は自分の作品だけは絶対に客観的に評価できないからです。他者の目を借りなければならない。作家と読者の間に版元が挟まるということは、原則として作家より冷静かつ客観的に作品の魅力を読者にアピールするためです。
■ 第6、7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■