総合文学ウェブ情報誌 文学金魚

私達の故郷は日本語です。金魚屋プレス日本版は、日本語で書かれるあらゆる文学の方向を見極め、私達の精神の行く末を照らす光りを見出そうとするものです。 金魚屋プレス日本版はその光りのすべてを広義の文学と呼びます。

金魚屋プレス日本版代表 齋藤都

安井浩司墨書句漫読
No.001 『旅人へ告ぐたんすにスルメの頭』

No.001 『旅人へ告ぐたんすにスルメの頭』

  旅人へ告ぐたんすにスルメの頭(かしら)   金魚屋は僕には生きた辞書のような場所で、さまざまなジャンルの作家さんたちと交流できる。こんなことは学生時代以来だけど、さすがに皆さんお年を召しておられる(失礼!) […]
No.020 『花野わが棒ひと振りの鬼割らる』

No.020 『花野わが棒ひと振りの鬼割らる』

花野わが棒ひと振りの鬼割らる   安井さんの処女句集『青年経』には『渚で鳴る巻貝有機質は死して』、『遠い空家に灰満つ必死に交む貝』、『雁よ死ぬ段畑で妹は縄使う』といった、安井文学を代表する作品が含まれている。し […]
No.019 『蓼をゆく秘密身ならヴァイオリン』

No.019 『蓼をゆく秘密身ならヴァイオリン』

蓼をゆく秘密身ならヴァイオリン   『蓼をゆく』は安井さんの第五句集『密母集』に収録されている。安井さんの句集の中で僕が最も好きな作品集かもしれない。もちろん最初からこの句集の良さがわかっていたわけではない。連 […]
No.018 『鶸湧くや異木ふたつの十文字』

No.018 『鶸湧くや異木ふたつの十文字』

鶸湧くや異木ふたつの十文字   この句もまた難解である。意味的に読み解き難いだけでなく、修辞的にも極めて高度な作品である。いわゆる前衛俳句には難解作品が多い。しかしここまで複雑な作品は少ないだろう。今回安井さん […]
No.017 『万緑や総身も輪の積み上げぞ』

No.017 『万緑や総身も輪の積み上げぞ』

万緑や総身も輪の積み上げぞ   『安井浩司「俳句と書」展』公式図録兼書籍をパラパラと眺めていると、安井さんはつくづく一筋縄ではいかない作家だなぁと感じてしまうことがある。巻頭の方に『安井浩司自選一三〇句』が掲載 […]
No.016 『稲の世を巨人は三歩で踏み越える』

No.016 『稲の世を巨人は三歩で踏み越える』

稲の世を巨人は三歩で踏み越える   この句を読むと、最近までフランシスコ・デ・ゴヤ作だとされてきた『巨人』を思い出してしまう。ゴヤ研究の権威・プラド美術館によって、二〇〇九年にゴヤの弟子のアセンシオ・フリア作だ […]
No.015 『虻高し山は海から来るものを/からし菜の花を天地は過ぎ去りぬ』

No.015 『虻高し山は海から来るものを/からし菜の花を天地は過・・・

   虻高し山は海から来るものを    からし菜の花を天地は過ぎ去りぬ   『虻高し』は安井さんの第10句集『汝と我』(昭和63年[1988年])に収録された句で、『からし菜の』は第12句集『四大にあらず』(平 […]
No.014 『月光や漂う宇宙母あおむけに/天類や海に帰れば月日貝』

No.014 『月光や漂う宇宙母あおむけに/天類や海に帰れば月日貝・・・

    月光や漂う宇宙母(ぼ)あおむけに   天類や海に帰れば月日貝   『安井浩司『俳句と書』展』の墨書句は、安井さんの処女句集『青年経』から最新句集『空なる芭蕉』までのセレクトだが、各句集から均等 […]
No.013 『漆山まれに降りくるわれならん/藤の実に少しみえたるけさの我』

No.013 『漆山まれに降りくるわれならん/藤の実に少しみえたる・・・

  漆山まれに降りくるわれならん   藤の実に少しみえたるけさの我   安井さんは墨書展用に書き下ろした作品について、『軸にすることで完結した世界、それ自体、自立した世界となるような作品って、あるんだなぁと実感 […]
No.012 『きみゆけば遠く空なる芭蕉かも』

No.012 『きみゆけば遠く空なる芭蕉かも』

  きみゆけば遠く空なる芭蕉かも   岡野隆さんの連載『唐門会所蔵作品』を読んでいたら、『きみゆけば遠く空なる芭蕉かも』の初稿が『驢馬行けば遠く空(くう)なる芭蕉かも』だということに気づいた(『No. […]
No.011 『夕空より水落ちきれずに法華妻』

No.011 『夕空より水落ちきれずに法華妻』

夕空より水落ちきれずに法華妻   これは今回発表された墨書の中でも、かなり気になる安井作品である。言うまでもなく『法華妻』という聞き慣れない言葉が引っかかるのだ。『法華妻』が、『夕空より水落ちきれずに』という、 […]
No.010 『御灯明ここに小川の始まれり』

No.010 『御灯明ここに小川の始まれり』

  御灯明ここに小川の始まれり   この連載は、管理人の石川さんから『安井さんの墨書句について気楽なエセーを書いてください』と言われて始めたのだが、気がつくと10回目になってしまった。最初、5、6回なら本当に〝 […]
No.009 『キセル火の中止(エポケ)を図れる旅人よ』

No.009 『キセル火の中止(エポケ)を図れる旅人よ』

   キセル火の中止(エポケ)を図れる旅人よ   『安井浩司『俳句と書』展』公式図録兼書籍の解説で田沼泰彦さんが書いておられるように、この句の『中止(エポケ)』や『旅人』には、詩人・西脇順三郎さんへのなんらかの […]
No.008 『天蓋は吊り上げられて早稲の花』

No.008 『天蓋は吊り上げられて早稲の花』

天蓋は吊り上げられて早稲の花   『安井浩司『俳句と書』展』公式図録兼書籍を見ていて『天』から始まる墨書句が多いことに気づいた。『天蓋は吊り上げられて早稲の花』のほかに、『天地書をもて顔かくす芋嵐』、『天上の響 […]
No.007 『紅の花ふと大正午が坐りおる』

No.007 『紅の花ふと大正午が坐りおる』

紅の花ふと大正午が坐りおる   『安井浩司『俳句と書』展』公式図録兼書籍収録の『墨書句解題』で田沼泰彦さんが書いておられるが、この句に表れる『大正午』は、ニーチェの『ツァラトゥストラ(かく語りき)』の最後の言葉 […]
No.006 『睡蓮やふと日月は食しあう』『睡蓮や内なる人のみ戸を開く』

No.006 『睡蓮やふと日月は食しあう』『睡蓮や内なる人のみ戸を・・・

  睡蓮やふと日月は食しあう   睡蓮や内なる人のみ戸を開く   墨書を書くにあたってお気に入りの句はあるようで、今回の墨書展でも、安井さんは何作かを軸と色紙の両方に書いている。『睡蓮やふと日月は食しあう』もそ […]
No.005 『死鼠を常のまひるへ抛りけり』

No.005 『死鼠を常のまひるへ抛りけり』

  死鼠を常(とこ)のまひるへ抛りけり   安井さんは今回墨書にした句の選択について、『安井浩司『俳句と書』展』公式図録兼書籍収録のインタビューで、『どんな作品でも軸にできるわけではないし、これは安井 […]
No.004 『神曲やかの跳鱒は突かれずに』

No.004 『神曲やかの跳鱒は突かれずに』

  神曲やかの跳ね鱒は突かれずに   『安井浩司『俳句と書』展』公式図録兼書籍の巻頭には、和服姿で腕組みし、床の間の前に座る安井浩司さんのカッコイイ写真が掲載されている。床に掛けられているのは安井さんが自分でお […]
No.003『肩の辺まで天路をくだる烏蛇/夏垣に垂れる系図も蛇のまま』

No.003『肩の辺まで天路をくだる烏蛇/夏垣に垂れる系図も蛇のま・・・

  肩の辺まで天路をくだる烏蛇   夏垣に垂れる系図も蛇のまま   このエセーは今回出品された安井さんの墨書について、きままに書いてほしいと金魚屋編集部から依頼されたのだが、『安井浩司『俳句と書』展』公式図録兼 […]
No.002 『万物は去りゆけどまた青物屋』

No.002 『万物は去りゆけどまた青物屋』

  万物は去りゆけどまた青物屋   たまに美術館で見るだけで、美術品をお買い求めになったことのない方にはちょっと意外かもしれないが、美術品は高価な名作であればいいというものではない。もちろん財産としてなら高価な […]
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