総合文学ウェブ情報誌 文学金魚

私達の故郷は日本語です。金魚屋プレス日本版は、日本語で書かれるあらゆる文学の方向を見極め、私達の精神の行く末を照らす光りを見出そうとするものです。 金魚屋プレス日本版はその光りのすべてを広義の文学と呼びます。

金魚屋プレス日本版代表 齋藤都

大野露井 連作詩篇 『空白』
第 001 回 Ⅻ   時 (テキスト版)

第 001 回 Ⅻ   時 (テキスト版)

    Ⅻ   時  大野露井   針と針が合わさることを何故よろこぶのか そのとき短針と長針のあいだにいる者は ちょん切られてしまう 誰からも同情されず ただ秒針だけがはしゃぎながら駈けめ […]
第 011 回 Ⅹ 音 (テキスト版)

第 011 回 Ⅹ 音 (テキスト版)

    Ⅹ 音 大野露井   雨を降らせてみたいなら 雨だったらと言うだけでいい 雨だったら、 だったら、だっだら たらっ、だら、 たらっ、たらっ、だら だらだらだらだらだらだらだらだらだら […]
第 010 回 Ⅸ   水 (テキスト版)

第 010 回 Ⅸ   水 (テキスト版)

    Ⅸ   水 大野露井   耳朶を泳ぐ魚の優しさで ずっと奥までしみとおる 咽喉の潤いは驚くほど速く 内臓で恥知らずな音を立てる 瓦斯灯に照らされた 煉瓦の歩道のまんなかで   […]
第 009 回 Ⅷ  心 (テキスト版)

第 009 回 Ⅷ  心 (テキスト版)

      Ⅷ  心 大野露井   ここは僕の家で ここは君の家だ 摩天楼の谷間にある僕の育った家で 港町の波間に浮かぶ君の育った家だ ここで僕たちは暮らしている   君が悲しむと […]
第 008 回 Ⅶ 肉 (テキスト版)

第 008 回 Ⅶ 肉 (テキスト版)

    Ⅶ 肉 大野露井   私が腕を枕にしているのであなたは煙草を喫 うことができない。代わりにあなたは寝息を 吐いている、脂の匂いを疲労で包んだ熱帯の 朝の空気。それはちょうど陽が落ちた […]
第 007 回 Ⅵ   命 (テキスト版)

第 007 回 Ⅵ   命 (テキスト版)

    Ⅵ   命 大野露井   血が地図を描いている それは前にも見たことのある光景 ちょうどあの海原にぽつねんと浮かぶ小島で 僕たちはひねもす掻き混ぜていた 誰にも邪魔されずにそこで仕事 […]
第 006 回 Ⅴ  感 (テキスト版)

第 006 回 Ⅴ  感 (テキスト版)

    Ⅴ  感 大野露井   痛いときどう言えばいいのか 憂えるときどう歌えばいいのか 愛しいときどう喘げばいいのか 苦しいときどうえずけばいいのか   言葉にできないよろこびと […]
第 005 回 Ⅳ 字 (テキスト版)

第 005 回 Ⅳ 字 (テキスト版)

    Ⅳ 字 大野露井   開け胡麻 ひらけごま 文字は護摩 その名を刻む 印ひとつで 岩戸は開き 僕は君を手に入れる   開け仮名 ひらけかな 平仮名は夢 借りてきた文字で 仮 […]
第 004 回 Ⅲ  色 (テキスト版)

第 004 回 Ⅲ  色 (テキスト版)

    Ⅲ  色 大野露井   しろねりの濁った心 きみるちゃの肉をかきわけて ふじむらさきの悦びを知る 色が溢れている くろべにの路地に うすぐんじょうの月が幽む   くちなしは […]
第 003 回 Ⅱ  天 (テキスト版)

第 003 回 Ⅱ  天 (テキスト版)

    Ⅱ  天 大野露井   咳がとまらない どうにもとまらない 死後にのぼってゆくという 戦場にたどりつくまで 目印は縦横に刻まれた道   水が飲みたい あんなものには知らんぷ […]
第 002 回 Ⅰ 書 (テキスト版)

第 002 回 Ⅰ 書 (テキスト版)

    Ⅰ 書  大野露井   収穫の時だ。私は罌粟の畑で本を摘んでいる。 最も暑い時間、茎から捻じきれた書物は断末 魔のような煙を撒き散らす。私はくしゃみを するのだが、正気にもどったつも […]
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