総合文学ウェブ情報誌 文学金魚

私達の故郷は日本語です。金魚屋プレス日本版は、日本語で書かれるあらゆる文学の方向を見極め、私達の精神の行く末を照らす光りを見出そうとするものです。 金魚屋プレス日本版はその光りのすべてを広義の文学と呼びます。

金魚屋プレス日本版代表 齋藤都

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第十四回 文明に茶々を入れる

第十四回 文明に茶々を入れる

『オデッセイ』(2015年 アメリカ映画)ポスター 監督リドリー・スコット      茶色は不人気である。街にひしめく広告を一瞥すればわかることだが、こと商業の世界において、商標に茶色を用いたり、茶色 […]
第十三回 だいたい、橙

第十三回 だいたい、橙

『マレーナ』(2000年、イタリア・アメリカ合作)ポスター 監督ジュゼッペ・トルナトーレ     地球は一個のオレンジのように青い    これはシュルレアリスムの詩人ポール・エリュアールの有 […]
第十二回 桃色の夢

第十二回 桃色の夢

『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年 ドイツ・イギリス合作)ポスター 監督ウェス・アンダーソン      桃源郷という概念の出典は、五胡十六国時代の文学者、陶淵明(365〜427)の作品「桃花 […]
第十一回 溶けない道の固さ

第十一回 溶けない道の固さ

第十一回 溶けない道の固さ 『光の旅人K-PAX』(2001年 アメリカ映画)ポスター 監督イアン・ソフトリー      人生は旅である、という比喩は、下手な人間の口から出れば凡庸この上ない駄句にもな […]
第十回 溶ける硝子と心

第十回 溶ける硝子と心

第十回 溶ける硝子と心 『シングルマン』(2009年 アメリカ映画)ポスター 監督トム・フォード      溶けた石の向こう側にあるような記憶をたぐってみると、前回ご登場願ったT先生はプルーストに言及 […]
第九回 溶ける石と本

第九回 溶ける石と本

第九回 溶ける石と本 『薔薇の名前』(1986年 映画) 監督 ジャン・ジャック・アノー      「諸君もプルーストを読んでみるといい。あれはどこから読んでもいいものです。コーヒーにミルクを入れる、 […]
第八回 澄みわたる恐怖

第八回 澄みわたる恐怖

第八回 澄みわたる恐怖 『キューブ2』(2002年 カナダ映画)ポスター 監督アンジェイ・セクラ      神でも天使でも、色をひとつに絞るなら白になるだろう。清廉潔白、純粋無垢、一点の曇りなき白は心 […]
第七回 新しい黒

第七回 新しい黒

第七回 新しい黒 『マルタの鷹』(1941年 アメリカ映画)ポスター 監督ジョン・ヒューストン      黒い衣装というのは不思議なもので、似合わないひともあまりいないだろうに、シックな(個人的には、 […]
第六回 緑の亡霊

第六回 緑の亡霊

第六回 緑の亡霊 『シン・レッド・ライン』(1998年 アメリカ映画)ポスター 監督テレンス・マリック      嬰児を「みどりご」と言うことからも明らかなように、緑という色は爆発的な生命力を秘めてい […]
第五回 青、呼吸せず

第五回 青、呼吸せず

第五回 青、呼吸せず 『グラン・ブルー』(1988年 フランス・イタリア映画) 監督 リュック・ベッソン      どの世界にも通好みという基準がある。これが粋というところに落ち着く趣味のよさなら文句 […]
第四回 劇場で激情に駆られること

第四回 劇場で激情に駆られること

『カイロの紫のバラ』(1985年 アメリカ映画) 監督 ウディ・アレン      定番の色、と呼べるものがいくつかあるとして、赤は間違いなくその一つであろう。美しい連想を引き起こしやすい色ではあるが、 […]
第三回 男はラクダに乗って

第三回 男はラクダに乗って

『アラビアのロレンス』スチール(1962年 イギリス映画) 監督 デヴィッド・リーン 主演 ピーター・オトゥール      砂漠は死の世界である。文明の及ばぬ空白、都市と都市とのあいだにぽっかり空いた […]
第二回 黄はキケンのキ

第二回 黄はキケンのキ

『キル・ビル Vol. 1』ポスター(2003年 アメリカ映画) 監督・脚本 クエンティン・タランティーノ 主演 ユマ・サーマン      花々をのぞけば、自然界には意外と黄色が見当たらない。だからこ […]
第一回 テクニカラーと総天然色

第一回 テクニカラーと総天然色

『カルメン故郷に帰る』ポスター 監督・脚本 木下恵介 主演 高峰秀子      映画館が苦手である。これは曲がりなりにも映画について語ろうとする立場にある者として、許されざる告白かもしれない。しかし本 […]
No.010 鏡の向こう(最終回)

No.010 鏡の向こう(最終回)

第十回 鏡の向こう(最終回)      コクトーという詩人がいた。小説家でもあった。劇作家でもあった。評論家でもあった。画家でもあった。脚本家でもあった。映画監督でもあった。肉体が許せば、バレエも踊っ […]
No.009 掟の言葉

No.009 掟の言葉

第九回 掟の言葉      言葉の掟といえば、すぐに想起されるのは文法であろう。    文法を探求することは、常に地雷原を進むようなものである。言葉は生きており、姿を変え続ける。言葉がただ孤 […]
No.008 土地の言葉

No.008 土地の言葉

第八回 土地の言葉      兄弟の言葉が他者との融合を夢み、恋人の言葉が自己とひとつになる幻を見るならば、言葉は結局孤独なものでしかないのだろうか。それでも人類は言葉を諦めきれずに、松明さえ持たずに […]
No.007 恋人たちの言葉

No.007 恋人たちの言葉

第七回 恋人たちの言葉      H・G・ウェルズはフェビアン協会の会員であった。協会は、知識人が清廉な生活を送ることで範を垂れ、急激な革命によってではなく、緩やかな改良によって社会を変革しようという […]
No.006 兄弟たちの言葉

No.006 兄弟たちの言葉

第六回 兄弟たちの言葉      育った家の目と鼻の先に、プーク人形劇場という芝居小屋があった。施設の由来はもちろん同名の人形劇団である。昭和四年、旗揚げの頃は「人形クラブ」といった。英語なら The […]
No.005 私だけの言葉

No.005 私だけの言葉

第五回 私だけの言葉      まずはこの一覧表にお目通しいただきたい。   路肩。 大通り。 縁石の芝生。 縁石の通り。 悪魔の通り道。 地役権。 調度の区画。 草の入江。 自然の通り。 […]
No.004 無言の実験室

No.004 無言の実験室

第四回 無言の実験室      前世紀、知性を証拠立てたものは距離であった。距離を保てば、何を言っても構わない。それどころか、言えば言うほど、よいのである。    「あなたたちの文化はなるほ […]
No.003 内向きに開く書物

No.003 内向きに開く書物

第三回 内向きに開く書物      古典の「古」の字を「正」に変えると正典になる。    つまり古いだけでなく、正しいと見做されたものが正典なのだろう。    しかも正典という音は […]
No.002 鞭もて駒を進めよ

No.002 鞭もて駒を進めよ

第二回 鞭もて駒を進めよ      読書の効用は何か? それは大陸の典籍に定義された詩の効用––––優れた心を涵養し、荒ぶる情勢を平らげ、ひいては国家の安泰に資するような––––と似たようなものと思え […]
No.001 翻訳される旅人

No.001 翻訳される旅人

第一回 翻訳される旅人      翻訳の醜さがもっとも露骨に浮上するのは、皮肉なことに、翻訳のすばらしさがもっとも燦然ときらめいている類の書物––––すなわち外国語でものされた詩集や物語の訳書において […]
No.008 陽画としての「死」

No.008 陽画としての「死」

     荒木経惟の数ある写真集のうちで最も高い知名度を誇るのは、『センチメンタルな旅・冬の旅』(1991)ではないだろうか。作品の知名度は必ずしも完成度と比例しないのが常であるが、この場合、それが荒 […]
No.010 『無名草子』の千夜一夜

No.010 『無名草子』の千夜一夜

  * ガランが仏語版『千夜一夜物語』の翻訳に用いた十五世紀シリアの手稿(フランス国立図書館蔵)      連載の第七回で、筆者はつぎのように言った。もしも『無名草子』が、朝を迎えたとたん、 […]
No.009 テクストの断絶

No.009 テクストの断絶

  * 神経ネットワーク(左)と銀河団      『無名草子』は、突然、終わってしまう。しかもそれは未完のように見えながらも、注意深く読んできた読者には綿密に計算されたものと映るような突然の幕切れなの […]
No.006 Ⅴ  感【H】

No.006 Ⅴ  感【H】

    Ⅴ  感 大野露井   痛いときどう言えばいいのか 憂えるときどう歌えばいいのか 愛しいときどう喘げばいいのか 苦しいときどうえずけばいいのか   言葉にできないよろこびと […]
No.008 翻弄する老尼

No.008 翻弄する老尼

* 英国の募兵ポスター(1914年、左)と米国の募兵ポスター(1917年、右)      連載の第四回で、筆者は老尼の消失について述べた。そして、あるいは女房たちの繰り広げる議論は、老尼が狸寝入りの状 […]
No.007 女の園

No.007 女の園

* 「眠れるヘルマプロディートス」二世紀のローマで作られた複製品。ルーヴル美術館蔵。反対側には乳房と陽物とを有している。      いくつもの物語の内容や登場人物、それに印象的な歌などについて語らって […]
No.006 「モデル読者」の群れ

No.006 「モデル読者」の群れ

* カラヴァッジョ「ナルキッソス」1495年頃、国立古典絵画館(ローマ)蔵      「百科辞典」の提出によって世界観をゆるやかに定義した後、女房たちは愛してやまない物語についての議論を開始する。全体 […]
No.005 女房たちの「百科辞典」

No.005 女房たちの「百科辞典」

* 1779年版『百科全書、あるいは科学、芸術、技術に関する体系的事典』。      花―。紅葉。月や雪と共に見る花。風情がある者もない者も、風流を理解する者もしない者も、等しく美しく思うだろう。 & […]
No.004 語り部の消失

No.004 語り部の消失

* 紀元前4世紀から紀元3世紀までのギリシャの演劇用仮面(レプリカ、サスカチュワン大学蔵)。能面を想起せずにいることは難しい。      どことなく幽霊のようなところのある女房たちは、「いったいあなた […]
No.003 異界への出発

No.003 異界への出発

* サンドロ・ボッティチェッリ「地獄の深淵」1490年頃、バチカン図書館蔵。      孤独な老尼は、最勝光院に足を踏み入れた。仏像や襖絵、それに金銀で飾った調度などのあまりに美しく、極楽浄土もかくや […]
No.002 つながりあうテクスト

No.002 つながりあうテクスト

* コルネリス・デ・バリューア「蒐集家のギャラリー」1635年頃、レジデンツ・ギャラリー(オーストリア)蔵。      『無名草子』は、ひとりの寂しい老尼の登場で幕を開ける。八十三歳という高齢であり、 […]
No.001 名前のないテクスト(『無名草子』の内と外―読み、呼び、詠み、喚ぶ―)

No.001 名前のないテクスト(『無名草子』の内と外―読み、呼び・・・

* 石版と煙突ブラシ、あるいはテキストとテクスト      『無名草子』は正治二年、つまり1200年頃に、俊成卿女によって著されたとされている。だが成立時期は、作中に登場する様々な人物や物語、そして年 […]
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