テレビ東京

金曜深夜

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 住みたい街 No. 1 から吉祥寺がすべり落ちたと聞いた。このタイミングでのテレビドラマは、ちょっと間が悪かったかもしれない。実際、エピソードには新 No. 1 の恵比寿の回もあって、そりゃ恵比寿に住めるなら、誰も吉祥寺なんかに住みたいとは思わないんですけど。山の手線じゃんか。

 

 そもそもこういうランキングは、持ち家派にとってはあまり意味がない。物件を購入できるところは自ずと限られているし、終の住処に近いものなら勤務地に近いとか、実家に近いとか個々の条件が重要になってくる。人気投票的なイメージや憧れを実現するには障害が多すぎ、あまりに現実味のないことを考えるのは時間の無駄だ。すなわちせいぜい若夫婦の住まいなど、賃貸需要の高い街がランキング上位となる。

 

 これはまた、いわゆる情報漫画のドラマ化で、つまり漫画業界のシビアなマーケティングに晒されたキャリアのある企画なのだから、特に漫画を読むような層に需要のある情報だ、ということだ。気分や憧れで気軽に引っ越しできる、というのは考えようによっては、それ自体がひとつの財産かもしれない。

 

 それでもドラマは、明日にも引っ越しを考えている人々だけでなく、東京とその周辺に住む視聴者にもアピールすると思う。テレビ東京なのだから東京の街ということになろうが、本当に東京は広くて、さまざまな雰囲気の街がある。そういったことにやたらと詳しい人がいて、不動産屋や大家さんとは限らない。あちこち歩き回る営業マンが多く、行く先々でそれを愉しんでいるのがわかる。

 

 まあ都内だと、吉祥寺みたいな地理的には場末に近い場所よりよほど便利ないいところがたくさんあって、家賃だって安くはないと思うが、そこはドラマでは度外視のようだ。それでも昨今の賃貸アパート建築ブームで、借り手市場ではあるかもしれない。同じブームが都内の土地価格の高騰を招いてもいるのだから、やはり今は借り得、賃借人天国ということだろうか。

 

 不動産ドラマというめずらしいジャンルで、前クールに当てたのは日テレの『家売るオンナ』だった。北川景子という、テレビ東京にとってはもしかしてちょっと高嶺の花が主演で、ただそれは数千万、億という物件をバンバン売る話だ。太った姉妹の賃貸不動産屋が顧客をちんたら案内して回る、というドラマが評判になれば、テレ東らしく一矢報いたといえるのかもしれない。

 

 そして『家売るオンナ』では、売る対象は「物件」であった。それがどんな場所にあるかは一通りの説明のみで、重要なのは設備と間取りだった。設備が住む人のヒストリーに呼応し、間取りが家族の関係性を支配していた。大枚はたいて物件を購入するからには、すべての問題は家のなかで解決されるべきものだったし、住む者の視線は内向きであって当然なのだった。

 

 確かに賃貸物件はある程度決まった仕様のアパートが多く、またこだわったところで自分の所有でもないし、いずれ出て行くものだ。住む者に残るものは、人生のある時期、その街で過ごしたということだけだ。ただそれは暮しを通してその肉体に染み通り、精神のあり様にもずいぶんと影響を与えるものだろう。

山際恭子

 

 

 

 

■ 原作のマキヒロチさんの本 ■

吉祥寺だけが住みたい街ですか?(1) (ヤングマガジンコミックス) 創太郎の出張ぼっちめし 1巻

 

 

■ 予測できない天災に備えておきませうね ■