砂の塔~知りすぎた隣人~

TBS

金曜 22時~

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 数字のことは裏番組との兼ね合いでよくわからない結果になることも多いが、最近は満足度調査というのもされているようだ。それで言えば、なかなか点数の高い出来だろうと思う。それは多くの評価がそのようになっているようだ。視聴率だけでなく。こういう場合のスポンサーのメリットもはっきりすると、ドラマは一気にレベルアップするに違いあるまい。大多数を満足させようとするだけでも困るが。

 

 上出来のドラマは、たいてい原作がある。これもそうだが、ただ原作は小説家ではない、脚本家が書いている。ドラマ化を前提に書かれた、その利点がクリアに出ている。そしてそれはドラマのノベライズとはやはり異なるだろう。単に順番の問題だが、ホンにかけるエネルギーや視点のあり方が違ってくると思う。

 

 冒頭、血塗れの浴室のシーンから始まるなど、映像で引っ張る観せ方が周到になされている。文学作品のドラマ化では、こうすっきり決めるのは難しい。他でも細かいところで、映像の効果が最大限に生かされ、カメラが自在に生き生きしているのが感じられる。やっぱ、わかってるホンはやりやすいわー、みたいな。

 

 それは視聴者にも、セリフによらない繊細なメッセージを伝える。このドラマの満足度を上げている大きな要素のひとつはそれだろう。不出来なドラマは何かの不安に苛まれているかのように、必死でセリフで説明しようとする。それがドラマ全体のリズムを崩し、ますますみられなくする。不安の原因は、伝わらないかも、ということだろう。映像で伝えるという手段が失われていれば、不安にもなる。

 

 もうひとつの大きな要素はキャスティングで、これもわかってる感じで見事である。松嶋菜々子のはまり役というのを初めてみた。そうか、こういう役をさせなくちゃなんないんだー。といってもかなり微妙な設定で、アテ書き以外にあり得ない。個性の強くない、平均的な美女だから、微妙な役がはまるのだ。それで主演、ダブル主演というわけでもなく「トメ」。もっといい役、ということか。

 

 その女はタワーマンションの住民たちを監視し、主婦たちの嘘を見抜き、断罪する。神のような犯罪者(か?)である。設定としてはセレブたちの住宅街での事件を扱った湊かなえ原作のドラマを思い出させるが、タワーと神視点という「高さ」がよくマッチして、効果を上げている。

 

 そこに入り込んだ庶民代表の主婦、菅野美穂が主演。久しぶりにじっくりみて、あらためていい女優だなーと思う。よい母親であろうとして悩める姿が実に自然で、このドラマの映像表現とよく合っている。その女主人公と、観念的な理想の母親像を押し付けようとする怖ろしい女神との対比が一番の見どころだろう。

 

 ドラマとしては満足度十分だが、たとえば書籍になったとき、リアリティの点で多少、首を傾げることがあるかもしれない。上層階からのヒエラルキー、ボスママの支配になぜおとなしく従うのか。社宅と違い、何千世帯もあるタワマンで、そんな特別なグループが強い縛りを持ち得るのか、と。それを説得するのもしかし、状況説明より、そこにそれが自然に存在するという映像の力だろう。

山際恭子

 

 

 

 

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