黒い樹海

テレビ朝日

2016年 3月13日 21:00

No.129_TVドラマ批評_01

 

 

 二夜連続の松本清張ドラマで、田村正和主演の『地方紙を買う女』とのカップリングだが、仕上がりは対照的だった。どちらがよかったというのではないが、キャスティングの軽重と企画の組み立てにおいて、意図して変化をつけたように思う。それだけでもなかなか勉強になる。

 

 とにかく豪華なキャスティングである。主演を張れる有名女優が次々と死んでしまうのだ。そこが一番の見どころかもしれない。そんなのめったに観られない。主演は北川景子。もちろん美しくて悪くはないが、美人女優なら誰でもいいような役ではある。その点、田村正和主演でなくてはならなかったもう一方のドラマとは対照的で、なおいっそうゴージャスに脇を固めたということだろうか。

 

 北川景子演じる女主人公は、姉(小池栄子)との二人暮らしだ。就活中のあるとき、姉を交通事故で失う。新聞社に勤めていた姉の後任として働き始め、姉の死の不審に迫る。同僚の新聞記者(向井理)の協力を得て、姉が担当していた有名文化人たちを探るが、秘密のキーとなる上司(酒井若菜)やマンションの管理人(室井滋)が次々と死ぬ。やがて担当していた著名な小児科医(沢村一樹)と姉が不倫関係であったことを知る。

 

 観ていて感心するのは、本当にサスペンス・ドラマの型そのものだということだ。しかし惹きつけられる。型をなぞって造られたものとは、緊張感が違う。型を創造してしまうほどの強さを内在させている、ということだろう。ここがオリジンだったのだ、と気づかされるのだ。

 

 一方で、やはりドラマ化にあたって何かしらの不都合が、と思わせるような齟齬もある。もっとも全体としては『地方紙を買う女』のような時代のズレもない。だから本当に細かいところだし、原作にあたらないと何とも言えないが、そんなことをする特別な視聴者でなくても、普通に観ていて、あれ、という感じ。

 

 まず冒頭、東北に旅行に行くと言っていた姉に、「仙台の叔父を訪ねたら」と妹が言う。そういう計画を立てるのにソツのない姉が、そのとき初めて気づいた顔をしたことを、後から違和感とともに思い出す、というモノローグがある。そこからすると、姉は出発のときから十和田湖に行くつもりはなく、愛人と落ち合う予定だった、という謎解きでないと、その「違和感」が宙に浮く。

 

 また最後、愛人であった姉の死を悼んだ小児科医が、自身の社会的地位の基盤である妻と離婚し、小児科医も辞めてしまったそうだ、という台詞がある。小児科医が文化人として有名になる、というのもあり得なくはないが、本来は医者は地味な仕事であり、華やかな部分と切り離された経験や技術をこつこつ磨いてきたのだろうに、そして自分の生活もあるだろうに、離婚はともかく医者を辞めることがあるだろうか。

 

 あるいは、事件に関わったことで辞めざるを得なくなったのか。こんな細かいことが引っかかるのも、「私は姉の何を知っていたのか」と繰り返されるテーマが、単発ドラマに与えられた時間では、ちょっと伝わりにくいからかもしれない。形式とテーマ、二つながら完璧というのは難しいものだ。

山際恭子

 

 

 

 

■ 松本清張の本 ■

黒い樹海 (講談社文庫) 松本清張全集 (36) 地方紙を買う女 短篇2

 

 

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