純文学エンターテイメント作家、遠藤徹さんの連載小説『ゆめのかよひじ』(第05回)をアップしましたぁ。『とげとげひめとべたべたおうじ(後編)』です。主人公の女の子が夢の中で図書館に行き、そこで読んだ本の世界をリアルに体験するといふ章の後半です。幾重にも物語が重層してゆく奇妙でスリリングな展開です。

 

夢の中の本の世界では、べたべた王子ととげとげ姫が主人公で、二人は王国に恨みを持つ魔女によってそのようなおぞましい姿に変えられてしまいました。べたべた王子は何にでもくっついてしまうのですが、ただくっつくだけではありません。彼はくっついたものの心がわかる。王国の城にくっついてしまった彼は、過去の王国の歴史すべてを体験し、魔女がなぜ自分たちに敵意を持っているのか理解します。つまりべたべた王子はその存在自体が図書館です。

 

とげとげ姫は触れるものすべてを傷つけるトゲを持っているのですが、『せかいのどこをさがしてもないほどするどいツルギに、あたしはなった。それいがいのものではなくなった。そうしたら、もうあたしのなかにいたみはないの。だって、あたしはいたみをあたえるがわなんだから』とあります。他者に痛みを与えるトゲそのもの、痛みそのものとなった姫は、痛みを超越してしまうのです。

 

こういった深層心理に迫ってゆく物語の展開が遠藤さんの小説の特徴でしょうね。もちろん主人公の女の子は現実世界と夢の図書館の間を行き来します。夢の中の図書館が女の子の現実逃避ではないのは、『あそこへいったら、もしかしたらかえるきがなくなってしまうかもしれない。(中略)としょかんには、おやすみのまえのばんにだけいくことにしよう、ときめました』とあることからわかります。主人公の女の子はすべてを理解するべたべた王子であり、痛みそのものを超越しようとするとげとげ姫でもあるといふことでせうね。

 

 

遠藤徹 連載小説 『ゆめのかよひじ』(第05回) pdf版 ■

 

遠藤徹 連載小説 『ゆめのかよひじ』(第05回) テキスト版 ■

 

 

第04金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項

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