朝が来る

東海テレビ・フジテレビ系

土曜 23:40

No.123_TVドラマ批評_01

 

 

 子供をテーマにしたドラマは難しい、と思わせる。面白くないわけではない。が、苦しそうである。子供が、と言っても子役が下手でわざとらしいのは今に始まったことではないし、このドラマではそれも比較的いい方だ。苦しそうなのは、子供を抱えた設定の大人の役者たちである。

 

 その苦しさは最初、ドラマそのものの切迫感として観られて、むしろ好スタートに思えた。幸せな三人家族のもとに電話がある。無言電話の繰り返しの後、「子供を返して」と。夫婦の一人息子は特別養子縁組されて来た子供だった。そこから家族が揺れ始める、というサスペンスタッチの触れ込みだが、揺れない。どういうわけかドラマが全然、まるっきり進展しないのだ。

 

 子供のなかった夫婦に、安田成美とココリコの田中直樹。安田成美の久しぶりの連ドラ主演に、期待して観た向きも多かろう。自分もその一人だが正直、毎回、後味がよくない。安田成美のよさが出てないように思う。どうよくないかと言うと、よさが出すぎててよくない。安田成美のよさというのは、よさを抑えたところにあるのに、めいっぱいの切実感、めいっぱいの痛々しさである。

 

 それはまあ、子を思う母の演技かもしれないけれど、それが彼女を必要以上に老け込ませてみせている。リアリティがある、と褒めることもできるけれど、なんだかなー。若い頃の回想シーンでは昔のままの若々しい安田成美で、なんだメイクでこのぐらいにはなるじゃないか、だったらどうして、とやはり思う。

 

 子供の生みの親に、川島海荷。ウニちゃんはナチュラルで可愛いけど、それも要するに子供が手元にないからではないか。そして子供恋しさという幻想に完結できるからではないか。自身が養子だと知っている子供、それを取り巻く大人たちはどこか偽善的で、ひどく苦しげだ。そこにむしろ演出上の意図もあるのか、夫はその点を部下の女性に指摘され、彼女に誘惑される。

 

 その部下の女性(佐津川愛美)の物言いのいやらしさもまた、度を越している。こんな口のきき方をする女に、不倫とはいえ引っかかる男がいるか、と思うぐらいだ。誰も彼もが過剰に型にはまろうとしていて、そういうのが子供をテーマとしたある種の大義名分ドラマの特徴である。そこを破ろうと各局試みては話題作も生まれていて、ただこの作品はそういう範疇のものではない。

 

 ストーリーが進まないのは、夫婦の前に現れたウニちゃんの過去の回想が始まるからだ。こういう展開は文学作品にしか許されてないから、原作があるのはわかる。そこでの細かい心理描写で読ませる小説なのだろうが、ドラマの脚本としてはやはり苦しい。とにかく何も起きてないように映る。

 

 ウニちゃんが犯した犯罪が形式上のドライブ(推進力)なのだが、窃盗では弱い。ドラマを引っ張る犯罪は殺人以外にないが、無論それでは違う話になる。こういうドラマで人を惹きつけるには結局、ケツをまくるしかない。本音爆発で偽善と抑圧をぶっ飛ばすわけで、夫の浮気がその起爆剤になるか、期待するところだ。

山際恭子

 

 

 

 

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