大野ロベルトさんの新連載映画評論『七色幻燈』『第01回 テクニカラーと総天然色』をアップしましたぁ。木下恵介さんの代表作の一つ『カルメン故郷に帰る』を取り上げておられます。木下監督はお亡くなりになってからだいぶたつので、すっかり歴史上の人物といふ印象です。でも映画の歴史ってそんなに長くなひ。実際にはつい昨日の方です。文学金魚でインタビューさせていただいた山田太一さんは木下監督の下で脚本家として本格的に出発しました。映画からテレビに娯楽が移り変わった1960年代のことで、木下監督はテレビドラマもたくさん撮影されました。木下監督の『カルメン故郷に帰る』は戦後の映画全盛期の作品で、〝総天然色〟映画です。

 

 映画に色がつくということが、洋の東西を問わず、観客を力づけるという映画の根本的な役割と密接に結びついているように思われることは興味深い。現実が白と黒で構成されているような時代にこそ、夢には色をつけなければならないのだ。言い換えれば、色をつけるという選択肢が夢を想起させた時代は、幸福だったということになるのかもしれない。現代にも相変わらず白と黒は溢れているが、映画にこれ以上、色を乗せることはできそうもないからだ。と、こんなことを言うのも、退歩史観から来るひがみに過ぎないのだろうか。

(大野ロベルト『テクニカラーと総天然色』)

 

大野さんが書いておられるやうに、現代では色もまた映画の表現技法の一つになりました。カラーで撮ったフィルム(ビデオですね)をあえてモノクロにしたり、一部分だけカラーにしたり、カラーといってもデジタルや照明処理で独特の雰囲気を出そうと監督たちは苦心しています。〝映画に色がついている!〟といふことが、純粋な驚きであった時代はとっくに終わったわけです。

 

ただ当時撮られた映画は、同時代の驚きを微かに反映しています。『カルメン故郷に帰る』は都会でストリッパーをしていたカルメンが、故郷の田舎町に帰って来て巻き起こすドタバタを描いた映画です。大野さんは『それはまさに戦後の自由な空気と、獲得されたばかりの自由に対する不安を表現しているように思える。だからこそ映画はどうしても、新しい「色」をしていなければならなかった。戦後六年目にして公開されたこの新時代の映画は、取るべくして大当たりを取ったのである』と批評しておられます。

 

 

大野ロベルト 新連載映画評論 『七色幻燈』『第01テクニカラーと総天然色』 ■

 

 

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