私、結婚できないんじゃなくて、しないんです

TBS

金曜 22:00

No.116_TVドラマ批評_01

 

 

 クラシック、というものを感じさせる。まず中谷美紀の美貌がクラシックである。そしてタイトル。今どきこんな、と思うが、人の思惑や状況というのは、あまり変化しないものなのかもしれない。才色兼備の女性を捕まえて、結婚できないと言いたがるのは、同性ばかりではないという。

 

 そう、どういうわけか、そんな嫌がらせみたいな物言いをあえてするのは、男の方が多い。先に結婚を決めた女友達というのは、その瞬間は上から目線ということもあるだろうが、あまり長続きはしない。女の方が本来的にしつこくないのかも、とも思う。しかし、なぜ男はそんなにしつこいのか。

 

 それはたぶん、本人のアイデンティティに関わることだからで、そうでなければエネルギーが保たないはずだ。つまりは自分より仕事ができる女性の存在そのものが許しがたい。無能な自分と、自分を支える経済力のあまりない妻とか母親をも侮辱された気がする。ましてやその自分の妻や母親より女っぷりもクラスも上ときたら、何でもいいから義務として難癖をつける男もまあ、いるものだ。

 

 こういう男との暮しの現実を知っているから、その妻や母親は結婚がいいものだとは必ずしも思ってはいない。自分のような男に尽くす機会のない女性を不幸だと考えたがるのは、あくまで男の側の事情である。しかし男は自分の妻のために、才色兼備の女性を引きずり下ろそうとしてもいるので、それこそ夫婦愛の一種ではあるかもしれない。妻は別に望んでないだろうが。

 

 このドラマでの藤木直人の役回りというのは、リアルではつまり、そんな男なのだ。クラシックなフェアリーテイルだというのは、料理屋の店主である彼にはもちろん女性に嫉妬するような卑しさはなく、どうやら彼女に同情して男の扱い方を鍛え直そうとしているようだ、というところだ。

 

 それには彼なりの背景があって、その謎解きが最終回へ向けて視聴者を引っ張る大きなドライブとなる。一方で、一話ずつを盛り上げるドライブは、ヒロインが高校時代から好きだった本命の彼とのすれ違いであり、その彼の元カノとの三角関係なので、これらもまた極めてクラシックだ。

 

 そして最終的には、この足長おじさん的な店主と本命の彼がヒロインを挟み、別の大きな三角関係を形作ることも見えていて、本当に良くも悪くも新しい枠組みはない。しかし世の中が存外に変わらないものだとしたら、テレビドラマに求められるものも変わらなくていい。風俗として現在がどこかに映り込んでいればよくて、ヒロインが「プレ更年期」などと言われるところがそれに当たる。

 

 新しさがあるとすれば、ストーリーや構造でなく、ひたすら年齢の脱構築にあるように思う。本命の彼の元カノも、ヒロインに言いよる歳下の男の子も、未成熟という意味での若さは持ち合わせていない。むしろヒロインと本命の彼、特訓と称して毒舌を繰り広げる店主の心情の揺れこそが未成熟を示し、同時に共感を呼ぶ。誰もが年甲斐もなく、典型的な成長物語と恋物語にはまり込む。年齢神話の崩壊である。

山際恭子

 

 

 

 

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