露津まりいさんの連載サスペンス小説『香獣』(第24回)をアップしましたぁ。いよいよ十樹の本性といふか、本来の姿が見えてきましたね。香〝獣〟といふタイトルにふさわしい展開になっていまひりました。

 

 駆け込み乗車はおやめ下さい。

 それでも駆け込んでくる女子高生がいる。そうだ。閉まる寸前、一緒に飛び込むのだ。

 芙蓉子は走り出した。女子高生とVの字を描き、電車のドアに突進する。その瞬間、腕を捕まれた。芙蓉子はもがいた。振りほどこうにも、ものすごい力だ。恐怖で声が出ない。ドアが閉まった。バッグが挟まっていた。

 発車する。このままホームとの隙間に押し込まれる。無謀な駆け込み乗車の事故。ゴムが割れる音とともに、いきなりドアが開いた。挟まれたバッグが外れ、再び閉まろうとする。そこへ飛び込もうとした。通せんぼするようにスーツの脚が突き出た。芙蓉子は倒れ、ホームに手を突いた。

 「大丈夫ですか」

 スーツの男が手を差し伸べている。芙蓉子は顔を上げた。

 地味なストライプのスーツ。髪は短く刈られている。人の目から隠すように立ちふさがり、脚を拡げて片膝を突く。

 危ない、と耳元で囁いた。その視線はホーム側と線路側を素早く見渡し、早口の言葉も滑らかだ。「電車は危ない。乗ったらいけない」

 「どうされました」

 そう言って駆け寄ってきた駅員を、十樹は掌で制した。

(露津まりい『香獣』)

 

今回のメイン展開の前段にあたる箇所ですが、サスペンスの王道的書き方です。十樹の登場の仕方としても鮮やかです。こういった細かな積み上げがサスペンス小説を構成してゆくのですねぇ。

 

プロットのある長い小説では、人間の移動と動きが不可欠です。純文学では移動しても、そこにどっかり腰を据えて心象描写が始まりますが、そういったワンシーン・ワンカットではダイナミックな動きは出ない。ただサスペンスの場合、登場人物の心象描写も必要ですから、その描写と動きの案配が問題になります。あまり心象描写が長いと動きが削がれる。このあたり、経験則といふか、場数を踏んだ上でのテクニックになります。これは何度も書いてみないと会得できません。

 

石川が書け書けと言っているのは、そういふ経験を積むためであります。どんな表現もテクニックがなければ成り立ちません。またそれは頭で考えるだけではダメなのです。肉体に覚え込ませなければなりません。小説を頭脳労働だとお考えになっている方は多いと思いますが、どんどん書けば、限りなく肉体労働に近いことがすぐおわかりになると思います。

 

 

露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第24回) pdf版 ■

 

露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第24回) テキスト版 ■

 

 

Web文芸誌のパイオニア 文学金魚大学校セミナー開催(新人支援プロジェクト)

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Web文芸誌のパイオニア 総合文学ウェブ情報誌文学金魚は、文学金魚執筆者によるシンポジウムと参加者の自由な質疑応答による参加型セミナーを開催します!。

 

日時2016年06月18日(土曜日)

開始時間午後03時30分~

場所近日中に発表します

参加費3,500円

懇親会費(オプション):2,000円

* セミナー修了後に懇親会を開催します。参加はご自由です。

 

テーマ ■

【テーマ】ジャンルの越境

純文学ラノベ、ロマンチック・ミステリ、純文学ホラー、自由な物語詩など、従来の文学ジャンルとは異なるオルタナティヴな文学を創り出すことを目指します。

【司会】

山田隆道(作家・TVコメンテーター)・小原眞紀子(詩人・東海大学文学部文芸創作学科非常勤講師)

 

プログラム(予定)■

シンポジウム

第一部 偏態小説と純文学エンタメ小説について

三浦俊彦(作家・東京大学大学院教授)

遠藤徹(作家・同志社大学教授)

第二部 ラノベと(純)文学について

仙田学(作家)

西紀貫之(作家・フリーライター)

リード小説大賞決定!

山田隆道(作家・TVコメンテーター)発案のリード小説(詳細は下記または『第一回『文学金魚大学校セミナー』開催記念インタビュー リード小説の意義について』参照)の大賞を決定し、大賞・奨励作については文学金魚への作品掲載を検討(バックアップ)します。

第3回金魚屋新人賞第一次審査通過作紹介

懇親会

いけのり(占い師・エッセイスト)の占いコーナーなど。

 

 

Web文芸誌のパイオニア 文学金魚大学校セミナー(新人支援プロジェクト)の趣旨

・才能ある若い作家の作品が発表できない、キャリアのある作家なのに一番出したい本にかぎって出ない、学者の卵の奨学金ですら返還義務があるなど、現在ではさまざまなジャンルが細分化され、文化間の交流がなくなっています。

・こんな時代だからこそ、文学金魚は創作者と読者、ジャンルとジャンルを繋ぐメディアとして誕生しました。

・セミナー参加者は新しい文学と出版カルチャー誕生の当事者・目撃者になれるかも!

・読むことと書くことの、あのワクワク感をみんなで取り戻そう!

 

【リード小説とは ~あなたの〝リード小説〟大募集!~】

・リード小説とは、あなたがすでに書いた、あるいはこれから書こうとしている未発表オリジナル小説の大筋やセールスポイント等をまとめた、映画でいえば、予告編です。

・文学金魚大学校第01回セミナーのお題として、書き下ろしリード小説をツイッター上で大募集します。完成原稿があるかどうかは問いません。

・選考は山田隆道(『第一回『文学金魚大学校セミナー』開催記念インタビュー リード小説の意義について』参照)が行います。講師の文学金魚連載作家陣も選考に加わります。リード小説から作家デビューの扉が開かれるかも。

・試されているのは自己プロデュース能力です。気楽に楽しんでください!

 

【総合文学ウェブ情報誌文学金魚について】

・文学金魚はジャンルの垣根を取り払い、文化融合的な状況の中から新たな日本文化を創・出することを目指します。

・セミナー参加者は楽しいお題で盛り上がるもよし、懇親会で人脈を広げるもよし。新たな文学シーン誕生のワクワクする瞬間、その当事者・目撃者になれるかもしれません。

・今は積極的に自己アピールし、様々な方法で作家としての活路を切り開いてゆける時代です。ネットと紙出版のインタラクティブな関係性にリアルな人間の息吹きを吹き込んで、文学カルチャーのホットスポットを創り出そう!