第02回 辻原登奨励小説賞受賞作 寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『再開発騒ぎ』(第06回 最終回)をアップしましたぁ。名残惜しいですが今回で最終回です。寅間さんの『再開発騒ぎ』は四〇〇字詰め原稿用紙約100枚の作品です。読み通していただくとある世界が立ち上がり、一つの結末に向けて全力で走り抜けたと作品だといふことがわかると思います。

 

 「首突っこんどいて、誰も傷つかない結果なんて求めたりするなよ。どっちかの意見が通れば、どっちかは必ず傷つくんだ。それともあれか? 別にでかい道路が出来ても、あんたたちは痛くも痒くもないっていうのか?」(中略)

 こんがらがれば、燃え盛る凶暴な炎は消えてしまい、立っていられなくなるだろう。足腰に力が入らなくなった身体は、椅子はおろか店の床さえ突き抜け奈落にさらわれてしまう。さらわれるのは構わないが、僕にはまだ言いたいことがある。

 「結局ごまかしてるだけなんだろ? 退屈な割に長い人生をごまかすために、そんな黄色いTシャツ着てはしゃぎまわってるんだろ? この町のことなんてどうでもいい、ただ思い出づくりがしたいんです、って白状したらどうだ?」

 思い出づくり、と口に出すと女優の卵と画家の卵だった頃の二人が浮かんだ。さっきから言葉の方が何歩か先にいる。

(寅間心閑『再開発騒ぎ』)

 

『さっきから言葉の方が何歩か先にいる』という痛切な認識が、この作品のある種の頂点でしょうね。寅間作品には絶望の匂いがしますが、それは本質的に〝言葉の先にある〟ものです。これを捕まえなければなりません。絶望に向けて一気に走り出すこともできますし、絶望を見極め、その質を変化させることもできます。小説である以上、人間の絶望はそう簡単ではないですから。

 

ただ『再開発騒ぎ』で使われた世界観や観念の射程距離はこの作品で終わりでしょうね。小説で援用する諸要素のいくつかが変われば、また違う結末に向けて作品は走り出します。文学金魚では、引き続き寅間さんの新作をアップしてゆきたいと思います。

 

 

寅間心閑 連載小説『再開発騒ぎ』(第06最終回) pdf版 ■

 

寅間心閑 連載小説『再開発騒ぎ』(第06最終回) テキスト版 ■

 

 

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