露津まりいさんの連載サスペンス小説『香獣』(第20回)をアップしましたぁ。芙蓉子は小宮路の会社が所有する紫苑庵に緊急避難したわけですが、深夜、十樹を伴って自宅マンションに戻ります。移動と冒険はさまざまなことを明らかにしてゆきます。

 

 十樹が帰ってきた。

 やや俯き、面倒そうなゆっくりした足取りだ。最初、住民がゴミ捨てにでも出てきたかと見誤るほどだった。

 防犯カメラ。

 玄関のカメラを意識しているのだ、と気づいた。

 そんな配慮まで。嗅覚以外で、十樹に人並み以上の鋭敏さを見たのは初めてだ。

 「誰もいない」

 戻ってきた十樹は、芙蓉子に囁いた。

 「トイレも、見た。箪笥とかも」

 箪笥。

 ガラス瓶を捜していたのでは、と疑った。が、その考えは振り払うことにした。誰か潜んでいないか、トイレやクローゼットを確認したのだ。

 「荒らされた跡は?」

 芙蓉子もまたカメラを意識し、小走りにならないよう正面玄関に向かった。

 「ない」後からついてくる十樹は答えた。

 

十樹君がある種の社会性を獲得しつつあるのは驚きですねぇ。香水の香りが彼の中の何かを成長(促進)させるのでせうか。『香獣』は露津さんから毎回1回分の原稿をいただいて掲載しているのですが、いわゆる犯人が誰なのか、ちょいとわかんなくなってきました。宙吊りのサスペンス状態はまだまだ続くのでしたぁ。

 

 

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露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第20回) テキスト版 ■