純文学ホラー作家、遠藤徹さんの新連載小説『血みどろ博士』(第02回)をアップしましたぁ。血みどろの姿で研究用の白衣姿で部屋の中に立っていた男は一切の記憶を失っていて、外形的特徴から自分は〝血みどろ博士〟ではないのかと思い、そう呼び始めるわけです。しかし一人きりでは物語は進まないわけで、血みどろ博士の対話の相手として、〝血みどろのかたまり〟君が登場します。

 

 「重ねてお聞きしますが、ほんとうに博士はお忘れになってしまったのですか」

 「お忘れになった、とはどういうことだね。なにをだね」

 博士は問う。血みどろのかたまりは、

 「あの日、わたしにおっしゃったことをですよ」

 当然そうでしょう、ほかに何もないでしょう? という口調で答える。半分詰問してさえいるような口調だ。敬語を使ってはいるが、難詰する勢いがそこにはこもっているようにも感じられる。とすれば、わたしはなにか非道なことをこの助手、あるいは共同研究者、あるいは愛人か恋人、あるいはそれらのすべてあるいはいずれかを兼ね備えた存在に対して行ってしまったということなのだろうか。まあ、血みどろのかたまりというのがどちらかといえば、好ましくないというか、過程的というか、あるいはなにかの失敗をほのめかすものであるように見えることは否定しようがないのだが。

 

スリリングでユーモラスな展開です。ホラーの体裁を取っていますし、高いテクニックでスラリと読めるエンターテイメント小説にもなっていますが、この作品は本質的にエクリチュール小説です。血みどろ博士の記憶(内面)が回復されるのと、文章の流れ(文章が書かれてゆくにつれてと言った方がいいかもしれません)に沿って、博士の内面が形成されていくのは同時進行なのでありまふ。

 

 

遠藤徹 新連載小説 『血みどろ博士』(第02回) pdf版 ■

 

遠藤徹 新連載小説 『血みどろ博士』(第02回) テキスト版 ■