ラモーナ・ツァラヌさんの『青い目で観る日本伝統芸能』『No.026 恋愛の異化 ― 木ノ下歌舞伎『心中天の網島』』をアップしましたぁ。10月5日にこまばアゴラ劇場で行われた木ノ下歌舞伎による『心中天の網島』を取り上げておられます。原作は言うまでもなく近松門左衛門です。

 

監修・補綴は木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下裕一さんですが、今回は演出・作詞・音楽を糸井幸之介さんが手がけておられます。ラモーナさんによると、『糸井幸之介は「妙―ジカル」というジャンルを成立させた演出家である。妙―ジカルとは「奇妙なミュージカル」の略だそうで、歌と踊りを中心とした演劇である』といふことです。

 

『心中天の網島』は近松の代表作『曾根崎心中』から17年後の作品です。この間に心中に対する近松の考え方も、社会の受け取り方も変わっていたやうです。ラモーナさんは『『心中天の網島』の主人公たちの恋物語は理想的ではない。『心中天の網島』には観客の感情移入を妨げる仕掛けがあり、最後まで恋人たちに同情しきれないのである。その仕掛けは、子供っぽく未成熟な治兵衛の滑稽さである。悲劇的な登場人物になり切れない治兵衛の人物像を造形することで、近松はこの作品に禁断の恋愛の理想化を否定する要素を込めたのである』と批評しておられます。

 

木ノ下歌舞伎版『心中天の網島』では、遊女・小春の場面では床から浮いた網の上で物語が進行し、小春の恋人・紙屋治兵衛の家の場面になると、網の上に頑丈な板が敷かれその上に炬燵が据えられたさうです。いい舞台装置ですねぇ。複雑な印象を与える演劇だったようですが、舞台装置からして木ノ下歌舞伎さんの意図には筋が通っていると思います。

 

 

ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』『No.026 恋愛の異化 ― 木ノ下歌舞伎『心中天の網島』』 ■