リスクの神様

フジテレビ

水曜 22:00~(放送終了)

No.097_TVドラマ批評_01

 

 

 最後まで低視聴率に苦しんだ。観ていれば十分に面白いのに。俳優もいい。堤真一はこの手のドラマで言うに及ばず、小日向文世の抑えた演技はとても魅力的だ。戸田恵梨香も今までとは少し違う緊張感が漂い、芸域を拡げた感がある。したがって数字についてはキャスティングの問題ではない。

 

 そもそもが『花咲舞が黙ってない』の裏である。しかも同様の社会派インサイド情報系ドラマだ。しかもスポーツ中継などで一週抜けたり、しょっちゅう開始が遅れたりする。どっちを観てもいいな、と思っている視聴者は、とっつきやすくて定期的に放映されるものをたやすく習慣化してしまう。

 

 だからたぶん、数字がいかなかったのは内容とは関係のない巡り合わせだろう。それでまあドラマにはいろいろ注文や文句をつけるのがレビューというものだけれど、だから数字が取れなかったのだ、というつもりは全然なくて、そもそもそんなレビューアーの注文通りに面白くしたら最後、もっと数字が落ちるなんてことがあっても不思議ではないのだから。

 

 まず気づいたのは、画面が暗い。映画っぽいし、重厚感があってシリアスな雰囲気はとてもよいが、テレビとして眺めるにはやはり辛い気がする。NHKの大河ドラマでもそういう苦情が出たのは記憶に新しい。単純に認知性が下がるので、視聴に集中力を要し、ハードルが上がる。ハードルが上がるのは視聴者のレベルではなく、ドラマが視聴者を惹き付ける力だが。

 

 その惹き付ける力として、『リスクの神様』というタイトルはどうなのだろうか。内容の重量感に比して、少し軽すぎるように感じる。こういう場合のバランス感覚は結果としてアンバランスに働くことが多い。すなわち重さと軽さの中央値をとっても、このドラマの内容に関心を抱く視聴者にとって、それは中央値ではなく軽すぎる。プレーンなバランスを言うなら単に『リスク』の方がよい。

 

 物語としては、大きな組織に降りかかるさまざまなリスクを主人公の男が神の手とでも呼ぶべき手腕でさばいてゆくところから始まる。その様としては、「リスクの神様」と周囲に呼ばれてもおかしくないだろうし、それをタイトルにするのはしかし、ハートウォーミング系のドラマっぽい。

 

 実際、男は神様ではなくて、だんだんと男自身がリスクであることを露呈してゆく。「ザ・リスク」とでも呼ばれるべきダブルバインド性をしめす辺りは、物語としてさらに深みを出す可能性も感じる。それを阻むのは、言葉を変えればテレビドラマの側に留めようとするのは、戸田恵梨香演じる女性社員の存在で、狂言回しのようは彼女の役割は正直、蛇足にも感じる。

 

 とはいえ戸田恵梨香は好演しており、この華は『SP』の岡田准一の代わりというつもりなのだろう、と思える。(あの見どころのアクションがないのはまあ、致し方ない。)このドラマは確かに『SP』、あるいは『半沢直樹』といった復讐劇をなぞり、思い起こさせるが、なんでその父親が生きているのか、タイトル同様にやや中途半端な気もする。

山際恭子