小原眞紀子さんの『文学とセクシュアリティ 現代に読む源氏物語』(第039回)をアップしましたぁ。今回は『源氏物語』第五十一帖『浮舟(うきふね)』の読解です。『宇治十帖』第七帖に当たります。浮舟を中心にした、薫と匂宮との三角関係の帖です。小原さんは、『二人の貴公子に想われた浮舟が、自死を決意する。そのように知られた物語ですが、見てきたように、そんなにきれいで単純な話でもないですね』と書いておられます。

 

その理由を小原さんは、『二人の貴公子は、憧れの的である姫を奪い合う初心な若者、というわけではない。・・・すでに正妻がある。・・・実際、それは著者も踏まえた上で物語を進めています。まず薫にすれば、浮舟は当初から大姫の人型である。・・・匂宮はいつものごとく薫に張り合い、彼のものを欲しがっているだけです』と書いておられます。ではこの帖に作家・紫はどのような意図をこめているのか。

 

小原さんは、『浮舟は源氏物語の最後の女性であり、非常に重要な登場人物です。それにも関わらず、著者の筆は彼女への幻想を許さず、尊敬も感じられません。女房たちはずけずけ意見し・・・その美しさも中姫には劣るし、身分柄、教養も見識も欠けている、とはっきり書かれています。しかし、そんな女性だからこそ「死を選ぶ」といった思い切った行為に出る。・・・浮舟は私たちに似ています。身分は高くなく、だからこそその思考は教養的ではなくて原理的です。彼女は内面を生じさせ、私たちと同様に絶対的なもの、永遠なる一瞬を求めます。・・・それが物語のプロットそのものを大きく動かすという意味で、浮舟とは源氏物語で唯一の近代的な「女主人公」なのです』と批評しておられます。じっくりお楽しみください。

 

 

小原眞紀子 『文学とセクシュアリティー 現代に読む源氏物語』(第039回) ■