小原眞紀子さんの連載小説『はいから平家』(第08回)をアップしましたぁ。み幸と洋彦はお婆さんに先導されて、まだ親戚巡りツアーを行っております。
箱を開け、白い紙に包まれた陶器を取り出すと、「まーっ、お姉さんっ、」と、七歩子叔母が叫んだ。「これはすてき、これは素晴らしかっ」(中略)
赤い帽子をかぶった青い服の小人さんが大きなホルンを吹いている。カップはホルンで、小人さんが握りになっている。
「そう、よかね、よかでしょがっ、」と柚木子叔母は嬉しそうに言う。
「うん、これはなかなか、」と文雄叔父は眼鏡を押し上げる。(中略)
「そう、うわっ、欲しか。でも、み幸ちゃんたち、もらって帰りなさいよ」(中略)
玄関から祖母が出てくるのを待つ間、カップの包みを抱えた洋彦は、これは郷里の実家に持っていくと言う。「お袋はきっと狂喜するぞ」
古着が詰まった紙袋を下げたみ幸に向かって、カエサルのものはカエサルに、と言った。
脱力系なんですが、どこかで見たことのある光景ですねぇ(爆)。日常はスリリングであることを教えてくれる小説です。ただ日常の描き方にもいろいろな方法があって、伝統的な日本の私小説では作家の自我意識が捉えた日常を、時に執拗なまでの筆遣いで描いてゆきます。しかし小原さんにはそういった方法は必要なかったようです。主人公は一時的に声が出ない負の焦点であるわけですが、それには理由がある。沈黙の求心点の周りを、ちょいと狂気をはらんだような、騒擾的登場人物たちが取り巻いております(爆)。
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■ 小原眞紀子 連載純文学小説 『はいから平家』(第08回) テキスト版 ■