小松剛生さんの第1回 辻原登奨励小説賞受賞作『切れ端に書く』(第08回)をアップしましたぁ。カラリとした中に、ときおり現実の痛みが走るような文体ですねぇ。

 

 「よくわからない仕事を一生わからないまま続けることになる。それが人生といわれたらそれまでだわ。そういった種類の人生があることも理解している。でもそうじゃない人生ももちろんある」

 嫌いなのよ、と彼女は吐き捨てるように言った。

 「選択肢も与えずにいつの間にか歩きやすいレールを用意して、ね。こっちのほうがいいですよなんて甘い声でささやいて何も知らない人間を勝手気ままに扱うのは。誰がどう言おうとあたしは嫌なの。だから何も知らないでここに来た人を出口まで案内する」

 

これだけなら、若い作家の多くが書くことのできる思想の反映かもしれません。しかし、

 

 あたしがこれからどうするかなんて、あなたは知るべきじゃない。

 知るべきではないことがあることを、僕はそのとき知った。

 ぱたん。

 どこかで物語が綴じられる音がした。

 

という文章はなかなか書けないだろうなぁ。

 

書店の小説コーナーに行くと、SFや推理小説、ホラー、純文学など、様々に本が分類して置かれています。そういった区分は今後なお進んでゆくでしょうね。でも小松さんの作品はどれにも分類できない魅力があります。それは新しさであると同時に、自分で自分独自の道を切り開いて行かなければならないということでもあるでしょうね。ただ才能豊かな作家さんです。

 

 

小松剛生 連載小説『切れ端に書く』(第08回) pdf 版 ■

 

小松剛生 連載小説『切れ端に書く』(第08回) テキスト版 ■