山田隆道さんの新連載小説『家を看取る日』(第03回)をアップしましたぁ。山田さんの作品は饒舌な私小説文体です。「あの夏、僕が鮮明に覚えているのはそこまでだ」とお母さんが倒れた夏が大変だったことが示され、「東京に戻って以降は、それなりに記憶が線としてつながっている」と日常が描写されます。その日常は「八月も終盤になると、子供たちは部屋にこもることが増えた」といった日々で、この回想は「九月八日の日曜日もそうだ。二〇二〇年の夏季オリンピックが東京で開催されることが決定し、東京が世界中から脚光を浴びた日の朝、僕は新大阪行きの新幹線の中にいた。心なしか、いつもより西を目指す人が少ない気がした。その日、僕は三十九回目の誕生日を迎えた」と現在につながります。近過去が鮮やかに説明されている。お見事です。

 

この饒舌文体は、いろんなことを教えてくれます。今回、初めてお父さんが登場するのですが、その格好は「かわいい子犬のイラストが散りばめられたサマーニットを着て、小さな蛇が複雑に絡み合っているかのような白髪まじりのクセ毛を整髪料で固めている」と描写されます。これだけでどういふ方かなんとなく想像できますよね。可愛げがあるけど複雑な性格の方なのです。どことなく主人公のお母さんに似ている。主人公はそんな父母(故郷)に違和感を覚えているわけですが、それがどう自らの血筋とつながってゆくのか楽しみです。

 

『家を看取る日』は連載ですが、毎回読み切り小説のような楽しさがあり、ドラマ原作としてピッタリだと思います。山田さんは放送作家でもあり、MBSラジオの「かめ友」でDJをなさり、日刊ゲンダイで「対岸のヤジ」(隔週土曜日)を連載しておられる骨の髄からのタイガースファンでもあります。『家を看取る日』には饒舌でこだわりがあり時代のトレンドをつかむのが上手い彼の資質が、ほぼ最大限に発揮されていますね。文学金魚も今年でようやく年間100万ページビューに届きそうで、やっとWeb文芸誌の最低要件を満たせそうです。もっともっと力をつけて、作家の皆さんを盛り上げてゆきたいと思いまふ。

 

 

山田隆道 新連載小説 『家を看取る日』(第03回) pdf版 ■

 

山田隆道 新連載小説 『家を看取る日』(第03回) テキスト版 ■