小松剛生さんの第1回 辻原登奨励小説賞受賞作『切れ端に書く』(第06回)をアップしましたぁ。今回も魅力的な出だしです。

 

 ぱたんぱたん。

 知らないことがたくさんあった。

 ぱたんぱたん、ぱたんぱたん。

 しつこいくらい僕を夢から覚めさせようとしていた。

 タチの悪い「知らないこと」だ。

 ぱたん、ぱたん、ぱたん、ぱたん。

 そこで僕は目が覚めた。

 誰かがドアをノックしている。

 ――寝坊したかな。

 

前にもちょっと書きましたが、『切れ端に書く』は〝ぱたんぱたん〟の小説です。ある回路が開いて閉じる。現在は冒険部分と言いますか、思い切り未知の世界に回路が開き、主人公がそこに誘い込まれています。小説作品にはなくてはならない山場ですが、回路が開いて閉じることの方が重要なのかもしれません。小松さんの作品はラノベに見えるかもしれませんがエクリチュール小説です。〝ぱたんぱたん〟といふ言葉が喚起する観念のようなものへの強い信念がなければ、この作品は成立し得ないでせうね。

 

また小松さんの作品には〝愉楽〟があると思います。作家の書くことへの愉楽がかなりストレートに読者に伝わっています。こういう現象が起こるのは珍しいでせうね。小松さんの世界に日本文学的な苦渋をねじ込んでも意味がなひ(爆)。貴重な快楽の作家として、まずは限界まで突っ走っていただくのが正しい方向性だと思いますぅ。

 

 

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小松剛生 連載小説『切れ端に書く』(第06回) テキスト版 ■