金井純さんの『親御さんのための読書講座』『No.033 間宮兄弟』をアップしましたぁ。珍しく男の兄弟を主人公にした江國香織さんの作品を取り上げておられます。2006年に森田芳光監督、佐々木蔵之介、塚地武雄さん主演で映画化もされました。女優陣も豪華で常盤貴子、沢尻エリカ、北川景子さんが出演されていたなぁ。金井さんによると、中学受験の問題に江國さんの小説が出るのは珍しくなひそうです。以前吉本ばななさんが、自分の小説を使った受験問題を解いてみたら、不正解だったと書いておられましたが(爆)。
間宮兄弟は大人子供です。時には女の子と接したいなぁとも思っているのですが、ことごとくうまくいかない。ほんで金井さんの言葉で問題点をまとめると、『では、間宮兄弟の世間との隔絶・・・は何のためのものか。言葉を変えれば、これは何のために書かれたのか、ということになり、「作者のねらい」そのままになる。「ねらい」というのは嫌らしいから、彼らのどこが書かれるに値する、愛すべきところなのか、ということだ』といふことになります。
この問いに対する金井さんの答えはコンテンツを読んでいただければと思いますが、間宮兄弟が、ある完結した世界の住人であることは確かです。ソフィスティケートされていますが、それは居心地が良いと同時にグロテスクであり、多かれ少なかれ世間を拒絶する(世界から拒絶される)孤独な世界でもあります。
ただ恋愛などで傷ついた女性たちは、間宮兄弟の自足した世界の中に安らぎを見出します。しかし彼女たちは、安らぎを得ると間宮兄弟の世界から去ってゆく。江國作品では多くの場合、男性は女性に苦しみと喜びをもたしてくれる、不可解で荒ぶる神(神聖という意味ではありません)のような存在として描かれます。でも間宮兄弟は、彼らを振る女性たちのように、無防備に未知の喜びと苦しみを求めたりはしない。そういう意味では間宮兄弟は、江國さんが考えるユートピア的世界の住人だと言えるかもしれません。
■ 金井純 『親御さんのための読書講座』『No.033 間宮兄弟』 ■