山際恭子さんのTVドラマ批評『No.050 吉原裏同心』をアップしましたぁ。NHKさんで放送中の吉原を舞台とした時代劇です。小出恵介、貫地谷しほり、近藤正臣、林隆三さんらが出演されています。不肖・石川の独断ですと、近藤正臣さんの存在がけっこう効いているなぁ。ちょっと変な言い方ですが、主演の小出恵介さんが、ずぇんずぇん剣の達人には見えないところもぇぇですぅ(爆)。どっから見ても現代風のイケメン俳優さんで、小出さんを見ていると、このドラマ、時代劇だったよなぁと思ってしまふのですが、立ち回りは見事です。剣を抜かない小出さんと、抜いた後の小出さんのギャップがたまりませんわっ。
ほんで山際さんは、『遊女を演じる女優さんたちの「自らが主役」意識が期待できる雰囲気を醸し出しているように思う』と書いておられます。このドラマ、吉原が舞台だけあって、登場するゲスト女優さんが影の主役という面があります。第2回が奥菜恵、第3回が富田靖子、第4回が高橋由美子、第6回には黒谷友香さんが出演されています。皆さん力の入った演技で、石川は富田靖子さんの回に感動しました。凋落した遊女を演じておられたのですが、上手かったなぁ。
なお『吉原裏同心』は佐伯泰英さんの原作です。いわずと知れた、現在最も売れているベストセラー作家です。売上げ累計で4000万部を突破しておられるらしひ。出版不況の現在、うらやましひと申しますか、気が遠くなるやうな部数でありまふ。文学業界的に言うと大衆小説といふことになりますが、これだけ売れているとその理由を分析する意欲も湧こうといふものでありまふ(爆)。
ドラマ『吉原裏同心』を見ていてもわかりますが、佐伯さんの作品は大衆小説の中では時代考証がされている方だと思います。現代の時代小説、特に大衆小説ジャンルになりますと、そこで描かれているのは現代的個人主義社会が夢想する、理想社会といふことになります。悪はなんらかの形で罰せられ、不正も必ず正されるのであります。しかしそれが、江戸といふ社会の枠組みの中できっちり果たされなければならない。『吉原裏同心』ではそれぞれの〝分(ぶん)〟を守りながら、社会秩序を守ろうとする人たちが描かれます。佐伯さんは、江戸的〝分〟を水のように受け入れながら、ストーレートな勧善懲悪物語をお書きになる。いい作家だと思いますぅ。
■ 山際恭子 TVドラマ批評『No.050 吉原裏同心』 ■