金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.019 家 安藤忠雄』をアップしましたぁ。おおっ、これも絵のある本のはなしと言えば、そうですね。安藤忠雄さん、言わずと知れた日本が誇る世界的建築家です。大阪出身で、若い頃に前衛美術家集団『具体』に関わったこともあります。具体については山本俊則さんの美術展時評『No.022 「具体」-ニッポンの前衛18年の軌跡』を参照してくださいませませ。
ただま、安藤さんは美術家にはならずに建築家を志したわけです。それが安藤さんの資質だったんでしょうね。金井さんは『建築というのは、妙なものでもある。実用物であり、大きなビジネスを生むものであり、それゆえに人を規定し、けれども人によって作られ、アートでもある。空間のアイデアが組み立てられた安藤のスケッチは、現代アート作品めいている。機能的でありながら夢想的でもあるのだ。つまりは “ 人の営為 ” そのものだ』と書いておられます。建築は実業とアートの中間にあるものなのでありまふ。
建築家はアーチストよりも遙かにクライアントの要求に悩まされます。当たり前ですが、自分の好き勝手に建物を建てるわけにはいかない。予算も厳しく制限されるのが普通です。建築家に本音トークをさせると、延々とクライアントの悪口を言いつのったりします(爆)。でもクライアントと闘い協調しながら、自分にとって、またクライアントにとっても理想的な建物を造ってゆくのが建築家の仕事なのです。安藤さんの設計はすっきりとしたコンクリート打ちっ放しの建物が有名ですが、そこには生々しい〝人の営為〟が集約されています。
金井さんは『“ 個 ” の有り様はミニマルな視点で多様になり得る。ただ、物理的には同じ一つの空間で暮らしている以上、それは混交し合う』と書いておられます。確かに安藤さんの建築はズドンとした広い空間を保ちながら、個の多様性を活かすような仕掛けがほどこされています。安藤さんを含め、優れた建築家が描いたデッサンや図面は美しいですよ。建築家の夢と、それを押し潰すような現実の力が拮抗して、次第に一つの建造物の姿が浮かび上がってゆく。でもそのような夢を世界に向けて発信できる建築家は、アーチストよりもずっと少ない。アーチストでもあると認められた建築家は、世界にほんの一握りしかいないのでありまふ。
■ 金井純 BOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.019 家 安藤忠雄』 ■