杉田卓也さんの連載映画批評『No.003 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』-戦争機械の「詐術」を越えて』をアップしましたぁ。ダグ・リーマン監督、トム・クルーズ、エミリー・ブラント主演で、原作は桜坂洋さんのライトノベル『All You Need Is Kill』です。ダグ・リーマン監督は、マット・デイモン主演のアクション映画『ボーン・アイデンティティ』、『ボーン・スプレマシー』のヒットで知られます。最新作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も、ダグ・リーマン監督らしひサスペンス仕立てのアクションSF映画であります。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は不肖・石川のウルトラダイジェストですと、エイリアンと戦ふアメリカ軍人のお話です(爆)。ただダグ・リーマン監督作品ですから、単純なヒーローモノではごぢゃりません。エイリアンの血を浴びた軍人トム・クルーズが、ループ能力(死と蘇りを疑似体験する能力)を手に入れます。元々はエイリアンが人間の行動パターンをシュミレーションするための能力なのですが、トム・クルーズはループ能力を得たことでエイリアンの行動パターン(弱点)を知ることができるやうになる。ただしエイリアンは人間がループ能力を得た時のために、ニセ情報を流すことができるといふ複雑な設定になっておりまふ。
映画はリアルタイムの映像で情報を伝達する芸術ですから、最初のうち観客は、トム・クルーズがエイリアンと激しく戦い、戦死し、甦るといふ映像を繰り返し見せられることになります。戦闘シーンはリアルなのに、戦死した軍人が甦るといふのは不可解です。その謎が徐々に解き明かされるにつれ、観客は戦闘シーンは一種の口実に過ぎず、映画のテーマは別のところにあることに気づき始めます。それを杉田さんは『本作は物語上で戦争機械同士が繰り広げる情報戦を描きつつ、メタレベルにおいての「戦争」、つまりは映画そのものが戦争機械となり、観客に「詐術」をかけるというサスペンス』だと批評しておられます。
杉田さんは『映画に内在するものを巡る論考』の第一回で、インドネシアで起こった大量虐殺の当事者を描いたドキュメンタリー映画『アクト・オブ・キリング』を取り上げておられます。極限状態に置かれた人間を描く際に、観客の目の前に映し出される映画の画像がどこまでリアルなのか、そのリアルさはどのような映画的仕組みによって保証されるのかといった点に、ご興味がおありのやうです。杉田さんの映画評、徐々にそのテーマが明らかになってくるやうですぅ。
■ 杉田卓也 連載映画批評 『No.003 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』-戦争機械の「詐術」を越えて』 ■