大野露井さんの連作詩篇『空白』『第012回 Ⅺ 葉』をアップしましたぁ。『空白』も今回で最終回です。今回も『いま、話をはじめて』や、『計っている』『図っている』『量っている』『謀っている』『諮っている』と繰り返されるリフレーンが利いています。言葉の力を信じている書き方かもしれませんし、その逆に言葉の力を信じ切れないからリフレーンが援用されているのかもしれません。いずれにせよ新しいタイプの言語派の詩人が登場したと思います。
不肖・石川、大野さんのお年を正確には把握していないのですが、確か三十歳くらひだと思います。まあ現段階では眉唾とお感じになる方も多いと思いますが、恐らく三十代の作家の中で、大野さんは最も優秀な一人でせうね。文学金魚では自由詩と評論を発表していただきましたが、彼のレベルを超えられる同世代作家がそうそういるとは思えない。大野さんの作品完成度の高さは、自己の資質を正確に捉えていることからもたらされているやうに感じます。頑張っている、努力しているといふだけでなく、筋(センス)がいいわけです。
もちろん大野さんが、このまま順調に作家として伸びていくかどうかは石川にはわかりません。三十代くらいて突出した能力を見せる作家は、こじんまりまとまっているから、あるいは自己の思想を作品パッケージ化する能力が高いから、頭一つ飛び抜けて見える場合もあります。四十代、五十代になれば、資質をベースにそこから培った二次的な才能の方がより重要になってきます。ただ大野さんは向こうっ気が強いやうですから、ある書き方の限界に達すれば、それを突き破る新たな境地を見せてくださるのではなひかと思いますぅ。
■ 大野露井 連作詩篇 『空白』『第012回 Ⅺ 葉』 PDF版 ■
■ 大野露井 連作詩篇 『空白』『第012回 Ⅺ 葉』 テキスト版 ■