外賀伊織さんの『Ongaku & Bungaku by Kingyo』『No.019 ザ・バンド 『オールド・ディキシー・ダウン』』をアップしましたぁ。ザ・バンドはロビー・ロバートソン、リヴォン・ヘルムを中心とした五人組のバンドで、一九七〇年代に活躍しました。長くボブ・ディランのバックバンドをしていたことでも有名です。一九七六年に最後のコンサート『ラストワルツ』を開いて解散しました。外賀さんはドキュメンタリー映画『ラストワルツ』を中心に、ザ・バンドのヒット曲『オールド・ディキシー・ダウン』について書いておられます。
なお『ラストワルツ』の監督はマーティン・スコセッシです。『ラストワルツ』以降、スコセッシは何本も音楽映画(ドキュメンタリー)を撮っています。二〇〇八年公開のローリング・ストーンズの『シャイン・ア・ライト』などです。『私のアメリカ映画旅行』、『私のイタリア映画旅行』をご覧になった方はご存知でしょうが、スコセッシさん、恐るべき映画ヲタクで凝り性です。『ラストワルツ』ではリハーサルを綿密に分析し、どの曲で誰にカメラ割りをするのか事前に決めていたやうです。しかしストーンズはそうはいかなかったらしひ。演出もあるのでしょうが、『シャイン・ア・ライト』では、撮影当日までストーンズが演奏する曲目(セットリスト)が手に入らず焦るスコセッシ監督が映し出されています。一発目の曲は『ジャンピング・ジャック・フラッシュ』でしたが(爆)。
外賀さんはザ・バンドについて、『〝The Band〟という無色透明な名前に表象されているように、このバンドには最後まで強烈なスター性、カリスマ性が感じられなかった。ビッグ・ピンクの地下室で起こっていたアメリカン・ミュージックの良質の混交(ミクスチャ)そのものが、ザ・バンドだったような気がするのである』と書いておられます。不肖・石川もそう思います。『ラストワルツ』には信じられないほど豪華なゲストが登場します。『ウッドストック』や『ワイト島』のやうなロック・フェスティバルを除けば、一つのバンドがこれほど幅広い年代とジャンルのゲストを集めたことはありません。それはザ・バンドの音楽性の多様さを示していますが、彼らが黒子的だったから、これほどの多様さが可能だったやうに思ひます。
外賀さんはまた、『ザ・バンドのメンバーはのんきな田舎のオヤジたちという印象だった。・・・解散コンサートとはいえ、リラックスした楽しい映画なのだろうと予想していたのである。しかし映画を仕切っていたのは追い詰められた表情の、目が据わったロビー・ロバートソンだった。僕は作品の印象とその背後にいる創作者が、必ずしもイコールではないことを初めて痛感した』と書いておられます。これも確かにさうですね。『ラストワルツ』に登場するロビー・ロバートソンはピリピリしています。全身からトゲトゲが出ている(爆)。だからこそこの映画が音楽ドキュメンタリー映画の傑作になっているのだと思います。
■ 外賀伊織 『Ongaku & Bungaku by Kingyo』『No.019 ザ・バンド 『オールド・ディキシー・ダウン』』 ■