田山了一さんのTVドラマ批評『No.047 銀二貫』をアップしましたぁ。もう終了してしまひましたが、NHKさんで放送されていた時代劇です。主人公の松吉は仇討ちで父親を亡くし、自分もあわや殺されるところを偶然居合わせた寒天問屋の主人・和助に銀二貫で助けられ、商人の道を歩み始めます。サブタイトルに『なにわ商人(あきんど)のええ話でおます』とあるやうに、大阪商人の生き様と心意気を描いた作品です。
田山さんはこのドラマの魅力を、『松吉役の林遣都は、繊細で問題を抱えた少年の雰囲気で、たぶんその危うい風情が魅力だったと思う。透明感のある傷ついた少年は現代的ではあるが、どんな時代にもそういうキャラクターはいただろうと思える。昔の人間だから骨太でニブい、ということは必ずしもあるまい』と書いておられます。不肖・石川も同感です。数回しか見なかったですが、林遣都さんはウブかった。失礼ながら、ちょっと素人っぽさの残る演技に魅力がござんした。芦田愛菜さんも出演されていましたが、こちゃらは相変わらず上手かった(爆)。
んでNHKさんらしく江戸時代の雰囲気をよく再現したドラマでしたが、不肖・石川は初回を見て、仇討ちで親と一緒に殺されそうになる子供ってどーよと思ってしまひました。江戸時代は無法時代ではありませぬ。基本的には現代と同様、法でがんじがらめの社会でした。仇討ちも藩と幕府の許可がなければできません。仇討ちを願い出る際にもそれが成就した際にも、綿密な書類を提出しなければならなかったわけです。つまり誰を殺していいか明記された書類を持って、決められた人数で仇討ちに向かうわけで、仇討ち相手の子供まで殺すことは許されない。まして子供殺しの代わりに金をもらうなど、ちょっとあり得ない。正直、粗い設定だなぁと思ってしまひました。
そのあたり、田山さんは『時代劇が単なるチョンマゲを結った現代劇になってしまっている、というのには、さんざん文句を言った。しかしドラマにはそれぞれ「狙い」というものがある。史実に沿い、歴史の重みを感じさせなくても、その時代に固有の価値観や雰囲気を捉え、それをその「狙い」に結びつけることができていれば、ドラマとしては成功である』と書いておられます。問題はこのドラマの〝狙い〟がどこにあったかですが、どーもそれは、俳優陣の演技に大きく寄りかかってしまっているように感じられたのでしたぁ。