菜穂実さんの連載小説『ケータイ小説!』(第28回)をアップしましたぁ。『ケータイ小説!』、終盤になって奇々怪々と申しませうか、ジェットコースター的な展開になってまひりました。菜穂実さんからは、『今月の小説だぉ~』という短文付き添付メールくらいしか来なくて不肖・石川も情報を持っていないのですが、うまいなぁ~と感心しますです。
小説の書き方はいくつかあります。代表的なのは『わたし』を語り手とする一人称一視点小説と、『彼/彼女/人名』を主人公にする三人称一視点小説です。一人称一視点は主に特定個人の内面を描きたい時に使用されます。私小説などはたいてい一人称一視点です。私小説的な書き方では人間心理を掘り下げることはできますが、窮屈な書き方なので自ずから短・中篇小説になりがちです。
三人称一視点でも、視点が『彼/彼女/人名』から抜け出ない場合は基本的に一人称一視点と変わりません。しかし『彼/彼女/人名』を主人公にしながらも、地の部分で作家の言葉を目立たない形でスリップさせることができます。一人称一視点よりは融通の利く書き方ですが、これでも不自由だなと感じる作家は三人称複数視点を使ったり、一人称一視点部分と三人称一視点を混在させた書き方をしたりします。
小説の場合、視点を固定した方が作品の安定度は増します。そのため小説初心者は、一人称一視点か三人称一視点できっちり作品を書く場合が多い。三人称複数視点や一人称一視点と三人称一視点の混在は、少しテクニックがいりますので、基本的な書き方に慣れていないと難しいわけです。
菜穂実さんの『ケータイ小説!』は一人称一視点で制約が多い書き方なのですが、それを全く感じさせない。むしろオーソドックスな一人称一視点や三人称一視点小説よりも自由な感じがします。いわゆる〝ケータイ小説〟と呼ばれるジャンルは、通過儀礼的なライトノベルの一形態として捉えられがちです。しかし菜穂実さんの小説を読んでいて、そうぢゃないかもしれないと石川は思い始めました。ケータイ小説の存在理由は、菜穂実さんが実践されているような軽さ、自由さを意識的に追求するところにあるやもしれませぬぅ~。