田山了一さんのTVドラマ批評『No.046 ルーズヴェルト・ゲーム』をアップしましたぁ。唐沢寿明さん主演、江口洋介さん準主演で山﨑努、石丸幹二、檀れいさんら、豪華出演陣のドラマです。しかも原作は池井戸潤さん。あの『半沢直樹』の原作者です。不況で業績が落ち込み、合併話に揺れ動くメーカーの企業戦士たちの活躍に、メーカーが抱える名門社会人野球部の存続が重なりながら物語は進んでいきます。キャッチコピーは「逆転だよ逆転」です。これだけの俳優陣と物語を詰め込めば、面白くないはずがない。実際面白い。しかしでもでもと感じてしまふ。
そこのところを田山さんは、『ドラマはホンだ、と言ってきた。それはそうなのだ。が、ドラマは難しい、と思う。・・・「半沢直樹」を彷彿とさせるビジネスストーリー、追い詰められたメーカーの話で、そこに野球部の存続が絡む。一粒で二度美味しい、はずである。・・・野球チームの話となると、いきなり緊張感が途切れてしまう。・・・ダメ押しが蛇足になる、ということはある。・・・ダブルであること、必ずしも盤石を意味しないということだ』と書いておられます。
む~田山さんの分析、不肖・石川が感じたのとだいたひ同じです。『原作を本で読んでいるときには登場人物に感情移入し・・・野球であれ何であれ、真剣な心情、モードを持続させることができる』(田山さん)わけですが、ドラマだとそうはいかない。田山さんが書いておられるように、『野球チームを持つような会社で、一派遣社員のクビをどうするか、トップ以下が騒ぐというのは、やはりリアリティに欠ける。リアリティとは実際に起き得るかどうかでなく、その必要性、説得力のことだ』と感じてしまふのであります。
映像化すると、今一つ説得力が欠けてしまふ本はあるわけですが、最後のところ、映像作品の質を決めるのは『リアリティ』のやうです。でもこのリアリティってけっこう難しい。すんげぇ申し訳ないんですが『半沢直樹』を持ち出してしまふと、堺雅人さんの演技は明らかにオーバーアクションで、この人、絶対小劇団出身だよなぁ、と感じてしまふものだったわけです。でも映像作品的にはリアリティがあった。つまり映像作品の場合、リアリティは現実をなぞることでは必ずしもないわけです。
ベテラン俳優さんの場合、求められれば現実に即したシリアスな役作りもできるし、浮世離れしたオーバーな演技もできる。前者がドラマのリアリティを生むこともあるし、後者がリアルに感じられることもある。『ルーズヴェルト・ゲーム』はドラマって難しい、む~難しいと思わせるドラマなのでありましたぁ。
■ 田山了一 TVドラマ批評 『No.046 ルーズヴェルト・ゲーム』 ■