小原眞紀子さんの『文学とセクシュアリティー 現代に読む源氏物語』(第026回)をアップしましたぁ。『源氏物語』第35帖『若菜 下』(わかな げ)巻の読解です。『若菜』は『源氏』最長の巻です。長いパートであり、『源氏物語』にとっても重要な巻なので、小原さん、だいぶ苦労して原稿を仕上げられたやうです。
『若菜 下』では光の二番目の正妻、女三宮が頭中将の長男・柏木と密通し、その子供(薫)を宿します。今回のコンテンツでは、それを巡る小原さんの解釈がとても面白く刺激的です。小原さんは、『この密通に重ね合わせられるのは藤壺と源氏とのそれですが、藤壺は関係ができてからも、めったに源氏を近づけなかった。それに比べると軽々しいのは・・・手引きをする小侍従という女の性質に拠っている・・・そんな小侍従をそば近くで使い、いわんや言いなりになっているのは女三宮の自身の落ち度であり、その頼りなさも含めて本人の人柄であるとされる時代です』と書いておられます。
『若菜』は光の絶頂期であり、また彼の衰えを示唆する帖だと言われますが、それだけではないでしょうね。『源氏物語』における、いわゆる神話時代が終わろうとしているような気配です。神話時代の次に来るのは人間の世界です。小原さんは、『若葉下の巻で目に留まるのは、この「心浅さ」、また「浅い証し」といったものです。・・・また源氏に取られた密通の証拠である文、六条御息所の死霊であることの証しなど、現代的な「物証」や「証言」が出てくるのですが、現代的なぶん心に響くわけではない。なんだ、という感じです。読者を納得させ、深く頷かせる因果因縁ほどの力はない』と読み解いておられます。小原さんの連載の中でも重要な読解箇所です。皆さん楽しんでお読みください。
■ 小原眞紀子 『文学とセクシュアリティー 現代に読む源氏物語』(第026回) ■