大野露井さんの連作詩篇『空白』『第 009 回 Ⅷ 心』をアップしましたぁ。大野さんはこの春から日本社会事業大学の専任になられました。おめでたうございます。不肖・石川がちらほら聞いている話でも、修士・博士を出ても大学への就職はなかなか厳しくなっているやうです。大野さん、やっぱ優秀ですね。今まで以上にお忙しくなると思いますが、原稿の方もよろしくお願いしますですぅ。
今回の詩篇のタイトルは『心』です。『ここは僕の家で/ここは君の家だ』で始まっていますから、まずは男女の心、あるいは自分と他者の心を描いた作品だと思われます。『ここで僕たちは暮らしている』とありますから、僕と君が同じ家で暮らしているのは確かなやうです。しかしそれだけでは終わらないのが露井さんの詩の特徴であります。
『君は昨日の僕で/僕は昨日の君だ』、『君が舌足らずになると/僕は口が滑る』とあるやうに、僕と君は相互補完的です。しかし完全に補完し合うことはない。ズレがあるんですね。『辞書を逆さに読み返すのと/詩を逆さに書き出すのと/どちらが楽だろうか』といふ三行は、実に美しいと思います。君と僕のズレが、言語的に鮮やかに表現されています。
社会にもつながるような他者を求めながら、自己の内面に沈降してゆくような露井さんの作品は、極めて現代的だと思います。時代の本質を捉えているだろうなぁ。連作詩篇『空白』は全12回、全部で600行の長篇詩ですから、あと三回続きます。600行の詩篇をスラリと連載してしまえることからわかるように、露井さんの力量、並々ならぬものがありますですぅ。
■ 大野露井 連作詩篇 『空白』『第 009 回 Ⅷ 心』』 PDF版 ■
■ 大野露井 連作詩篇 『空白』『第 009 回 Ⅷ 心』 テキスト版 ■