金井純さんの『親御さんのための読書講座』『No.027 サッカーボーイズ』をアップしましたぁ。はらだみずきさんの『サッカーボーイズ』を取りあげておられます。金井さんは『『バッテリー』(あさのあつこ著)と比較しての欠点をあげつらうことは簡単だが、そもそもの野球とサッカーとの違い、として捉えた方が生産的かもしれない。だいたい野球というスポーツは、それはそれは文学的なのだ。・・・心理描写ができるのは基本、じっとしているからに他ならない。ずーっと走り回っているサッカーで、じっとりした表現なんかしてたら、隙を突かれてゴーーールってなことになりかねない』と書いておられます。
確かに野球を題材にしたドラマや映画、小説は多いです。詩にも傑作があります。『サッカーボーイズ』は野球小説に比べると、心理描写の深みが足らないようですが、その反面、野球小説にはない特徴があるようです。多視点小説だといふことです。金井さんは『視点が多数になり、様々な登場人物の立場からの記述が増えると、子供はまず混乱する。・・・そのときはまず登場人物をリストに書き出させ、それぞれの特徴をメモさせる。誰が中心なのか、探り当てるつもりで読ませれば、すぐに見つかる。そうなったら後の人物たちの視点は、主人公の考え方を補強するためのものだとわかる』と論じておられます。
小説には一人称一視点、三人称一視点、三人称多視点といった技法があります。私に物語を語らせるか、彼・彼女に語らせるか、それともたくさんの彼・彼女を登場させて物語を進めるのかという書き方の違いです。私を語り手にした方が心理描写は複雑になりますが、その分、制約が大きくなります。彼・彼女を語り手にする三人称一視点でも、一人しか語り手がいなければ一人称一視点小説と同じです。三人称多視点は複雑な心理描写が目的の作品には不向きです。事件によって物語を進めたい時に一番力を発揮します。作家志望の皆さんは、視点によって作品を分析してみるのも面白いかもしれません。
■ 金井純 『親御さんのための読書講座』『No.027 サッカーボーイズ』 ■