菜穂実さんの連載小説『ケータイ小説!』(第25回)をアップしましたぁ。まるこちゃんは、思いきってカツミ君に会うことになりました。やっぱモヤモヤしてるんですねぇ。『頼まれた仕事は終わったんだけど。でもさ、気が済まないし。気が済むって、さ。ムダなことのようで、けっこー大事ぢゃないかな』と書いてあります。確かにある結論に達するって大事なことですよねぇ。
小説の基本は物語ですから、引き込まれると読者をどこかへ連れていってくれる。到着点はいろいろで、残酷なこともあるし楽しいこともある。一つの観念に達することもある。ただ純文学といふジャンルはそれをあからさまな〝結論〟といふ形では示さずに、物語の構造とか、注意していないと読み落としてしまふような自然描写、あるいは微妙な人間関係の変化などで表現してきました。これはそうしなければ表現できない微妙な到達点があらかじめ設定されていたからです。
でもでも最近では最初から〝結論ナシ〟で書かれる純文学作品が増えてきました。非常に言語化しにくい作品の到達点を、文学業界では〝文体〟とか〝描写〟などの言葉で代替して表現してきたのですが、結論がないのに純文学的な文体や描写だけが肥大化し始めているんですね。純文学が〝制度化〟してきたというのは、そういう傾向を指します。へたくそな現代詩みたいな小説が増えているのであります。
菜穂実さんの作品はケータイ小説ですから、必ず読者をどこかへ連れていってくれると思います。なにせまるこちゃんが、『気が済むって・・・けっこー大事ぢゃないかな』と言っているのですから。また不肖・石川は文学はそういふものだと思います。作家の執着、偏愛などが示されておらず、知的かもしれませんが、空疎な言葉遊びに流れてしまふ作品は、小説としてはやはり魅力がなひと思うのであります。