金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.008 ティファニーのテーブルマナー』をアップしましたぁ。世界的宝飾品ブランド・ティファニーが1969年に編纂したテーブルマナー集です。金井さんは『テーブルマナーというものも結局、かたちではなく気持ちの問題なのだと言うことができる。だからこそ古びないのだ』と書いておられます。そのとおりでしょうねぇ。
テーブルマナーとはちょっと違いますが、日本ではお茶やお花の世界に〝作法〟があります。お能などの世界では〝型〟といふことになります。どちらかといえば、供給者側のマナー(作法・型)が重視されます。いわゆる〝おもてなし〟ですな(爆)。供給者側の作法や型を知っていれば、自ずから良い受容者になれるといふ不文律が日本文化にはあります。
ほんでこの作法や型は、破ろうとしてもなかなか破れない。むしろお稽古するにつれ、それらは合理的な決まり事だといふことがわかってくる。また『ティファニーのテーブルマナー』の末尾には、『これで作法の心得がわかりましたから、作法を破ることができます。しかし、作法を破るには、十分社交知識の心得がいることを忘れないでください』といふ一文がありますが、日本の作法や型も同じです。
金井さんは『文学のジャンルも含めて、あらゆる掟には存在理由があり、その意義を体得させるために掟があるとも言える。掟の意義により深く到達できるなら、それは破られても、また守られてもよい』と書いておられます。けっこう難しい問題ですが、金井さんのおっしゃるとおりだと思います。
わたしたちはいきなり〝天才〟が現れることを待ち望んでいますが、なかなかそういった事態は起こらない(爆)。才能を感じる作家のバックグラウンドには、膨大な知識が詰まっていることがほとんどです。マナー・作法・型と明文化するかどうかは別として、優れた作家はその表現ジャンルの本質を掴んでいる人が多い。
抵抗を覚える方も多いでしょうが、文学の場合、まず読まなければなにも始まらない。月に数冊読んでいるようではダメです。書いていない時以外はずっと読んでいるくらいの姿勢が必要です。不肖・石川は、好きな作家の全集を頭から尻尾まで読むことをお勧めします。作家のほぼ全人格が理解できますよ。先行作家の全集は、あなたが文学者ならこれから辿るであろう人生の縮図です。何回かそれを繰り返せば、文学の型がおぼろに見えてくると思います。
実体験を元に作品を継続的に量産することはできません。読むことで大きな刺激を受け、作品を書いて発表する。社会が変わりテクノロジーが発達しても、文学の基本はほとんどなにも変わっていない。文学の型は確実にあります。それを破れば前衛になります。しかし文学史を読めば、型を知り尽くした作家による前衛的試みでなければ、一時のあだ花として消えていくことがわかると思います。
■ 金井純 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.008 ティファニーのテーブルマナー』■